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http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080528ddm005070002000c.html?inb=yt
社説:同意人事 知る権利を国会が阻むとは
国会の権限をはき違えた「あしきルール」が、まさかここにきて使われるとは思わなかった。政府が27日、衆参両院の同意が必要な人事案を提示しようとしたところ、一部に関して民主党の西岡武夫・参院議院運営委員長が「人事案が事前に報道された」と反発し、提示が見送られた一件である。
見送られたのは、空席が続いている日銀審議委員に池尾和人・慶応大教授を充てる人事案と預金保険機構理事長の永田俊一氏を再任する人事案の2件だ。政府は同じ案を提示するか、別の案を出し直すかの検討を迫られている。
そもそも、この「政府が与野党に提示する前に報道されたら、その案自体を国会は受け付けない」とのルールは西岡氏が持ち出したものだ。
通常の法案などと違い、衆院で再可決する規定がなく、参院で不同意となれば白紙となる同意人事案件の取り扱いは、ねじれ国会の下、与野党間の大きなテーマだった。そんな中、昨秋、地方分権改革推進委員会の人事案などが事前に報道されたことに西岡氏が立腹して、発案したのがこのルールだ。今回はそれに従ったというのだろう。
昨秋の時点でも毎日新聞は、これに強く反対してきた。言うまでもなく報道を規制するものであり、ひいては国民の知る権利を阻むものだからだ。西岡氏は当時、事前報道されると国会審議が形骸(けいがい)化するなどと説明したが、到底、納得できるものではない。
国民の関心のある人事を報じれば、国民の間でも議論が生まれるだろう。そんな世論を参考にして、国会が議論するのは、これまでも当然のように行われてきたはずだ。事前報道規制ルールは国会を密室化するものでもある。こんな理屈が通るとすれば、予算案や法案も事前に報道できなくなる可能性がある。
民主党は提示された案を堂々と議論すればいいではないか。結局、「自分たちは聞いていなかった」とメンツがつぶされたというほか、理由は考えられない。しかも、日銀総裁人事の際には、当初の政府案だった当時の日銀副総裁、武藤敏郎氏の昇格案は正式提示の相当前から連日のように報道されていたにもかかわらず、なぜか、事前報道は問題にならなかった。ご都合主義でもある。
ルールを懸念する声は民主党にもあったのに、その後、手直しされることもなく、与党も唯々諾々と従って、今回も提示を見送った。国会全体で国民の知る権利を阻んでいることを深刻に反省した方がいい。
人事の取り扱いに関しては再検討が必要な点が多いが、とりわけ、この事前報道規制ルールは即刻、やめるべきである。そして、6月15日の会期末までに与野党がもっと議論すべき課題は山ほどある。
毎日新聞 2008年5月28日 東京朝刊