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2008年5月30日 (金)
『植草事件』を惹起した巨大な闇(1)
(※植草さんが遭遇した事件を何回かのシリーズに分けて神州の泉が考察してみます。)
必然を暗示する政略的背景を見つめる
2006年9月13日、京急電車内で起こった「植草事件」。その逮捕劇を、高名な電波芸者たちが、植草は痴漢性癖で捕まったと面白おかしく騒いでいた。彼らの人間としての良心を疑わざるを得ない。電波を使ったこの空騒ぎは、植草一秀氏が京急電車内で、身に覚えのない偽装事件に巻き込まれた直後のことである。
2006年9月21日に大阪朝日放送(ABC)が放映した情報番組「ムーブ!」では、評論家の大谷昭宏氏、宮崎哲弥氏、弁護士の橋下徹氏(現大阪府知事)などが、週刊誌「女性セブン」の捏造記事を下敷きにして植草氏の病的常習性を強調していた。彼らは植草氏の病的常習性を指摘したに止まらず、薬による治療にまで言及していたからかなり悪質だ。一般の視聴者にとって「有名人」といえば、彼らテレビ・コメンテーターたちを思い浮かべる人も多いだろう。彼らが発信したテレビジョン言説の影響はすこぶる甚大だ。
植草氏は経済学者ではあるが、その経済学的視点は徹底して政治に反映されてこそ意味があると考える、いわば実戦派エコノミストである。つまり植草氏はちまたで甘言を弄する衒学的な経済"エッセイスト"ではない。国家の政策中枢レベルに影響を与えうる提言と予見ができる非常に稀有なタイプのエコノミストなのである。「どんな犯罪を行ったか」ばかりが興味本位に報道されるこの事件だが、マクロ政策に影響を与えうる実践派エコノミストの逮捕の意味は重大であった。植草氏の逮捕騒動をメディアの初期報道で知らされた国民は即座にこう思ったことだろう。痴漢性癖のある著名人が電車内でついに迷惑防止条例違反でつかまったと・・。
そう思うように、メディアの初期報道は一様に彼の病的性癖説に傾注した報道内容に固執した。それは冤罪の可能性を微塵も受け入れる余地のない報道姿勢であった。それを示すキーワードの一つが「ミラーマン」という侮辱的なあだ名であった。このミラーマンなる言葉が京急事件にも使われた背景は、2004年4月に品川駅構内で起きた事件との連続性が、何の根拠もなく前提として疑われたからだ。じつは品川手鏡事件も身に覚えのない濡れ衣事件なのであるが、その説明は後に譲る。電車内の痴漢では冤罪が多発している現実があることをメディアは植草事件に限っては故意に無視している。植草氏が遭遇した事件を、まるで疑う余地のない既遂事実として取り扱ったのだ。あとで説明するが、この連続性が巧妙に用いられていることに、この事件の重大な作為性が存在する。結論的に言えば、植草氏は政治的謀略に嵌められたのだ。
彼の逮捕劇の裏には、政権中枢による国策パラダイム変更という、大掛かりな時代転換と決して無縁ではないという一つの見方が存在する。つまり、小泉政権以降、特に顕著になった新自由主義に基づくマクロ的な国策変更推進には、ケインズ的積極財政路線を志向する植草氏のようなレベルの経済学者が最も邪魔な存在なのである。小泉構造改革路線を積極的に推進した官邸主導勢力は、構造改革路線発足当初から、植草氏の提言が政策推進上、最も有害この上ないものと見ていた節がある。その見方を最も強く持っていたのは、第三次小泉内閣当時、総務大臣兼郵政民営化担当大臣であった竹中平蔵氏であった。郵政民営化を事実上の統括者として推進してきた竹中氏が、2007年10月の郵政民営化始動を待たずして、前年2006年9月15日に四年近くの任期を残したまま政治家を廃業し、在野に下った。この日付に留意してみてほしい。なんと、植草氏が事件に遭遇した翌々日なのである。しかも長期政権を率いた小泉純一郎首相(当時)の任期が切れたのが9月20日、第三次小泉内閣が終焉したのが9月26日であった。はたして植草氏の京急事件は偶然なのであろうか。
作為的な金融操作の疑いが濃厚なりそな銀行国有化、それに郵政民営化を何とか無難に決定した小泉内閣は、最後の仕事として植草一秀氏をつぶせと指令されていたのではないだろうか。
小泉政権の不倶戴天の仇敵は、郵政民営化に反対した真に良識ある議員さんたちであったが、経済・金融政策で最も重大な影響力を持つ提言が可能だったのがエコノミストの植草一秀氏であった。米国の傀儡となっていた小泉官邸主導(自民党清和政策研究会主導)勢力は、米国主導による「年次改革要望書」の対日プログラム実践にとって、植草氏を最も邪魔になる存在と考えたのではないだろうか。植草氏の言動を放置しておけば、米国の対日経済占領計画が深刻な阻害を蒙ると考えたのであろう。場合によっては売国的国家プロジェクトである郵政民営化さえも実現を阻まれるかもしれないと考えていたかもしれない。今、国民はそこを冷静に考えてみて欲しい。第一次小泉内閣発足当初から、この政権の危険性を察知し、積極的に小泉内閣にアプローチしていた人物が植草氏であった。植草氏が京急事件に巻き込まれる以前、竹中氏はテレビ番組でも植草氏と同席することを拒み、植草氏の言説に異常な警戒感を持っていたことは植草氏の著書『知られざる真実−勾留地にて−』に詳しく書かれてある。
植草氏を特に敵対視していた重要人物には、竹中平蔵氏、本間正明氏、奥山章雄氏、木村剛氏などがいた。植草氏に対して、どの人物がどのような策謀を持ち、具体的にどのような実行策を弄したのか、もちろん直接には見えないことなのだが、少なくとも、国益よりも外国資本の優位性を先に考える売国勢力が植草氏を陥穽に落としたことはよく見えてくる。
植草氏が権力筋に狙われる動機は充分すぎるほどあったのである。メディアはそのことをいっさい報道しないが、国民は植草事件の真相について、深慮する必要がある。メディアコントロールによって、国民は小泉政権が敷設した構造改革路線の真の破壊性をまだ認識していないが、障害者自立支援法や後期高齢者医療制度の非人道性を見れば、小泉政権がもたらした政策傾向の真意がわかるはずである。小泉構造改革の本質とは、破壊、売国(優良資産の投売り)、弱者切捨てなのである。
今になってみれば、植草氏がエコノミストとして、最も初期から小泉政権の誤導性を見抜き、警鐘を鳴らしていたことがわかると思う。植草氏の予見性、洞察力、エコノミストとしての良心を鑑みれば、彼が身をもって国民に警醒の声を上げていたことがよくわかると思う。特に、京急事件に遭遇する前、宮崎学氏の主催するWeb「直言」に、植草氏が書いた「失われた5年−小泉政権・負の総決算(4)、(5)、(6)」では、他のエコノミストが臆して言えない内容を堂々と展開しているのだ。今こそ、国民は彼の勇気と本物の正義感を認めるべきであろう。植草氏が身体を賭して叫び続けた声を聞き逃したために、彼は二度も官憲のむごい偽装事件に嵌められてしまった。今こそ、国民は植草氏の良心の真実を知るべき時である。
(つづく)