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http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20080501ddm003010051000c.html
暫定税率復活 改革なき税金先取り 一般財源化、道険しく
30日の衆院本会議で税制関連法案が再可決され、ガソリン税の暫定税率が1日から復活することになった。国民生活に直結するガソリン価格の一時下落と急上昇。福田康夫首相は国民の批判をかわそうと、ガソリン税などからなる道路特定財源を09年度から一般財源化すると表明したが、実現までには険しい道のりが待ち受ける。それを乗り越える政治力がなければ、改革なき税金の先取りになる。
暫定税率が1カ月間失効したことに伴う税収の不足分は、約1800億円と試算されている。政府・与党は生活に身近な地方の道路が造れなくなると訴えてきたが、暫定税率の復活で直ちに道路工事が再開されるわけではない。道路特定財源を地方に回すのに必要な道路整備財源特例法(特例法)改正案が、成立していないためだ。
道路特定財源(08年度5・4兆円)は国と地方に配分され、国の取り分の一部は地方事業の補助に充てられる。特例法は、ガソリン税収入のうち約7000億円を臨時交付金として地方に回すことや、地方事業への補助率のかさ上げなどを定めている。
地方単独事業を除く国と地方の08年度一般道路予算は4・2兆円。しかし、国土交通省は4月1日時点での配分をわずか5006億円にとどめ、残る3・7兆円の配分は先送りしていた。道路予算の執行を見合わせてきた都道府県も、特例法の成立を凍結解除の条件にするとみられる。
冬柴鉄三国土交通相は30日の記者会見で「(予算の執行遅れで)市町村などは塗炭の苦しみだ」と述べ、国直轄の道路事業などは特例法の成立前に配分する意向を示した。全国建設業協会は「暫定税率が復活しても工事発注手続きにはこれから1〜2カ月かかる」と心配している。
政府は、特例法改正案が参院で「みなし否決」になるのを待って5月13日に同法案を衆院で再可決し、成立させる方針だ。しかし、同法案は道路特定財源を10年間維持する内容だ。首相の一般財源化方針と矛盾するとして、さらなる批判を受ける可能性がある。
首相は、特例法改正案の再可決に合わせて09年度からの一般財源化を閣議決定する。方針が「空手形」に終わることを懸念する与党内や野党の批判を封じる狙いだが、改革の道筋はついていない。
首相が特例法改正案の再可決にこぎつけたとしても、その後にはより高いハードルを越えなければならない。一般財源化を含む抜本的な税制改革と、道路予算の大幅な圧縮だ。
暫定税率と裏表の関係にあるのが、10年間で道路建設に59兆円をつぎ込むという政府の「道路整備中期計画」だ。同計画は、02年の需要推計を前提に作られたが、実際の交通量は04年度から減少。国土交通省関連の財団法人が07年3月にまとめた再推計では、30年の交通量は02年推計に比べて8・7%減少することが判明した。
政府・与党は4月11日の決定事項に「中期計画は5年とし、最新の需要推計などを基礎に、新たな整備計画を策定する」と盛り込んだ。しかし、暫定税率の水準を維持したままでは「不必要な道路建設が続くのでは」との疑念がつきまとう。【位川一郎、中田卓二】
◇首相の求心力、カギ
「背水の再可決」に突き進んだ福田首相にとって、国民の不評をやわらげる主要な手段が、道路特定財源の一般財源化と、不要な道路を造らない仕組みの整備だ。ただし、道路改革は自民党の「虎の尾」だ。改革の「骨抜き」を狙う道路族に対抗するだけの政治的体力が首相にあるかどうかは、不透明だ。
「道路をぜひ造ってもらいたいという、国民の多くの声があるのも事実だ」。30日夕、再可決直後に衆院本会議場を出た自民党の二階俊博総務会長は記者団に淡々と語った。
党内の道路族は巻き返しの機会をうかがう。自民党参院幹部は「一般財源化しても必要な道路には予算を付ければいい。予算編成の時の力関係だ」と言い放った。首相のメンツを立て、一般財源化しても、年末の予算編成時には力ずくで優先的に道路に予算をつけさせればいいと割り切っているようだ。
実際、「抵抗の芽」は道路改革をめぐる4月11日の政府・与党決定に潜む。首相が3月27日に表明した新提案にはなかった、「必要と判断される道路は着実に整備する」との文言がそれだ。
首相は年内に一般財源化のため法案をまとめる方針だが、暫定税率の復活によって「内閣支持率は確実に下がる」(与党幹部)。求心力が一層低下すれば、道路族の抵抗力が強まる。
今後具体化させる道路改革が、道路族に配慮した「妥協の産物」になれば、民主党に攻撃材料を与える。かといって抜本的な改革に踏み込めば、古賀誠選対委員長や二階氏ら福田政権を支える道路族の面々を刺激する。「福田改革」は袋小路の危うさをはらむ。
今のところ道路族は表立った抵抗を避けている。
党幹部がその理由を解説した。「『今ここで騒げば、党がぶっ壊れて元も子もなくなる』と分かっているからだ」【川上克己】
◇河野議長、妨害民主に苦言
「民主党議員によると思われる妨害で、議場に入れなかった。かかる行為ははなはだ遺憾だ」。租税特別措置法改正案を再可決した30日の衆院本会議の冒頭、河野洋平議長は「会議を始める前に一言申し上げる」と語り始め、民主党に異例の「苦言」を呈した。開会前、民主党の衆参両院議員が議長室前の廊下を占拠した。議長室からわずか数メートル先の議場に入ろうと河野氏は何度もドアを開けたが、民主議員の「壁」に阻まれ続けた。結局、衛視らにガードされつつ議場に入ったのは、開会予定時刻から1時間近く経過した午後2時前だった、兵藤公治撮影。
本会議は約1時間で休憩に入ったが、再び入場を阻止されることを危ぶんだ自民党議員が河野氏に「このまま残ってください」と懇願。結局、河野氏は午後3時40分に再開した2回目の本会議が閉じるまで約3時間、ずっと議場で過ごすことになった。【高本耕太】
毎日新聞 2008年5月1日 東京朝刊