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ガソリン再可決―道路はいつまで聖域か
ガソリン税が上がる。1リットルあたり25円。原油価格の高騰による値上げ分も加わり、全国平均で130円ほどだったレギュラーガソリンの値段は、160円を突破しそうだ。
与党が衆院で、1カ月前に失効した暫定税率の復活を再可決した。
福田首相は「毎日60億円の歳入が失われている。歳入不足の解消が必要だ」と、国民に理解を求めた。だが、これではとうてい納得できない。
政府や地方自治体が予定している歳入に穴が開くというのは、確かに大変なことだ。だが、この間の国会審議で明らかになったのは、この税収の使い方に根本的な問題があることだった。
それでもなお、一度廃止された税金を復活させたいと言うなら、無駄遣いや利権構造にどう切り込み、道路予算をどれだけ減らす覚悟なのか、具体的に示さねばならなかったはずだ。
だが、首相は入札制度を改めるといった対策は語ったものの、そこはまったく踏み込みに欠けた。ひたすら今年度だけはこのままでご勘弁をと言わんばかりだ。
与党は今月半ばにもう一度、衆院で道路特定財源を10年間維持する法案を再可決する方針だ。ねじれ国会は道路予算の実態をめぐる論戦や混乱の揚げ句、最後は数の力をぶつけ合う寒々しい景色になってしまった。
それにしても、首相や与党がここまでガソリン税に熱心なのを見ると、やはり道路予算は聖域なのか、という思いを深くする。
聖域を守ろうとするのは、自民党の道路族議員たちだ。その下には建設業界や地方自治体の首長、議員らが連なる。道路は「土建国家日本」の岩盤であり続けてきた。
道路が住民の利便性だけでなく、公共事業という形で地域経済を底支えしている現実はその通りだ。だが、少子高齢化や財政の悪化を考えれば、「道路は別枠」の考え方はもはや通用しない。まず一般財源化するのは避けられない選択だ。首相が「道路特定財源を09年度から一般財源化する」と言い切ったのは大きな決断だった。
それにもかかわらず、道路特定財源を温存する法案を再可決して成立させるというのは矛盾である。首相はこの法案を断念すべきなのだ。
今回の再可決は、小泉政権時代の郵政選挙で得た衆院の巨大議席があればこそ可能になった。当時の小泉首相は一般財源化を言っていたのに、それとは逆の方向にその時の1票が使われようとしている。釈然としない思いの有権者は多いに違いない。
福田内閣は自民党内の首のすげ替えで誕生し、その後、自民党政治は総選挙の審判を受けていない。再可決の説得力のなさは、政権の正統性の乏しさをいよいよ浮き彫りにした。