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<キャンディーズ>「首ったけ」 石破防衛相が語る
4月3日18時30分配信 毎日新聞
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お別れのあいさつをして普通の女の子になった瞬間のキャンディーズ。左からミキ(藤村美樹)、ラン(伊藤蘭)、スー(田中好子)。5万5000人のファンがスタンドと人工芝を埋めた=東京・文京区の後楽園球場で
一世を風靡(ふうび)したキャンディーズのさよならコンサートから30年。あす4日、ファンらが「大同窓会」を開く。「駆けつけたいくらい」首ったけの防衛相、石破茂さん(51)に、その思いを聞いた。わが心のキャンディーズ−−。【鈴木琢磨】
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まさか……。東京・市ケ谷の防衛省、大臣のイスのすぐわきにCDプレーヤーがあった。カタログ雑誌「通販生活」で見たことがある。小さなボディーから重低音が響く、おやじ心をくすぐるやつ。石破さん、キャンディーズ、聞いてるんじゃないでしょうね?
「いやあ、ここじゃクラシックですよ。大ファンであると認めるにやぶさかじゃありませんがね。キャンディーズ大全集みたいなボックスをいただいて議員宿舎に置いてはあるんだけど、聞いてないなあ。家内や娘と一緒に暮らしてますから、お父さん、どっかおかしいんじゃないってなりますもの、聞けませんよ」
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「普通の女の子に戻りたい!」。そう突然の宣言をしたキャンディーズが後楽園球場(まだドームでなかった)に5万5000人を集めて解散コンサートを開いたのは1978年4月4日だった。「歩く月刊明星」の異名をもつ石破さんは慶応大4年になったばかり。昭和史年表をくってみると、この年は安保体制の強化が進み、有事立法が問題となる、と特筆されている。ときの宰相は福田赳夫さん、福田康夫首相の父上である。
「あのコンサートはテレビで見たんですけどね。私はミキ(藤村美樹)ちゃんが好きでした。ラン(伊藤蘭)ちゃん、スー(田中好子)ちゃんってメジャーでしょ。ミキちゃんは一歩控えめ、そそとして。よかったなあ。まんまるいの得意じゃなかったし。もちろん全曲、歌えます。正しくはA面は全曲。ノリがいいのは『春一番』だけど、名曲という意味では『やさしい悪魔』でしょうね。音楽的に完成度が高いですよ、あれ」
さて、30年ぶりに同じ後楽園の地(JCBホール)にファンが集う「大同窓会」、3人は出演しないものの、当時のコンサートフィルムを見ながら、バックバンドもそろっての一大イベントになる。そもそもは「全国キャンディーズ連盟(全キャン連)」なるファンクラブ有志の熱き願いから。語るのは発起人のひとり、石黒謙吾さん(47)。「去年秋、中心メンバーが亡くなったんです。キャンディーズの曲で送るキャンディーズ葬をしたとき、あれからもう30年か、同窓会したいよね、しようよって話が出たんです」
そんな夢の実現に奔走したのは、キャンディーズの元マネジャーで、くだんの解散コンサートを仕切った大里洋吉さん(61)だった。サザンオールスターズらが所属する大手芸能プロ「アミューズ」の会長。石黒さんらのラブコールに打たれたのである。「よしっ!て感じでね。だって彼女たちは僕の音楽人生の原点だし、還暦を過ぎたけじめとしてもやりたかった。フィルムコンサートじゃなく、あくまでパーティーなんです。みんなでわいわい楽しみたい」
朝日の夕刊(3月17日)に全面広告が載った。すべて大里さんのポケットマネー。<君は今何をしている? 君はまだ夢の途中にいる? 君は欲しかった自由を手に入れた?(略)家族に秘密でもいい。会社では見せない顔してもいい。もういちど“哀愁のシンフォニー”で紙テープを投げよう。ラン、スー、ミキ、と声をそろえよう。もういちどあの場所へ。もういちどあの気持ちで。ただ時が過ぎたのではない。そのことを証明しよう>。熱狂的なファンでなくとも、これはぐっとくる。
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再び、石破さん。この広告を読んでいたらしい。「夢の途中って、なんか来生たかおの世界だね。でも、そうなんだよなあ。あのころ、国会議員になるなんて思ってもいなかった。ただ、その日、その日が楽しかった。いつまでも明るい未来があると信じてた。へえー、チケット買うと紙テープついてくるんだ。行けたら、行きたいよー」。変装すれば? 「いや、いや、行けません、行けません。スポーツ紙や週刊誌にさんざん書かれちゃう。これ以上、書かれたらロクなことにならないから。それでなくともヘンな大臣と思われてるから、私」
まあね、と相づちを打ちそうになって、のみ込んだ。防衛省といえば、イージス艦の衝突事故である。「勝浦の漁村におわびにうかがった。私は、人殺しとか、とっとと辞めろと言われると覚悟していたけれど、辞めるな、あんたが頼りなんだ、二度とこんなことが起こらない組織にしてくれって言われて。体を張って生きている人たちの気持ちが身にしみました。しみじみ思い出すんです。亡くなった私の父も国会議員でした。空港も道路もつくったけれど、人間としてのおれをどれだけの人が必要としてくれたかって言い残してね……」
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キャンディーズ世代はオタク第1世代である。そういえば、石破さんも軍事オタクと揶揄(やゆ)される。昔の「サンデー毎日」のルポに所ジョージさんのコメントを見つけた。キャンディーズを追っかけるニュー・ヤング(懐かしい!)について。<文化的に暮らしちゃってて、野性的じゃないよね>。「そうかなあ、何かに夢中になれるって、私は才能だと思う。彼女らに夢中になった少年たち、社会人になっても一生懸命仕事してるんじゃないかな。官僚もそんなタイプがいいんだけど」
控室では制服組の自衛官らが待っていた。それでも大臣室で石破さん、さっきから、古本屋で入手して持参したさよならコンサート特集の「少年マガジン」増刊号をながめて「かわいいな〜」を連発している。正直といえば、正直な人である。防衛省改革への決意も本物と期待したい。「ね、どうやったら手に入る、チケット? いやー、別に、行かないよ。こういうのあるとさ、騒ぎたくなるんだよ。ああ、あの日に帰りたいなあ」
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