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http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20080328ddn003010020000c.html
クローズアップ2008:道路財源一般化を提案 成算なき政策転換
◇世論頼み首相独断、民主は3原則で対抗
ガソリン税など暫定税率期限切れを目前に控えた27日、福田康夫首相は道路特定財源の09年度からの一般財源化を公約した。動かぬ与野党協議にしびれをきらし、記者会見で国民に訴える新スタイルで打ち出した歴史的な政策転換だ。ただ、暫定税率全廃を掲げる民主党の主張との開きは大きく、成算無き決断とも言える。民主党は、ガソリン値下げ実現後の攻防もにらみ、首相が世論対策に動き出した、と警戒している。【川上克己、須藤孝、中田卓二】
「もう時間がないと逃げ出すことは簡単だが、わたしは最後まで決してあきらめない」。首相は27日の緊急記者会見で、あくまで暫定税率の期限切れ回避を目指す考えを強調した。
暫定税率を維持する租税特別措置法改正案をめぐっては、3月末に期限が切れた場合、衆院での再可決が可能となる4月末に法案を成立させ、空白を1カ月程度にとどめることで政府・与党は調整している。しかし、ガソリン代の再引き上げにつながる法改正は世論の反発が予想される。
このため首相は、再可決方針を表明する前に「ぎりぎりの譲歩」を国民に訴えることが必要と判断したとみられる。そうすれば4月以後、仮に混乱が生じても、批判の矛先を民主党にも分散できると読むからだ。
こうした首相の動きを警戒した民主党は27日、08年度からの一般財源化や、暫定税率廃止を主張する小沢一郎代表の3原則を事前に公表し対抗した。ガソリン値下げ実現で福田政権の追い込みを図る民主党にとって、与党との安易な妥協は命取りになる。ただ、協議を拒み続ければ、逆に世論の批判を浴びかねない。菅直人代表代行は一般財源化について「大きな前進と評価する」と明言する一方、「一般財源化と暫定税率撤廃は密接不可分」と強調した。
首相が今回、小泉純一郎元首相がかつて多用したトップダウン手法で国民に直接訴えたことに、自民党内には冷ややかな空気が漂う。首相は「おおむね了解されている」との認識を示したが、自民党幹部は「首相から事前に内容を聞いたが、『うん』とは言わなかった」と語り、根回しが済まない中での見切り発車だったことを示唆した。26日夜には野党との修正協議に柔軟な小泉氏、中川秀直元幹事長らが会談し、首相と連絡を取り合っている。仮に民主党との合意が成立しなくても首相は一般財源化を進める考えだけに、首相は党内対立にも直面しかねない。
◇「聖域」ついに風穴−−小泉氏は大幅妥協、安倍氏も転用だけ
道路特定財源制度は1954年の導入以来、半世紀以上続いてきた戦後財政の「聖域」だった。福田首相が打ち出した一般財源化により、巨額の予算が道路建設だけに使われるという極端に硬直的な仕組みに歴史的な風穴が開く。実現すれば、福祉や教育にも使えるようになる。野党の攻勢に追い詰められた末とはいえ、福田首相が小泉純一郎元首相もできなかった抜本改革を打ち出したのは皮肉だ。自民党政権の財政構造が大きな転換を迎えたのは間違いない。
「どういう状況にあろうと、今、私が申し上げたことは守っていきたい」。首相は記者会見で、09年度一般財源化は民主党の反応に左右されない「公約」だと強調した。
小泉氏は就任早々、道路特定財源見直しを宣言したが、道路族の強い抵抗に遭い、妥協を強いられた。結局、一部を旧本州四国連絡橋公団の債務処理に回し、道路公団を民営化するのがやっとだった。安倍晋三前首相は07年度予算で1806億円を一般財源化したが、特定財源の余剰分を回したに過ぎない。
ただ、特定財源見直しのもう一つの柱である暫定税率について、福田首相は08年度も維持する考えを譲っていない。新提案でも今年末の税制抜本改正時に結論を先送りした。抜本改正では、基礎年金の国庫負担引き上げに伴う財源として消費税増税論議が避けられない見通しで、新たな難題を抱え込むことになった。
首相はまた、道路整備中期計画についても期間を10年から5年に短縮すると表明した。高規格幹線道路1万4000キロの全線開通をどこまで見直せるかは不透明だ。
記者会見に先立ち、自民党の谷垣禎一政調会長と細田博之幹事長代理は首相官邸を訪れ、首相から新提案の説明を受けた。島根1区選出で、地方の道路整備推進派の細田氏は会談後、記者団に「いやあ、大変な案ですよ。首相主導型ということです」とうなった。
毎日新聞 2008年3月28日 大阪朝刊