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【コラム】相続税、2000万円以上税率100%で、全ての税金が不要に−森永卓郎★
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/122/index.html
前スレ
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1204542952/
消費税率引き上げ論争の陰にすっかり隠れてしまっているが、実は、手がつけられていない
もう一つの税制改革がある。それが、相続税の課税強化だ。不思議なことに、一切議論に
なっていないが、これは非常に大きな問題をはらんでいるのである。
現在、相続税の課税対象になっている金額は11兆円である。さらに、基礎控除があったり
固定資産の評価の問題があったりして、実際に納税された相続税はわずか1兆円に過ぎない。
2007年度の税収53兆円のなかにあって、1兆円というのは確かにたいした額ではない。だが、
この相続税は使い方しだいで、財政赤字を根本的に解消するほどの大きなパワーを持っていることを
知っておいていただきたい。
内閣府が2月8日に発表した2006年度の「国民経済計算」という統計によると、国民全体の「国富」は、
前年末比2.9%増の2717兆円となった。国富というのは、国民が持っている金融資産や土地、建物などの
財産から借金を差し引いた正味資産である。
このうち、個人の正味資産は2191兆円になる。正確に算出するのは難しいが、仮に30年で世代が
入れ替わるとすると、1年あたりの遺産は73兆円となる計算だ。このうち、実際には1兆円しか
納税されていないというのも妙ではないか。
■相続税のかけかた次第で、すべての税金が不要に!
まず、相続税の仕組みを簡単に紹介しよう。
相続税の課税対象額は、遺産の総額から基礎控除を差し引いて決められる。基礎控除額は
1相続あたり5000万円、プラス法定相続人1人あたり1000万円となる。配偶者と子供が2人いれば、
法定相続人が3人だから、5000万円+3000万円=8000万円が基礎控除となる。
1億円の遺産があったとしても、実際に課税対象となるのは、この基礎控除を差し引いた2000万円。
そして、実際に支払う税金は100万円程度になる計算だ。
そもそも、大部分の国民は、この基礎控除の範囲内に遺産の額が収まってしまう。だから、実際に
相続税が課税されているケースは、全体の4%に過ぎない。そのために、相続税の納税額がわずか
1兆円にとどまっているわけだ。
さきほど、わたしは1年あたりの遺産の総額を73兆円と紹介した。これを全部取れというのは
無茶だろうから、基礎控除を1相続あたり2000万円に引き下げたらどうだろうか。その代わり、
残りを100%の課税にするのだ。
年間の死亡者は約100万人である。すると、控除額はどんなに多くても20兆円にとどまる。仮に
20兆円すべてが控除対象となっても、残りの53兆円が税収となる勘定だ。
興味深いことに、2007年度のわが国の税収総額は53兆円である。つまり、2000万円以上の遺産は
相続させないというルールを作るだけで、所得税も消費税も法人税も一切支払わなくてよいことに
なるわけだ。われながら非常にいいアイデアだと思うのだが、どうだろうか。
■人生の機会均等のためには相続税強化が必要
2000万円あれば、思い出の品は残るし、一般的な評価ならばたいていの家は残る。それでは困ると
言うかもしれないが、ほかの税金はまったく払わなくていいのだから、実際にはそれほど大変ではない。
親の七光で威張るドラ息子もいなくなり、純粋な競争社会になる。こんなに経済活力を生む税制は
ないではないか。
いわゆる構造改革派の人たちは、「所得税で税金をとられると、勤労意欲が落ちる」という言い分で
消費税率の引き上げを狙っているが、ならば、相続税ならばいいではないか。遺産という、いわば
不労所得なのだから、勤労意欲とは関係ないだろう。
だが、構造改革派はこうした方針には絶対に同意はしない。彼らの求めているのは、結果の平等では
なく、機会の平等であるからだ。
もちろん、機会が本当に平等に与えられていればいいのだが、今の世の中は不公平だらけではないか。
同族企業では、社長の息子がほかの社員の何倍も給料ももらい、猛スピードで出世する。ただ親が
事業で成功したからといって、子どももなんの苦労もなく大きな屋敷に住んで、高級車を乗り回して、
豪勢な食事をする。
人間は生まれながらに平等という理念からすれば、こんな奇妙なことはない。
しかも、教育環境も大きく違う。金持ちの子はいい塾に通わせてもらい、家庭教師がつけられるのだから、
よほどの愚か者でない限り、そこそこいい大学まで行ける。そうしたことでただでさえ差がつくのだから、
親が死んだあとの資産で差をつけることはないではないか。
人生の機会均等ということを考えるのであれば、生まれたときに、たまたま親が大金持ちだからといって、
それだけで人生が保証されてしまうというのはおかしい。親が死んだら、必要最低限の分を残し、
あとはごっそり税金でとればいいのである。そうすれば、日本は本当の意味での競争社会になるだろう。
活気ある競争社会というのは、まさに構造改革派の望みのはずなのだが、いかがだろうか。
■金持ち優遇、庶民いじめの相続税改定を阻止せよ!
(中略)
そして、いま政府税調は何をやろうとしているのか。昨年の11月の政府税調の答申で、相続税に
関して次のように書いている。
「地価上昇時に引き上げられ高止まりしている現在の基礎控除の水準は引き下げが適当と
考えられる」
実に明確に示している。だが、もし基礎控除を引き下げるのならば、同時に金持ちの税率を
増やさなくてはならないのだが、その点については次のように書き方をぼやかしている。
「税率については検討していかなくてはならない」
つまり、相続税の対象となるハードルを低くして、一般庶民にも相続税の網を広げる一方、金持ちの
税率は据え置きたいというわけだ。
これが実施されれば、いま拡大している格差が、そのまま世代を超えて温存されることは間違いない。
構造改革派が考えているのは、階層の固定化と、自分たちの子孫が豊かにあることだけなのだ。
本来ならば、まず取り組まなければならないのは、相続税の最高税率を100%へと引き上げる税率
改正である。その状況を踏まえて、税収が足りなければ、基礎控除を少しずつ下げていけばよい。
消費税率を引き上げるより、相続税率を引き上げる方が、国民の痛みは圧倒的に小さい。そもそも
遺産というのは、「棚からぼた餅」のように入ってくるお金である。そこに大きく課税されても生活には
影響しない。万一、相続のために一般庶民が家を売らざるを得ない状態に直面するようならば、
政府が相続税支払いのローンを提供すればいいだろう。
消費税率論争だけでなく、ぜひ国会やメディアで相続税についても取り上げてほしいものである。
(以上)