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ギョーザ事件:犯人の思う壺にはまった両国世論
中国を読み解く視点 高井潔司(北海道大学教授・サーチナ総合研究所客員研究員)
中国製冷凍ギョウザの農薬中毒事件をめぐる捜査で、日中両国が対立、最悪のシナリオをたどり始めた。
日中関係はせっかく改善の兆しをつかみかけていただけに、こうした事件で揺さぶられるのは極めて残念なことだ。
食の安全は国民の大きな関心事であり、マスコミがこの問題を連日大きく扱うのは当然のことだ。
しかし、いたずらに食に対する国民の不安を煽ったり、反中国をここぞとばかり煽る記事や番組が
一部週刊誌やテレビのワイドショーで目立っている。(中略)その延長で、日中両国の捜査当局は
それぞれ自国で混入した可能性は極めて少ないと表明した。これを受けて両国のメディアでは、
相手国が犯した犯罪であるかのような非難の応酬が繰り広げられることになってしまった。
◆犯罪は両国にとって共通の敵
この事件が、当初日本の新聞などで大きく取り上げられた残留農薬の問題ではなく、また製造過程で誤って
混入した事故でもなく、何者かが意図的に農薬を混入させた犯罪であることは、おそらく両国の捜査当局の
一致するところであろう。ならば、なぜ両国の捜査当局は、有力な証拠を得たわけでも容疑者を挙げたわけでもないのに、
「自国で混入した可能性が少ない」などと結論を急いでしまうのだろうか。あらゆる可能性を排除せずに
捜査するのが、犯罪捜査の基本ではないのか。お互いが言い分、根拠を持ち、国益を求めて虚虚実実の交渉を
展開する外交と違って、犯罪捜査は事実を積み重ねて共通の敵である犯人を挙げ、犯罪の再発を防ぐことが第一である。
(中略)
今回のギョウザ事件では、冷凍工場の経営幹部が記者会見で「われわれこそ最大の被害者だ」と涙ながらに語った。
もちろん彼らも被害者だが、最大の被害者はやはり中毒症状に陥った日本の消費者である。
大事なことは、いずれも被害者であって、犯人が中国人であろうと日本人であろうと、共通の敵であるということだろう。
こんなことはわざわざ言う必要もない当たり前のことだ。 (中略)
サーチナ http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0304&f=column_0304_002.shtml
◆食の安全は両国の課題――望まれる多様な報道
両国のメディアに望みたいことは、日中の食い違いにばかり焦点を当てる報道ではなく、
様々な角度から報道を心がけてほしいという点だ。そして相手の多様な報道にも注目することだ。
例えば中国公安省の会見を1面で報じた読売新聞28日夕刊は、社会面では「『まず一報』、
行政反省、対応も改善、保健所『24時間で』」と、今回の事件を教訓に再発防止策を打ち出したと報じている。
2月末は筆者は広東に出張していたが、広州の地元紙に、にせものの塩の「亜硝酸塩」による中毒事件があり
2人が死亡したという事件が報じられていた。中国にとっても、食の安全性は実は大問題になっている。
したがって、日本の動きは中国にとって参考になる点が多々あるはずだ。対立点ばかり伝えるのではなく、
両国の国民にとって食の安全性がますます重要になっていることを基本に報道を心がけてもらいたいし、
両国の政府がそれぞれの国のメディアの環境を考慮に入れたメディア対応を図る必要があろう。
以上