地球温暖化の原因は利潤追求の資本主義体制自体にある IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、気候変動がいかに急速にわれわれに破滅をもたらすかに関する報告書を発表してから、ほぼ一年が経過した。この報告書は、問題をいっそう明白な、議論の余地のないもにした。その結論は、気候変動の脅威は、もはや無視できない、というものであった。フォード・ラッドがミシェル・レヴィと対談した。ミシェル・レヴィは第四インターナショナルと社会主義世界運動の古参メンバーで、気候変動と新しい世界体制の必要性に関する分野では広く知られた社会学者である。今や臨界点を超えつつある――あなたは、地球温暖化は、以前の気候モデルよりもはるかに速いペースで進行している、と述べておられますが、どれほど速いのでしょうか。 温暖化の速度を正確に予想することは困難です。我々が知っていることは、地球温暖化は事実であり、これまでになく加速している、ということです。また今日では、IPCC報告書に提示されているシナリオの多くが、二一〇〇年までにではなく二〇五〇年までに起こるだろう、ということも知られています。それどころか、もっと早く起こるでしょう。 生態系の崩壊の明白な例が、すでにいくつも明らかになっています。地球温暖化は、いくつかの臨界点を超えようとしており、制御不能の連鎖反応、気候変動の暴走に向かうリスクが高まっています。 ――この状況を考慮して、左翼運動はどのような立場をとるべきでしょうか。 最初にわれわれがしなければならないことは、地球温暖化は事実であり、今後数十年間にその姿を現すだろうということ、したがって、われわれはもはや待っていられない、今すぐ行動しなければならないということを、人々に伝えることです。 われわれがしなければならないことの二番目は、気候変動が急激に進行しているという態度をとることです。すでに事態が暴走するというリスクが現実になっているのですから、EUやスターン報告書や京都議定書が設定した目標や、他のブルジョア政府が設定した目標よりはるかに高い要求を掲げなければなりません。人々にこれを伝え、支配階級の気候に関する目標が人類と地球の破滅を防ぐには十分でないことを理解させることが非常に重要です。 ――現在の政府の気候政策を支持すべきではないのですか。 今日の政府は、資本主義の自殺行為を防ぐことについてはまったく無能です。しかし、これは、支配階級の集団的意志の欠如や理解の欠如によるものではありません。理由は、資本主義体制が限界というものを許容できないことにあります。資本主義体制は、生態学的、社会的適応を行うことは不可能なのです。 資本主義の主要推進力は利潤であり、利潤は、無制限の拡大、無制限の蓄積と商品化を必要とします。これらはこの体制の再生産の継続にとって、いくつかの不可欠の部分です。あらゆる技術的な問題は別にして、これは気候問題のイデオロギー的側面です。したがってわれわれは、ブルジョアジーは気候問題の重大性と責任に対処することができない、というイデオロギー的結論を引き出す必要があります。 問題の原因は、ブルジョア政府の邪悪な側面にあるのではなく、資本主義体制自体にあるのです。これは、人々が理解しなければならないことの一つです。人々が認識しなければならないもう一つのことは、オルタナティブが存在することです。抽象的なオルタナティブではなく、非常に具体的な想像可能な、エコソシアリズムです。それは、社会的必要性と生態学的限界に対応した生産の共同の民主的管理です。それは言葉の否定的意味での神秘主義やユートピア主義ではなく、必然なのです。 エコ社会主義を確立するために――左翼は、今日の体制に対するオルタナティブとしてのエコソシアリズムをどのように確立すべきでしょうか。 目標がエコ社会主義社会だとしても、それは初期段階には関係がないことを、忘れてはなりません。なぜなら、人々は通常、抽象的と思えることを支持することはなく、日常生活の真の変化をもたらすものに動員されるからです。したがって、資本主義の論理に反する民衆の具体的要求を支持することが重要です。政党は必ずしも推進力である必要はありません。自分の経験に基づいた具体的要求を掲げる民衆が、推進力になるのです。 われわれはエコ社会主義革命に向けて、今、人々を動員することはできませんが、その代わりに、地球温暖化を減らすために責任者に具体的直接的要求を行うことをから始めるべきです。たとえば、政府が国際的環境条約を支持していなければ、最初に行うべきことは、気候科学を無視する政府を、たとえブルジョア政府であっても気候科学を無視しない政府と交代させることです。 オーストラリアでは、人民の動員がまさにこれを達成しました。十五万人を動員したデモストレーションが、京都議定書に調印していなかった自由党政府を倒しました。右派労働党政権への交代であったとしても、これは前進です。 したがって、われわれは具体的地域的要求を掲げて闘うべきです。エクアドルでは、先住民が石油会社の石油の採掘を阻止しました。ペルーでは、無料の公共輸送を要求しています。ブラジルの農民は熱帯雨林の伐採に対して闘っています。このような要求はすべて、重要であり、支持しなければなりません。勝利のたびに、動的な過程の中で資本主義の論理にさらに挑戦する新たな要求を提出する必要があります。 ――全地球的には弱体な左翼は、これを達成するために何をなすべきでしょうか。 気候闘争は、第一に資本主義と社会主義の間のイデオロギー闘争であるのではなく、むしろ強力な経済的利害関係者に反対する民衆の具体的要求が第一です。 たとえば、ブラジルでは、種々の農村の集団(家族農業や小規模農民協同組合)が多国籍企業や農業の営利企業化に反対しています。農業の営利企業化は敵対を強め、何人もの農民が実際に殺されています。この闘いを、われわれは支持しなければなりません。それは、これ以上の森林伐採に反対し、農民がエコロジー的に生産することができ、それを望んでいるときに、金をエタノール産業につぎ込むことを阻止することです。これは社会主義的でないとしても、いくつかの明確に反資本主義的側面を持った闘いです。 したがって、闘いは、地域の人民とグローバル化した資本の間の既存の敵対と対立の中から発展します。これらの自然発生的闘争のすべてにおいて、人々は強力な利害関係者に挑戦し、集団組織化に向かう傾向があります。この闘争の経験が、われわれが今日持っている唯一の希望です。 「抵抗こそ唯一の道だ」――今日、先進資本主義国のすべての政府が、気候について語り、気候問題を解決したいと語りながら、同時に化石燃料社会の締め付けを強化する巨大な投資を行っています。どうすれば支配階級の気候政策のもつれをほぐすことができるでしょうか。 ブルジョア政府は、この危機を誤った方法で取り扱っており、これはある意味で不可避的なことです。また、緑の党の手に希望を託すことも不可能です。なぜなら彼らは資本主義の化石燃料に対する癒しがたい渇きとエコロジー的危機の間の矛盾を感じていないからです。これは、エコ改良主義的提案以上に進もうとしない彼らの政策自体から明らかなことです。この点は別にして、緑の党は、しばしばブルジョア政府にとってアリバイとして利用されています。 唯一の方法は、既存の矛盾を目に見えるようにすることですが、これを行う一般的な方法があるとは思いません。すべての国にはそれぞれの特殊な状況、満足させなければならない種々の必要性や要求があります。ブラジルでは、森林伐採やアマゾンの熱帯雨林の焼却の問題があり、これは膨大な温室効果ガスの放出と地球最大の二酸化炭素吸収源の一つの消滅をもたらしています。どちらを見ても、アマゾンの森林の状況は深刻で、不可避的に人類の破滅をもたらす可能性があります。 しかし、同時に、人々の間の認識は高まっており、消極的な政府に対する圧力を強めています。政府は熱帯雨林の保存については口では美しいことを言うけれども、現実には森林伐採に加担している営利企業と契約を結んでいます。 今日、この問題が農民、キリスト教会、地方住民、種々の左翼と環境団体、さらにはこの破局的開発を憂慮する国際的組織までも団結させています。これらすべてが力を合わせてアグロビジネスに反対する闘争で協調し、具体的な政治的要求を行う闘争が実現しています。 アマゾンの森林を守る試みは失敗する可能性があります。なぜなら、牛の飼育業者、大豆の商業的栽培業者、エタノール製造業者のような強力な利害関係者が存在するからです。彼らは挑戦されています。しかし、農民にはこれらの強力な利害関係者に挑戦する以外の道はないのです。 十分な支持があれば、彼らは政策を方向転換させることができます。これは、諸勢力間の十分強力な絆をどのようにして作り出し、人々を組織化して闘争の条件を変えることができるか、の一例に過ぎません。 ――あなたは将来をどのように見ていますか。 科学的な報告は大きな希望を与えてはくれませんが、今日の良い兆候は、エコ社会主義者・国際ネットワークが成長しつつあり、来年にはアマゾンで第二回国際会議が開催され、森林伐採に反対する闘いが動員されることです。これが希望をもたらしています。 ベルトルト・ブレヒトは、かってこう語りました。「闘えば負けるかもしれないが、闘わなければすでに負けたことになる。」抵抗が唯一の道なのです。 (この記事は、「インテルナチオナーレン第19号、2008年」に発表されたものである。「インテルナチオナーレン」は第四インター・スエーデン支部、社会主義者党の機関紙。) ▲ フォード・ラッドは、「インテルナチオナーレン」の記者で、ウーメオア在住の気候問題活動家である。 ▲ ミシェル・レヴィは、パリのCNRS(科学研究全国センター)の社会学研究部長である。『チェ・ゲバラのマルクス主義』、『マルクス主義と解放の神学』、『祖国か、母なる地球か』、『神の戦争―ラテンアメリカにおける宗教と政治』などの著書がある。 (「インターナショナルビューポイント」08年9月号)
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