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コラム:米イスラエルに対するアラブ政権の低姿勢批判(クドゥス・アラビー紙) 翻訳者:十倉桐子
http://www.asyura2.com/08/kokusai3/msg/169.html
投稿者 gataro 日時 2008 年 9 月 15 日 12:02:27: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20080913_171254.html から転載。

コラム:米イスラエルに対するアラブ政権の低姿勢批判
2008年09月13日付 al-Quds al-Arabi紙
■ 我々アラブの面目を失わせるチャベス

2008年09月13日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】

世界各国のテレビカメラの前に立ち手を振り回しながら、チャベス・ベネズエラ大統領は、自国に駐在する米大使に退去まで72時間の猶予を与える旨宣言した。2日前、同大統領の盟友であるボリビア大統領が、あからさまな内政干渉を理由に米大使放逐の手段を取った、それに対する連帯の意を示すためであるという。その光景に私は心を動かされた。

よく知られる赤シャツ姿のチャベス大統領は、世界最強国の大使追放だけでは飽き足らず、合衆国に対する自国石油の輸出停止までほのめかした。そして南オセチア、アブハジアの独立を認知し外交使節の交換を決定、ロシアの戦闘機をベネズエラ領土に受入れた。

心を動かされたというのは、我々は、米領事あるいはイスラエル領事でさえ放逐する勇気を示したアラブ指導者を見たことがないからである。富める国貧しき国、石油国海洋国、あるいは砂漠の国農耕国、東アラブと西アラブ、革命政権、反動政権、強硬派に穏健派、あらゆるアラブの国々を見渡しても、そのような指導者は現れていない。

合衆国の勢力圏内にいながらその国を制するチャベス。我々アラブはといえば、石油を与え、軍事基地を
許可し、投資し、大規模軍事契約を結び、その国債を買ってかの国の落ちぶれた経済を救ってやり、実のところアラブとムスリムに対する戦争である対テロ戦争なるものに熱心に参加している。

この卑屈な弱い立場に何故我々が現在甘んじているのか、理解に苦しむところである。全方面を威嚇する国際的戦略バランスの中で我々の力はマイナスに陥っている。頭をたれ、片頬を打たれたらもう片方を差し出し、執行者に笑ってみせる。しかも我々は叫び声も上げられない。そうすれば向こう見ずなテロリストだとみなされるのだ。

米政権は、イラクを侵略、占領し破壊した。「アブー・グレイブ」その他でイラク国民を虐待し、150万を殺し迫害し、500万を難民にした。それでも我々はその前に跪き、全ての願いをかなえてやっている。アラブ主義に敵対的な宗派主義のイラク政府に対して債務を撤廃してやり、関係正常化のために外交使節を派遣する。

米経済は揺らいでいる。失業率は激しく上昇し、イラクとアフガニスタンでの不正な戦争のため損失は8000億ドルにのぼる。他ならぬ我々アラブ主要諸国の政府が、完全にイスラエルの肩を持つ米政権の戦争に対して補償を与えているのだ。安価で石油を供給し、経済を救ってやることによって。これ以上の愚かしさ、無条件降伏、マゾヒズムがあろうか。

ヘブライ国家と外交協定、通商協定、もしくは両方を結んだアラブ政府がある。和平を進め、アラブを警戒する(といってもこれは現在の「アラブ」ではない)彼らを安心させるため、として。そのような関係を公然と結んだ事のない国も、アナポリス和平会議へ出かけて行き、ブッシュが約したパレスチナ独立国家樹立へ至る協議が再開されるなどという虚偽情報の証人にさせられた。

イスラエルは卑屈なアラブの和平交渉を退け、ベツレヘムの団体やイスラエル人の組織「ピース・ナウ」の統計によれば、アナポリス以来、入植地を約500増やしている。アナポリスに外相を参加させた国で、そこでの合意が適用されなかったとして、自国駐在のイスラエル大使を放逐する手段を取ろうとしたところが一つでもあるだろうか。

事態はもっとひどい。ガザでのイスラエルの虐殺行為を思い出して欲しい。醜悪なナチス風の包囲、封鎖の様子を。高貴な血を動かされ、自国のイスラエル大使館もしくは通商公館を閉鎖しようとする、あるいは、放逐とまでは言わなくとも米大使を召喚し、包囲され飢えた同胞への配慮を訴えるアラブ指導者はいなかったのか。

軍部までも、我々の国々では文民指導者に輪をかけて従属的である。一方、パキスタンでは、事前の照会なくアフガニスタンとの国境地帯を空爆した合衆国に対し、軍司令官が怒りを表明し、軍事同盟の終結、対テロ戦争への協力停止を警告した。アラブでは、軍人は政治指導部の卑屈な振る舞いに沈黙を強要される。将校らを訓練し武装させ、愛国心を吹き込むのに何億もの金が動いているというのに。

トルコの軍事組織の例を見ると、アタチュルクの世俗主義を防衛する事を任としている彼らは、アンカラの与党イスラム政党に対しクーデターを行おうとはしない。しかしそれは彼らの弱腰を意味するわけではない。トルコ政府は国益を第一としており、民主主義の基準に則り腐敗と戦っている。また、強い経済を確立し最高の成長率を実現している。そのため軍は動かないのである。

我々は軍事クーデターは求めない。我々の試みは失敗と失望をもたらした。その憎むべき段階の残滓は多くのアラブの首都で未だに目に明らかである。しかし、我々の愛国的将校たちが、腐敗した指導者たちを「もう充分だろう」と諌めてはくれないものか。この腐った異常事態を正し我々の共同体に誇りを取り戻すため、圧力を行使してくれればと願う。

オルメルト・イスラエル首相は、パレスチナ大統領を、何千もの殉教者を出した派閥の大元、PLOの長などと言って攻撃し、また、闘士サミール・アル=カンタールと握手を交わしたとして彼を叱り付けた。これを受けてアッバース大統領は、自身の遺憾なる立場について間接的に釈明し、(テロリストと握手などという)恐るべき行為については直接的に言い訳をした。いくらなんでもこの態度は行き過ぎであろう。

ガザで包囲された同胞のために食糧や医薬品を運ぼうとしたエジプト国民をエジプト軍が制止するに至っては、行き過ぎも極まる。しかも彼らはラファハの国境通行所を突破しようとしたわけではない。包囲を破ろうとしたわけでもない。オルメルトと合衆国の怒りを恐れ、粛々とスエズ運河を通行しようとしただけなのだ。イスラエルは、ガザに薬と医療設備を届けようとした勇気ある外国の船舶に許可を与えた。それなのにエジプト軍は自国民のシナイ通過を認めないという。

ほんの短い間だが、我々は、メディア、特に過去10年に急成長した衛星放送に希望を託せると言ってきた。しかしこの「覚醒」は霧散した。とどめが、アラブ各国の情報メディア大臣の「組織」が発行する「優等メディア」証書だ。これによれば、尊厳や愛国心を語り、大物達や彼らの汚職からは無縁の人々が刑務所行きにふさわしいとみなされブラックリストのトップに載せられる。そのような人をゲストに呼ぶ放送局は許可を取り消され閉鎖させられる。

アラブ衛星放送界で現在起きている先例のない恐ろしい変化は、彼らが先を争って、病的なやり方でイスラエル人幹部をゲストに招こうとしている事だ。物事の別の側面を示すという観点からではなく、これらの人々と彼らの政府の歓心を買い怒りを避けようとするがために。

かつて、衛星放送の番組司会者は、イスラエル人ゲストとの会見にあたっては挑発的な質問で彼らを「炙り焼き」にしたものだ。見ている方が同情するほど、ゲストは血圧を上げ怒りと興奮で顔を真っ赤にしていた。今や状況は一変し、イスラエル人幹部らが司会者たちを失礼なやり方で攻撃する。彼らが局のオーナーであるかのように、プロフェッショナルな報道について薀蓄をたれたりする。昨日は、「アル=アラビーヤ」放送によるリブニー女史のインタビューを見たが、彼女がマハトマ・ガンジーでもあるかのような、インタビュアーの態度に驚いた。彼女に耳打ちせんばかりの様子で、話をさえぎることはなく、好きなように攻撃させ話題を変えさせていた。

ジャジーラ放送は、サミール・カンタールの誕生祝を放映したためイスラエルの怒りを買うまでは、メディアとしての「プロフェッショナリズム」とは無縁であった。ジャジーラの幹部委員会は、カンタールの誕生祝に出かけ撮影しライブ放送を行った同局のベイルート支局長は職業的原則から外れたとする声明を発した。ジャジーラは否定しているが、多くの人が、これを同局による(イスラエルへの)謝罪であるとみなしている。どう受け取るかは洞察力によりけりだが。

我々にプロのメディアとは何かの教えをたれるのが、我々が何を放映すべきか決めるのがイスラエルになってしまった。誰がテロリストで、誰が落ち着いた穏健派のリーダーか、それもイスラエルが決める。不能の和平プロセス継続を受け入れ主導し、従って「話題となる」ためゲストに呼ぶべきは後者である。アラブの衛星放送各局は、アラブ諸国の首都よりは占領エルサレムに支局を置きたがるようになった。このため我々は、イスラエル側が、プレス認証の取り消しや特派員協力を拒むという脅しの手段を使うようになったのを見聞きする。

残念ながらチャベスはアラブ人ではない。アラブ地域に彼のような人物はおらず、彼のような人が政権に至る兆候もない。我々は無能者に支配され、尊厳と力と高潔さを失った共同体なのだ。

この記事の原文はこちら(http://www.tufs.ac.jp/common/prmeis/data/qudsarabi/080913qudsarabi_kiri.mht

(翻訳者:十倉桐子)
(記事ID:14692)


 

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