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>>しかし、食糧危機は社会不安を起こす。食糧難と言うと、先進国や中東など一部の金持ち国ではインフレ問題の1つとして語られることが多い。そのため、先進国に住んでいる人々には、この問題の深刻さが正確に伝わらない。しかし、食糧危機は、後進国では餓死、反乱、クーデターを連想する言葉だ。つまり人々の生死に直結する問題である。
※先進国、特に食料自給率39%(2006年度)の日本でも、世界的な食糧危機が深刻な問題になるのは全く同じだ。
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食糧危機への備えはあるか
―サブプライムや原油高よりも深刻―
2008年5月14日 水曜日 J・W・チャイ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20080512/156136/
英エコノミスト誌は、2008年4月19日号の特集で世界に広がる食糧危機を取り上げた。タイトルは「The Silent Tsunami 〜 The food crisis and how to solve it」。日本語に訳すと「静かな津波〜食糧危機とその解決策」となるだろう。これは米国発の金融不安や原油高騰と比べても、看過できない問題だ。
というより、もっと深刻な問題だと言った方が正しいだろう。「信用不安によって投資家が損失を被った」「住宅価格の下落で消費が減速した」と言っても、クーデターによって政府が潰れたり、何万人もの人々が死傷するわけではない。原油の高騰もしかりである。
しかし、食糧危機は社会不安を起こす。食糧難と言うと、先進国や中東など一部の金持ち国ではインフレ問題の1つとして語られることが多い。そのため、先進国に住んでいる人々には、この問題の深刻さが正確に伝わらない。しかし、食糧危機は、後進国では餓死、反乱、クーデターを連想する言葉だ。つまり人々の生死に直結する問題である。
なぜ、その食糧難がここへきて深刻さを増したのか。理由はいくつかある。
■中国の中流層が菜食から肉食に
第1が人口の増加だ。地球の資源が人口増に追いついていない。現在、世界の総人口は66億人を超えており、後進国ほど幾何級数的に増えている。この人口増の犠牲になっているのが農地面積だ。世界の農業収穫面積は1950年に比べて、半分以下に減った。人口が増えているのに、農地が減っているのだから、食糧不足になるのは当然である。
第2が人々の食生活の変化である。人口が13億人を超える中国では、肉を食べる中産階級が急増している。肉牛を育てるには、餌としての穀物が必要になる。100カロリーの牛肉を生産するためには、約700カロリーの穀物が必要と言われる。つまり、人々の食生活が菜食から肉食に変化するほど、食糧不足が進む。世界人口の5分の1を占める中国で食生活の変化が起きているのだから、その影響は大きい。
第3が農業の“工業化”だ。農地面積の減少を補うには、農業の生産性を向上させる必要がある。そのため、農業は急速に工業化された。これはすなわち、農業が燃料を必要とする産業に転じたことを意味する。
トラクターや運搬車両には燃料が必要であり、肥料を作るのにも石油がいる。いつの間にか農業は石油無しにはやっていけない産業となった。そこを原油高が襲った。米国では標準的な肥料の値段が1年前には1トン当たり約450ドルだったが、現在はおよそ3倍の約1200ドルに高騰している。1バレルが110ドルを超えるような現在の石油の値段では、今の農業はもたない。
第4が地球温暖化である。世界的な天候不順が農業の生産性を低下させている。例えば、世界で2番目の穀物輸出国であるオーストラリアが、10年来の天候不順で急速に砂漠化している。
そして第5がバイオ燃料ブームだ。欧米を中心にガソリンに代わる燃料として、サトウキビ、トウモロコシ、廃木材などから作るバイオ燃料が注目を浴びている。各国政府が、バイオ燃料の普及を促すために優遇税制を導入している。安全保障上の理由からエネルギーを自国で賄うというのが大義名分となっているが、私に言わせれば、この仕組みは詐欺に近い。結果として食糧危機を助長している。
サトウキビを原料とするブラジルの仕組みはまだ可能性があるが、大豆やトウモロコシを原料にする欧米の仕組みは生産性が低い。大豆の場合、バイオ燃料1ガロン当たりの生産コストが売り値を上回る。
それにバイオ燃料ブームは投機マネーを呼び込んでおり、食糧価格高騰の一因を作っている。米国ではブッシュ政権がバイオ燃料を推進しているが、政権が代われば、早急に見直されるだろう。
■フィリピン、ハイチなど世界中で、政府に対する抗議や暴動が起きる
食糧難の影響は深刻である。世界には今、1日1ドル以下の食事代で生活している人が約10億人存在すると言われる。彼らは現在の食品価格が2割上がると、1日3食を2食に減らさざるを得ない。当然、食卓から肉や野菜は消える。1日50セントで生活する人だと、たちまち飢餓状態に陥る。
一方、どこの国にもこうした食糧難を商機と見て、米や小麦粉などを買い占める“悪徳商人”が存在する。米の最大の輸入国であるフィリピンでは、政府がこうした悪徳商人に重刑を課そうとしているが、庶民は「それでも生ぬるい。死刑だ」と叫んでいる。ハイチでは食糧価格の高騰に怒った住民が抗議デモを多発し、首相が辞任に追い込まれた。
既にインドやエジプトなど10カ国以上が食糧輸出禁止令や輸入食糧の無税化に動いている。アルゼンチンでは、食糧の輸出に税金を課したことが原因で、農民と政府の間で衝突が起きた。中国の事情通によれば、中国政府が今、北京オリンピック後に最も心配しているのは、経済の減速よりも、食糧不足による暴動が起きることだそうだ。
食糧問題については、様々な形で支援策が講じられようとしている。4月に米ワシントンで開催された7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも、この問題が論じられた。世界銀行と国際通貨基金(IMF)は食糧問題を緊急支援していく共同声明を出した。国際連合も、緊急支援のための資金の拠出を各国に求めている。
もともと世界の主要国は、十分な食糧在庫を持っていたが、過去20年間、食糧が豊富で安価な時代が続いたため、次第に在庫を減らしていった。油断していたところを見計らったように、食糧危機が襲ってきたのである。金融問題や原油高に目を奪われていると、その背後にある深刻な危機に気づかない。特に資源の乏しい日本の場合、この問題にどう対処していくかは危急の課題のはずである。
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DOMOTO
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/nanboku.index.html