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2008年4月23日 朝刊
米大統領選挙の報道で「市民ジャーナリスト」が大活躍している。過去の大統領選挙では、新聞やテレビの巨費を投じた総力戦取材が通例だったが、今回はブロガーなど普通の市民の活躍が目立つ。中には「大特ダネ」をものにするケースも。票集め、資金集めでネットが大きな影響力を発揮している選挙戦。報道のありようも、ネットによる市民参加で変わろうとしている。 (ニューヨーク・池尾伸一)
「ペンシルベニアの田舎町の人々は失業に苦しみ、社会に恨みを持ち、銃や宗教におぼれている」。民主党大統領候補選びの天王山、二十二日のペンシルベニア州予備選で大きな波乱要因となったのは、最有力候補オバマ上院議員がサンフランシスコの資金集め集会で行った“失言”だ。発言がネット上で明るみに出るや、CNNや各新聞は「オバマ氏の地方の人に対する偏見的な発言」と一斉に追いかけ、クリントン上院議員も猛批判。一部有権者の「オバマ離れ」のきっかけになるとの観測もある。
発言をスクープしたのはプロの記者ではなく、カリフォルニア州に住む六十一歳の主婦メイヒル・ファウラーさんだった。有名サイト「ハフィントンポスト」が昨年、一般人に「市民記者」として選挙戦を取材してもらう企画をスタートさせたところ、メイヒルさんはただちに登録。選挙集会などに参加しては記事を書いてきた。
資金集め集会は記者には非公開だったが、オバマ候補の熱心な支持者でもあるメイヒルさんは関係者に頼み込んで「潜入」に成功。当初はオバマ陣営に不利になる事態を恐れ、失言報道を数日間ためらっていたが、結局「記者としては書くべきだ」と決断したという。
「従来の報道態勢なら埋もれてしまうような政治家の隠れた言動も、市民の力を活用すれば光が当たる。オバマ氏の問題発言の報道は狙い通り」。ハフィントンポストのディレクター、アマンダ・ミチェルさんは言う。
同企画には千八百人もの読者が市民記者として登録している。民主党の候補選びの最終的なカギを握る特別代議員八百人をしらみつぶしに取材、投票動向に迫るなど、数の力を武器に大メディアでも不可能な大がかりな報道も試みている。
若者に人気の音楽専門テレビ局MTVのサイトでも、全米五十州すべてに大学生や若者による「記者」を置き、キャンパスでの選挙運動の盛り上がりなどをビデオを駆使して伝えている。
市民記者の台頭をめぐっては、識者や既存メディアから、記事の信頼性や公平性について疑問の声も上がっている。だが、ハフィントンポストの編集者でジャーナリストのマーク・クーパーさんは「追加取材や書き直しをお願いすることもある。信頼性のある記事しか載せていない」と強調。市民の参加が選挙報道に新たな息吹をもたらすと主張している。
ハフィントンポスト 女性活動家アリアナ・ハフィントン氏が2005年にスタートさせたリベラル系インターネットサイト。コラムニストの評論や、他のニュースサイト記事へのリンクで構成。毎月約400万人がアクセスする。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008042302005836.html