バラク・オバマと黒人解放闘争（上）
「建国理念」擁護を強調、恩師発言を批判し自己防衛
トム・バレット解説
支配階級にとって「危険」な存在ではない 米大統領選で民主党の指名競争のトップを走るバラク・オバマ上院議員に対して、新たなネガティブ・キャンペーンが巻き起こっている。それはオバマが師事し、オバマ本人の結婚式や娘の洗礼にも立ち会ったシカゴのジェレミア・ライト牧師が、二〇〇一年の「９・11」直後に「米国は９・11の死者よりもはるかに多くの人びとを原爆で殺した」「９・11は、米国が外国で行ってきた国家テロへのしっぺがえしだ」と礼拝の説教で語ったことや、二〇〇六年にも「米国は神の存在以上に白人の優越、黒人の劣位を信じている」と述べ、米国が繰り返してきた侵略・虐殺や、国内の人種差別をラディカルに告発してきたためである。
三月十四日に全米の各メディアが報じたこのニュースに対して、オバマ上院議員はあらためて「米国の建国理念」を擁護し、「恩師」の発言を批判するなど防戦に躍起になっている。この自己防衛発言の中でオバマ上院議員は、あらためてシオニスト・イスラエル国家を擁護し、支配階級にとって自分が「危険」な存在ではないことを立証せざるをえなかった。以下の論文は、ライト師の主張を擁護して、オバマ上院議員の対応を批判している。
出典は、米国のマルクス主義派のウェブサイト「レイバー・スタンダード」。「レイバー・スタンダード」は、アメリカ社会主義労働者党（ＳＷＰ）が一九八〇年代に第四インターナショナルから離脱した際に、同党から除名されて「ＦＩＴ（第四インターナショナル・テンデンシー）」を結成した活動家たちが発行した「ブレチン・イン・ディフェンス・オブ・マルキシズム」（「マルクス主義の擁護」ブレチン）の後身で、主に労働組合運動を機軸に活動している。
（本紙編集部）
指名獲得戦での
オバマの快進撃
イリノイ州選出上院議員のバラク・オバマが、民主党大統領候補の指名獲得に向けて考えられなかったような前進を遂げている。それは、一部の党指導部を当惑させている。人びとを鼓舞するようなその演説スタイルがジョン・Ｆ・ケネディを思い起こさせると言われている若くてハンサムな上院議員は、怒りではなく理想主義に訴えることによって、ポジティブなキャンペーンを行うことを意図し、ニューヨーク州選出のヒラリー・ロダム・クリントン上院議員を追い詰めるほどに健闘してきた。一時は民主党の指名を受けるのはヒラリー・クリントンだと考えられていたのである。オバマのメッキが剥げるような何かが発見されるのは時間の問題だとされていた。
数カ月にわたり、オバマは合衆国に「忠実ではない」と印象づけるキャンペーンが半ば非公然的に進められてきた。彼は米国旗に対する「忠誠の誓い」を拒否しているとか、彼はイスラム教徒でありアルカイダに同情的であるとかという虚偽に満ちた主張である。さらに彼は服の襟に米国旗のピンをつけていないという批判までなされた。オバマの政敵は、彼の妻であるミシェル・オバマが、米国に誇りを持つようになったのは、夫の大統領選キャンペーンが始まってからだという言葉も利用した。
現在までのところ、インターネットの中傷キャンペーンは効果を持たなかった。オバマは、アフリカ系アメリカ人のほとんどすべてだけではなく、反戦運動の民主党支持派、労働組合指導部の一部、ケネディ一族と彼らが率いる一派、といった多くの重要な民主党支持者の想像力をとりこにした。オバマは、ヒラリー・クリントンよりも多くの大会代議員を獲得したが、両者とも選出代議員だけでは大会の第一回投票での勝利を得ることはできない。政府や民主党で役職についているために大会での投票権を持っている、いわゆる「スーパー代議員」が、候補指名を決定することになりそうである。クリントンは、彼ら「スーパー代議員」に対して、オバマでは大統領の本選挙で共和党のジョン・マケインに勝てないと信じ込ませようとしている。 毎週参加した
シカゴの教会 三月の第一週で、クリントンの選挙運動は、オバマに対して使えると考えている攻撃手段を発見したようだ。二十年間にわたってオバマ一家は、シカゴのサウスサイドにあるトリニティー・ユナイテッド教会に参加していた。その会衆は、ほとんどすべてがアフリカ系アメリカ人である。そのウェブサイトのホームページは、アフリカの太鼓とアフリカ大陸の地図の概観を描きだしている。
教会の牧師であるジェレミア・Ａ・ライト師は、六十七歳の市民権運動の古参であり、北部の工業都市における黒人抑圧を集約的に表現しているこの市の一部の会衆を取り仕切っている。したがってライト師が米国のアフリカ系アメリカ人が直面している抑圧に怒り、彼の怒りが日曜の朝の説教に表現されていることは、誰にとっても驚きではない。
日曜日の午前十一時から正午の時間は、米国の生活で最も隔離主義的だと言われている。つまりアフリカ系アメリカ人と「白人」アメリカ人（すなわち欧州系の祖先を持ち、「コーカシアン」とも呼ばれている）は、一緒に礼拝しない。付け加えれば、北部の諸都市に住むアフリカ系アメリカ人のほとんどは、自らの宗教的習慣を南部から持ち込んだ。カソリックやユダヤ教については言うまでもなく、長老教会、聖公会や他の主流プロテスタント教派のもったいぶった体裁に慣れ親しんだ白人は、その会衆が「コーカシアン」であろうとアフリカ系アメリカ人であろうと、南部のバプティストや聖霊降臨派の教会儀式で経験した表現豊かな集会や非妥協的な説教に居心地がよくない。
もちろん例外はある。私自身が若い時、私の家族はボルチモアにある数少ない真にレイス混合的監督教区に属していた。そしてもちろん黒人のカソリック、長老教会、ルター派、ユニテリアンがいる。しかしアフリカ系アメリカ人の宗教的伝統は、南部であり、プロテスタントであり、通常はバプティストでありメソジストであり、聖霊降臨派である。そして「ネーション・オブ・イスラム」の宗教儀式でさえ、アフリカ系アメリカ人の伝統的教会の宗教儀式と驚くほど共通しているのである。そのことは、白人にも手を差し伸べたウォーレス・Ｄ・ムハンマド指導下で私が見たことだった。 アメリカは当然
の罰を受けた 黒人コミュニティーの教会は、つねに市民権闘争の組織化センターだった。その牧師は、マルチン・ルーサー・キング・ジュニアやマルコムＸの時代から今日にいたるまで、この闘争の最も弁舌に秀でた率直なリーダーたちだった。アフリカ系アメリカ人は、彼らの牧師が、日曜の朝の説教でも、平日の黒人コミュニティーの公共生活においても、社会的・政治的課題にしっかりとした立場を取っていることに慣れ親しんでいる。しかしとりわけ北部の「白」人には、あまりそうした習慣はなく、彼らがユーチューブのウェブサイトでライト師の説教の二分間クリップを見た時、多くは否定的反応を示し、牧師がこのように説教する教会に出席する候補者には投票しようという気を起こさないことは確かである。
ライト師についての「暴露」を行った巨大ニュースメディアは、文脈から離れた引用を行い、彼の説教の煽動的な断片を示すことで、読者と視聴者にひどい仕打ちをしてきた。しかしＣＮＮリポーターのロランド・マーチンは、ライト師の説教の全体を検証し、二〇〇八年三月二十一日のＣＮＮアンダーソン・クーパー３６０ブログの記事で、きわめて異例の報告をしている。その記事は「ジェレミア・ライト師の９・11説教の全体像」と題されている。実際には、説教の最もよく抜粋される部分で、ライト師は前駐イラク米大使の言を引用しているのである。ここにマーチンが行った引用の全文がある。
「私はペック大使の昨日のインタビューを聞いた。誰かほかに彼の話を見たり聞いたりした人はいますか？ それはＦＯＸニュースだった。この人は白人だ。彼はＦＯＸニュースのコメンテーターをとてもびっくりさせた。白人であり、大使でもある彼は、マルコムＸが言ったことは事実だった、と指摘したんだ。彼はアメリカは当然の罰を受けた、と語ったんだ」。
「われわれはこの国を、スー、アパッチ、アリカラ、コマンチェ、アラパオ、ナバホからテロで奪った。テロリズムだ」。
「われわれは、自分たちの安楽のためにアフリカ人を彼らの国から連れ去り、彼らを奴隷にし、恐怖に満ちた生活をさせた。テロリズムだ」。
「われわれはグレナダを爆撃し、無実の文民や、赤ん坊や、軍人ではない人たちを殺した」。
「われわれは、ステルス爆撃機でパナマの黒人の市民社会を爆撃し、非武装の未成年や幼児、妊娠中の母親、一生懸命働いている父親を殺した」。
「われわれはカダフィの家を爆撃し、彼の子どもを殺した。祝福された者とは、君たちの子どもの頭を岩に打ちつけた人びとなんだ」。
「われわれはイラクを爆撃した。われわれは生きようとした非武装の市民を殺した。われわれは、わが国の大使館への攻撃の仕返しにスーダンの工場を爆撃し、一生懸命働いていた人びと、もう自分の家に帰れないことを知らないで働くために家を出た母親と父親を何百人も殺した」。
「われわれはヒロシマを爆撃した。われわれはナガサキを爆撃した。ニューヨークやペンタゴンの数千人よりはるかに多い人びとを核攻撃し、平気な気持ちでいたんだ」。
「運動場で遊んでいた子どもたち、学校帰りの子どもを迎えにいった母親。兵隊ではない普通の人びと、日々の暮らしに精出している人びと。こうした人たちが殺された」。
「われわれはパレスチナや南アフリカの黒人への国家テロを支持してきた。そして今われわれは、自分たちが海外でやってきたことが、自分たちの前庭でやられたとして怒りに震えている。アメリカは当然の罰を受けた」。
「暴力は暴力を生む。憎悪は憎悪を生む。そしてテロリズムはテロリズムを生む」。
「白人の大使はこう言った。彼は黒人の活動家ではない。レイシズムについて説教する聖職者でもない。彼は目を見開き、われわれを目覚めさせようとし、われわれが今その上に置かれているこの危険な絶壁から離れさせようとしている大使なのだ。大使は、われわれが傷つけた人びとは、われわれが持っているような軍事的能力を持ってはいない、と述べた。しかし彼らは、死ぬ覚悟を持っている個々人を持っている。われわれはこのことにしっかり取り組む必要がある」。
しかしマーチンが述べているように、ライト師の主要な主張は、米国が行ってきた間違いに抵抗しようということではない。 今までのやり方
を変える闘争を 彼は、９・11の後の写真を見ながら説明を続けた。彼は飛行機が突っ込んだ時、ニュージャージー州のニューアークにいたからだ。ＴＶをつけて、第二の飛行機がツイン・タワーの一つに激しく激突したのを見た時、彼は、君たちが家族に再びあいさつするチャンスがなくなったかのように情熱的に語った。
彼は「あなたたちの家族の状態はどうか」と聞いた。
それから彼は会衆に対して彼らを愛していると語り、教会に対して彼らが自分自身を愛するよう、おたがいに語ることを依頼した。
彼の説教の論旨は以下のようなものだった。
１ 今こそ、われわれ自身と家族たちの自己検証の時である。
２ 今こそ、社会的変革の時である（彼は、私が言おうとしていることをＰＢＳや全国ケーブルに載せさせるつもりはない、と続けた。予言者的に語ったのだ！）。
「われわれは、社会として物事を行ってきたやり方を変えなければならない」と彼は述べた。
それからライトは、われわれは他への戦争ではなく、戦争とレイシズムと不正と貪欲に対する戦争を宣言する必要がある、と語った。
「おそらくわれわれはエイズに対する戦争を宣言する必要がある。議会は五分間で、ニューヨーク、そして突然の死者を抱えた家族を再建するために四百億ドルの資金を見つけた。皆さんは、緩慢な死を迎えつつある人びとが薬を手に入れるために、これだけの金額を見つけることができると思うか。おそらくわれわれは、貧しい国民にいかなる医療も施さないわが国の保健制度に対する戦争を宣言する必要がある。おそらくわれわれは処理を誤った教育制度に対する戦争を宣言し、それぞれの支払い能力ではなく学習能力に基づいたすべての人びとへの良質な教育を提供する必要がある。今こそ社会的変革の時だ」。
３ 今こそ神に感謝する時である。神が提供したもの、そして神が他の人びとに神の意思を履行するチャンスを与えたことに対してである。 歯に衣を着せぬ
ライト師の発言 この説教は六年前、９・11の後の最初の日曜日である二〇〇一年九月十六日になされたものである。それは暴露的ニュースではない。またそれは単純な真実以上のものではない！
ライト師の言葉は、まさに歯に衣を着せないものだ。それは如才のない言葉ではない。それは確かに多くの「白」人を不愉快にさせている。しかしそれは白人に向けられたものではなかった。それは圧倒的に多くがアフリカ系アメリカ人である会衆に向けられたものであり、会衆の一人が米国大統領選に立候補するかもしれないという考えが浮かぶより、ずっと前になされたものだった。彼の説教が、オバマの大統領選立候補にとって高くつくというのならば、ライト師やバラク・オバマ上院議員についてよりも、白人住民の間でのレイシズムのレベルについて――そしてオバマの政敵やメディアがそれを利用する意思について――もっと多くのことが言われるべきだ。ライト師の説教をめぐる論争への部分的回答としてオバマがフィラデルフィアで行った「人種」に関する演説を論ずる前に、バラク・オバマとはまさに何者なのか、彼のアフリカ系アメリカ人との関係、その歴史的抑圧、人権・平等・公正・経済的生存のための闘争との関係について考えることには価値がある。 生い立ちとうわ
べだけの黒人性 バラク・オバマは、アフリカ人としての肉体的特徴――皮膚の色、髪の感触、その他の属性――を持っている。しかし彼は、米のアフリカ系アメリカ人とは何の個人的つながりも持ってはいない。彼の母親はカンサス州の白人女性である。彼の父親は東アフリカのケニアからの移民である。オバマ自身は、多くの「レイス」が共存している州であるハワイ生まれだが、黒人は多くない。オバマの家系図には奴隷はいない。彼の親族の誰もレイス隔離学校に通ったことはなかった。親族の誰も集団リンチで殺されたことはない。
ライト師は彼の説教の一つにおいて、誰もヒラリー・クリントンを「ニガー（黒人の蔑称）」と呼んだことはないと述べたが、同じことはオバマについても言えるだろう。彼は満開状況のアメリカのレイシズム主義を経験したことはなかったし、彼の家族もそうである。彼は「人種」とレイシズムについての知的理解を有しているかもしれない（しかし彼の演説から判断する限り、それはきわめて限定されたものだ）し、彼は大衆的な演説においては、マルチン・ルーサー・キングの弁舌スタイルを明快にマスターしている。しかし、彼の「黒人」性は、文字通りうわべだけである。
それは必ずしも、彼が選択をしたとき、アフリカ系アメリカ人の闘争の指導的役割を果たす資格を奪うものではない。初期の最も重要な黒人指導者の一人であるＷ・Ｅ・Ｂ・デュボアは、祖先からの黒人としての系譜はきわめて希薄だった。彼はバークシャー山地にあるマサチューセッツ州のグレート・バーリントンで生まれ育ったが、人が想像するような綿花畑からはかけ離れた所だった（デュボアが生まれたのは奴隷制の廃止から三年も経っていない時代で、アフリカ系アメリカ人の多くは直接に綿花生産に関わっていた）。にもかかわらず、彼は生涯を市民権の大義に捧げ、有色人種地位向上全国協会の創設指導者の一人だった。しかしデュボアが南部の人種差別を直接的に経験していなかったことは、とりわけ初期においては彼の政治的課題に影響を与えた。
オバマがアフリカ系アメリカ人の経験とのつながりを欠いていることは、必ずしも大統領に選出される資格を奪うものではない。われわれすべてが理解する必要があるのは次のことである。バラク・オバマが大統領に選出されたとしても（彼には大いにチャンスがある）、彼が以前政権についた機会主義的な政治家と何か異なった者であると信じる理由はない。彼は内外のすべての敵に対して資本家階級の利益を擁護するために全力をつくすようなことはしないと仮定する理由は存在しない。なぜならオバマは、資本主義権力構造が黒人の敵であるという理解も直観も持っていないがゆえに、資本家階級は彼を脅威とは見なさず、資本家の相当の部分は彼の優れた才能――そしてアフリカ系アメリカ人や青年の急進化の可能性を取り込む彼の能力――を自らの利益のために利用しようとしているのである。
オバマがフィラデルフィアで行った演説は、彼が自分のキャンペーンで押し出そうとするイメージとの一貫性を持っていた。それは真面目で品位のあるものであり、高尚な理想に訴え、「建国の父」と共和国がここフィラデルフィアでもたらした崇敬を表現するものだった。気のきいた冗談も、論争的な「機転」もなかった。政敵に対する攻撃も、米国の有色「人種」出身の人びとが正当なものと感じるかもしれない、いかなる怒りの表現もなかった。
この演説は、オバマが政治家としてのキャリアを上昇させることや、世界で最も強力な政権の座に選出されることよりも、米国への「公共的奉仕」に関心を持っているという考えを伝えようとするものだった。彼が本当にそれを信じているという可能性すらある。いずれにせよオバマ自ら書いたこの演説は、その調子と話しぶりは傑出したものだった。唯一の悪いところは、彼が現実に語った内容である。ライト師の説教について、オバマはこう語った。
「しかし最近のこの怒りの旋風を引き起こした発言は、単に物議をかもすだけのものではなかった。それは、宗教指導者が認識する不正への単なる遠慮のない発言ではなかった。それは、この国への完全に歪められた見解の表現である。この見解は、白人によるレイシズムを固有の風土病と見なし、われわれがアメリカの善と見なしているものをアメリカの悪とおとしめている。この見解は中東の紛争の根拠を、まず第一に、邪悪で憎悪に満ちたイスラム過激派から吹き出たものではなく、イスラエルのような信頼できる同盟国の行為によるものだとしている」。
いや、ライト師のこの国についての見解は、全く歪められたものではない。レイシズムはアメリカ資本主義の風土病である。そうでなくて何であろうか。ジェームスタウンに英国の植民地が作られる一世紀も前から、アフリカ人奴隷が西半球の植民地経済の基礎となっていた。スペインとポルトガルの植民地で砂糖キビ生産のために奴隷が必要だったのと同様に、バージニアでも利益の多いタバコ生産にとって必要だった。
アフリカ人は黒い皮膚の人びとへの偏見のために奴隷にされたのではない。それは完全に経済と実用性の問題だった。先住民族は良い奴隷とはならなかった。彼らはこの国を知っており、そのために脱走のチャンスをはるかに多く持っていた。彼らが脱走しなかったとすれば、それは苦役の重圧や白人がもたらした病気のために死んだからにすぎない。黒い皮膚の人びとは、確認が容易であり、故郷から遠く離れていたため、脱走することはそれほどたやすくなかった。ジェームスタウン植民地での最初の奴隷の広告は、彼らは天然痘にかかったことがあるので、もう感染することはないということを強調するものだった。
アメリカにおいて奴隷は、商人階級による初期の資本蓄積にとって不可欠の構成要素だった。奴隷、砂糖キビ、ラム酒の「三角貿易」――後には繊維と他の手工業製品が含まれる――ぬきに、銀行家たちは、資本主義経済と社会の基礎を形成する工業投資のための現金を手に入れることができなかった。したがって、現在の米国の地に最初にイギリス人が入植して以後の最初の二世紀半に、黒人はこの地で奴隷として生活し、労働してきたのである。資本主義経済は、奴隷をその経済の必須の要素として発展した。 （つづく）
（米「レイバー・スタンダード」ウエブサイトより）
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題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。