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(回答先: 医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟のシンポジウム。 《 速報 》 投稿者 どっちだ 日時 2008 年 4 月 13 日 22:26:21)
---日々是よろずER診療 から転載--------------------------------------------
http://case-report-by-erp.blog.so-net.ne.jp/2008-04-13
「真実を知りたい」に対する私見 [雑感] [編集]
昨日は、日比谷公会堂に行ってまいりました。
https://blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_735/case-report-by-ERP/No20041.jpg
「医療現場の危機打開と再建をめざすシンポジウム」
・報道記事 ⇒こちら (魚拓 http://s03.megalodon.jp/2008-0413-1132-16/www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0000938781.shtml )
・シンポジウムの詳細は、ロハス・メディカル・ブログで報告されています
⇒議連発足記念・真の公聴会 http://lohasmedical.jp/blog/2008/04/post_1157.php#more
・続いて僻地の産科医先生のところも
⇒こちら http://obgy.typepad.jp/blog/2008/04/post-1341-25.html
https://blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_735/case-report-by-ERP/No20043-f02b6.jpg
このシンポジウムを聴講するためです。 残念ながら、私事があり、中座せざるを得ませんでした。
国会議員の先生方に、現場の医療者が抱える現場の生の危機感が、それなりに伝わったのではないでしょうか?私は、そう期待したいです。
一方、患者側の立場として、NPO法人がん患者団体支援機構副理事長である内田絵子氏の発言もありました。
そのご発言の中で、やはり、意見の相違というか、立場の違いというか、落としどころが見えないというか・・・・
私が個人的にそんな風に感じたご発言を報告します。
(#)「私達(患者側)は、真実を知りたいんです」
というご発言です。
医療をお受けになる方々は、医療に対して、このようにお考えの人も多いでしょう。 それは、なんとなく感じます。だから、本日は、この点に対して、私見を述べてみます。
もちろん、これは、一医療者の私見にすぎません。医療者側の総論的意見であるとの誤解のなきようにお願いいたします。
「私達(患者側)は、真実を知りたいんです」とは、メディア報道を介してよく聞く台詞です。 自然災害であれ、殺人事件であれ、交通災害であれ、人が死んだとき、 その遺族側の方々の台詞として、私達は、この台詞を耳にします。 そして、医療関連の場合でも、その例外ではないようです。
「死」という結果においては、すべて共通するわけですから、同じ心理がベースにありそうです。
私は、今の現代社会が、「真実」「真実」と社会を挙げて騒ぎ立てることによって、かえって、よりいっそう暮らしにくい社会になってしまっているのではないかと危惧します。
真実になんて、だれにもわかないものだ。
と割り切ってしまったらどうでしょう?
人は、真実の名の下に、 物事に善悪のラベルをつけ、悪のラベルを貼った人を糾弾してやろうという性質があると思っているからです。
今の医療崩壊の一端は、こういう社会性が、一因となってはいないでしょうか?
中国の思想家、荘子(そうし)およびその一派がによって記されたという「荘子(そうじ)」という書物の中の内扁・斉物論(さいぶつろん)から、ある一説を引用します。この部分は、荘子自身の記載といわれているようです。
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吾は蛇蚹蜩翼を待つ者か。悪んぞ然る所以を識らん。悪んぞ然らざる所以を識らんと。
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蛇蚹(だふ)とはヘビのうろこのこと、蜩翼(ちょうよく)とはせみの翼のことだそうです。この漢文の言わんとするところは次のようなことだそうです。
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ヘビはなるほど歩く場合にうろこがあるから歩ける。うろこによってヘビは動いているともいえる。けれども、ヘビがなければうろこが動くわけではないから、うろこはヘビによって動くということかもしれぬ。ヘビがうろこによって動くか、うろこがヘビによって動くか。どっちがどうかわからぬ。セミは翼によって飛ぶということかもしれぬ。けれども、翼はセミがなければ飛ぶこともできない。どちらがどうか、これもよくはわからぬ。結局世の中に議論する、善悪を論ずるといったところで、善というものが真の善であるか、悪というものが真の悪であるか。可が可であり、不可が不可であるか。その判断が付かぬ。 (荘子物語 諸橋轍次 講談社学術文庫 P113)
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医学上の因果関係を論じていこうとする場合、まさに、この蛇蚹蜩翼(だふちょうよく)です。「蛇蚹蜩翼」は、持ちつ持たれつの関係にあることを表す意味の熟語として用いられているようですが、ここでは、因果関係をどちらかに無理やり白黒つけようとしてもつけらないということの意味として受け取っていただければ幸いです。いろんな病態仮説を繰りだせば、それはそれになりに確率論としては、考えられてしまい、それらに対してそれ以上、因果関係を突き詰められないということがままあると私は言いたいのです。
今、厚労省は、「真実を知りたい」という社会風潮に乗っかり、国を挙げての調査システムを作ろうとしています。
そこからでる結論や判断を、ここでは仮に、真実としておきましょう。
私が予想するには、
「・・・・という可能性もあるが、XXXXも考えられ、断定はできない。」
という玉虫色の真実が続々と出てくるでしょう。
「明らかに医師が悪い」
というきっと期待されているであろう真実は余り出てこないのではないかと思っています。
さて、そんなとき、(#)を主張される方々に、ご納得いただけるのでしょうか?
私は、はなはだ疑問です。ぶっちゃけ、本音は、「死」という結果を、医療者のせいにしたいということではないでしょうか? なぜ、そうしたくなるのか? それは、その人個人の問題ではないと私は思います。むしろ、現代社会の当然の産物なのではないかと思っております。
人の「知」は自然を支配しようしてきたし、まだ今もそれをしようとし続けています。そんな現代社会のあり方が、結果として、多くの人々を他責的にさせてしまっているのではないでしょうか? 参考エントリー:転倒と訴訟. http://blog.so-net.ne.jp/case-report-by-ERP/20070929
とにかく
医療から生じる結果には、真実という言葉では、語りきれないことが十分起こり得るものだ
このことを、多くの方々にわかってほしいと私は思っています。
この前提を抜きにしたまま、信頼・不信の二元論だけで、論じようとしても、限界があると思います。
(#)を主張する方々の多くは、その背後に「不信」「希望」が隠れていると思います。だからこそ、すぐに「隠蔽」などという相手が悪意を持っているに違いないという表現で、医療者側を傷つけたり、時に身構えさせたりしてるのではないでしょうか?つまり自らが対立煽る言葉を自らで使ってしまうのではないでしょうか? そういうことに、お気づきなんでしょうか? 私がそういうと、彼らは、医療者の態度が、原因なのだときっということでしょう。
私にはよくわかりません。荘子の斉物論的視点からみれば、どっちもどっちなんでしょうかね。
まあ、いずれにしても、政治家の方々に置かれましては、医師の一人一人が、今の現状に失望し、確実に心を折られて、自分の持ち場を去っているということが進行中である現況において、社会的視点から、有益か有害かのバランスを十分に、お考えのうえ、政策を練ってほしいものです。
私は、社会がどちらに転んでも、自分が自分らしく、生きていける道を、粛々と探すのみです。
さて、次の記事で使われている真実という意味は何なのでしょうね?
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[記者日記]いやされぬ傷 /埼玉
2001.03.23 地方版/埼玉 28頁 (全354字)
医療過誤で家族を失ったとされる人たちを取材している。大切な人を失ってから時が止まったままの遺族の話を聞くたびに、胸が締め付けられる。2年前、4歳の息子を失った母親はこう言った。「あの日から私には春は訪れません。今年、ランドセルの業者がダイレクトメールを送ってきますが、この春ほどつらい時期はない」。また「医師は、直接死と向き合う仕事をしている。彼らにとって毎日起こることでも、遺族は生涯で数回しかない」と語り、いやされることのない気持ちを必死で抑えて生活する姿が痛々しい。裁判では、「医療」という聖域が遺族側に大きな壁となって立ちはだかる。また、医療過誤訴訟のほとんどは病院側が勝訴しているのが現実だ。死とミスの因果関係を立証するのは難しい。真実を知りたいと願う強い信念が、遺族を支えている。 毎日新聞社
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このような記事が書かれ、そして社会に出てしまうことが、私としては、悲しい限りです。このご遺族に必要なのは、適切なグリーフケアだと私は考えます。真実という言葉に翻弄されてはいけないと思います。これをお書きになった記者には、グリーフケアという視点は見えてなさそうですね。
厚労省の3次思案で、訴訟が減るのでしょうか?
次の記事なんかを目にすると、不信あるところには、システムも労力も時間も多大な無駄骨かもしれません。私はそう思いました。 この記事で表現されている「真実」の意味合いをどうぞ各人でお考え下さい。
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県内高校生の異常行動死 タミフル訴訟、争う姿勢 XX地裁XX支部
口頭弁論 機構側、因果関係で
200X.XX.XX 朝刊 29頁 社会 (全1,184字)
二〇〇X(平成XX)年X月、インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用後に異常行動を起こし、死亡した県内の男子高校生=当時(17)=について、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(東京)がタミフルとは別の薬の副作用と判断し精神的苦痛を受けたとして、父親の会社員男性(50)が同機構を相手取り、慰謝料百万円を求めた訴訟の第一回口頭弁論が四日、XX地裁XX支部(XXX裁判官)で開かれた。被告側は全面的に争う姿勢を示した。被告側の答弁書によると、タミフルと異常行動の因果関係などについて争う姿勢で、次回以降に詳しく主張する。次回弁論は十二月五日。訴状によると、高校生はA型インフルエンザと診断され、〇X年X月X日昼に医師が処方したタミフルを服用。数時間後、雪の中をはだしで飛び出し、国道を走るトラックにはねられて死亡した。男性は事故を受け、〇X年X月、同機構に遺族一時金などの給付を請求。同機構は昨年七月、副作用の原因が当日朝に服用した塩酸アマンタジンだったとして支給を認定した。男性はタミフルの副作用が認められなかったことを不服とし同八月、厚労省に審査を申し立てたが、却下された。男性は遺族一時金の受け取りを拒否し、今年七月、提訴に踏み切った。
◆「真実が知りたい」 父親、副作用の解明期待
「親として真実を知りたい」―。タミフル服用後に死亡した県内の男子高校生をめぐり、タミフルと異常行動死の関係解明を目指す全国初の民事訴訟。高校生の父親で原告の男性(50)はX 日、XX市内で会見し、「真相が明らかになることで同じような被害の再発防止につながるのではないか」と訴えた。十七歳だった男性の長男は二〇〇X年X 月、タミフル服用後に自宅から国道に飛び出し、トラックにはねられた。「自殺するような子ではないのは親が一番分かっている」と男性。「薬害タミフル脳症被害者の会」の一員として、タミフルの副作用による異常行動を指摘し、タミフルの使用禁止を呼び掛けてきた。だが、副作用被害かどうか審査する「医薬品医療機器総合機構」に遺族一時金の支給を申し込んだが、タミフルの副作用は認められなかった。審査申し立ても「既に遺族一時金などの請求が認められており、判定による申し立て人の利益侵害はない」と却下。真相を明らかにする手段は訴訟以外に残っていなかった。タミフルは、インフルエンザの特効薬として国などが備蓄を進めている。男性は「自分も含めてタミフルの被害者は多い。真実を追求しないと、息子のような犠牲者は増える」と警告する。代理人のXXX弁護士も「機構の認定はいい加減で、根拠はない。科学的より政治的な判断が加わった気がする」と指摘し、「これらを状況証拠などからあぶりだしていきたい」と今後を見据えた。同機構は「裁判で係争中の案件であり、コメントは差し控えたい」としている。XX新聞社
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真実=タミフルの副作用=自分が信じる事柄
こういう文脈であることが、皆様にもご理解いただけると思います。
こういう紛争の落としどころに、蛇蚹蜩翼(だふちょうよく)の荘子の思想が役に立つかもしれないなと私は思っています。
まとめます。
「真実・真実」と主張しても今の医療事態の好転は望めないでしょう
2008-04-13 16:22