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(回答先: Re: 美狂乱アンソロジーvol-1 投稿者 Ddog 日時 2008 年 6 月 07 日 17:42:30)
http://www.cnet-ta.ne.jp/k/kepy/diskreviews-new/bikyoran/anthology-vol.1.html
アンソロジー・ヴォリューム1/美狂乱
Anthology vol.1/Bikyoran
1、ルークウオームウオーター
2、都市の情景
3、ゼンマイ仕掛け
4、お伽世界
5、未完成四重唱
6、憧れのエーデルワイス
7、空飛ぶコクゾウ
8、海の情景
2002年作
おそらく一部を除いて、美狂乱ファンの多くは1981年にキングレコードから発売のデビュー・アルバム『美狂乱』によって初めて彼らの存在を知ることになったわけであるが、美狂乱は1974年頃から活動を始め、途中、”まどろみ”というバンド名でも活動していた非常に歴史の長いバンドである。つまり、初期の美狂乱にはたくさんの作品があり、名作がそろっているのだ。
2000年の暮れに偶然に須磨さんからメールをいただいたKEPYはそこで美狂乱の初期の作品を新録音したニュー・アルバム「美狂乱Anthology vol.1」を制作するというニュースを知った。この辺の経緯は特集のページに詳しく書いているのでそちらを参照してください。あれから約一年半、2002年2月18日、ようやく新作が発売された。
現在、美狂乱の初期の貴重なライブ音源がCD化されていて、今回の作品にもいくつかの曲は収録されているけれど、この『美狂乱Anthology vol.1』は完全なニューアルバムと考えてもらっていいと思う。私にとって、この中のすべての曲が新曲であり、新鮮なサウンドを響かせていた。須磨さんからデモ録音の作品を聴かせてもらった時、「とにかく、楽曲がいいですね。」と須磨さんに感想のメールを送った。つまり、この作品にはメロディーがしっかりと存在していたのだ。心にしみてくる美しく、切なく、激しく、はかなく、やさしく、荒々しく、冷たく、暖かいメロディーが流れているのである。須磨さん自身も静と動の対比、その振幅を最大限に表現しようと試みたと言っているように、サウンドのメリハリがとてもクリアに出来ているように感じる。
美狂乱というバンドはその名の通り「美」「狂」「乱」という3つの世界を持っている。この作品には「美」「狂」「乱」の3つの世界が混じり合いながら、しっかりと組み立てられている。私は個人的に美狂乱の「狂」の部分が非常に好きなのだが、この作品では「美」の部分が傑出して素晴らしいと思う。美しいアコースティック・ギターとバイオリンで構成された一曲目の「ルークウオーム・ウオーター」、「憧れのエーデルワイス」、ラストの「海の情景」に代表される彼らの「美」の表現が心を打つ。
また、「都市の情景」「空飛ぶコクゾウ」における「狂」の表現ももちろん素晴らしい。「空飛ぶコクゾウ」は「狂」だけでなく「乱」の部分が曲の中間部で繰り広げられている。「乱」というのは混沌とした闇のような表現でインプロヴィゼーションで生み出されている。整然とした約束事から解放された自由な音たちが空間を彷徨っている。ある意味でこの作品の最大の聴き所と捉えることができる。できるだけ大きな音で聴いた方がその凄さ、サウンドの緊張感を体験できると思う。
そして、この作品では須磨邦雄のベースプレイの凄さ、ボーカルの味わい深さを再発見するだろう。昨今のデジタル機材の発達によるサウンドのニュアンスにはない演奏する人間のエネルギー、演奏する人間の姿が目に見える力作である。20年以上の時代をさかのぼった時期に作曲された作品が現在の感覚で制作された。この作品には美狂乱の過去と未来が同居している。そして、プログレスし続ける彼らの姿が見えてくる。
須磨邦雄:guitars&bass&vocal
須磨わせい:violin
佐藤正治:drums
久野真澄:keybords
ふくかわのぶゆき :horn
いがらしよう:cello
まつながえりこ :chorus
評価:A(名盤と呼べる傑作品)
( 大庭英亨 2002.3.16)
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