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(回答先: 社会保障の危機的状況 投稿者 kanon 日時 2008 年 2 月 28 日 12:27:25)
kanonです。
些細なことですが補足説明をしておきます。
読み直してみると、社会保障と社会福祉の意味が曖昧なままになっていましたので、少し整理してみます。この2つの言葉を何気なく使い分けていたのですが、拙論を読むと明確な違いを示さずに混同して使っています。社会福祉という概念は、狭義と広義の意味に違いがあり、適宜その文脈に即した読み替えをしていたので書くときも注意が必要でした。
日本で社会福祉という言葉が使われだしたのは、戦後に日本国憲法が施行してから後のことです。日本国憲法の草案時、GHQの英語原稿翻訳でsocial welfareに対応する語が存在しなかったために、「社会福祉」という語が充てられたのが始まりです。それまでは、社会福祉のことを日本では「社会事業」や「社会政策」と呼んでいました。
「社会福祉」という言葉を含んだところの日本憲法の条文をみると、憲法第二十五条の2頁に『国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。』とあり、英文では(In all spheres of life, the State shall use its endeavors for the promotion and extension of social welfare and security, and of public health.)となっているので、先に述べたようにsocial welfareが社会福祉と訳されたことが分かります。
この条文では、社会福祉、社会保障、公衆衛生の3つを並列的に規定しており、それぞれが独立したものだと規定しています。しかし、昭和25年に社会保障審議会からだされた「社会保障制度に関する勧告」では、社会保障制度が「社会福祉」や「公衆衛生」の外に「公的扶助」や「社会保険」を包含するものであると位置付けられており、広義ではさらに、恩給や戦争犠牲者援護を加えたものとしています。
勧告を下記に引用しておきます。(この勧告では、貧困対策は国家の責任であることが明確に位置づけられており、格差問題が露呈している今でこそ読み直してみる価値がありますね)
『社会保障制度審議会は、この憲法の理念と、この社会的事実の要請に答えるためには、一日も早く統一ある社会保障制度を確立しなくてはならぬと考える。いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。
このような生活保障の責任は国家にある。国家はこれに対する綜合的企画をたて、これを政府及び公共団体を通じて民主的能率的に実施しなければならない。この制度は、もちろん、すべての国民を対象とし、公平と機会均等とを原則としなくてはならぬ。またこれは健康と文化的な生活水準を維持する程度のものたらしめなければならない。そうして一方国家がこういう責任をとる以上は、他方国民もまたこれに応じ、社会連帯の精神に立って、それぞれその能力に応じてこの制度の維持と運用に必要な社会的義務を果さなければならない。』(昭和25年 社会保障制度に関する勧告より抜粋)
ところで、福祉国家政策という観点から「社会福祉」を見た場合は、逆に社会福祉という言葉の中に社会保障や公衆衛生を取り込んだ形で理解されることが多く、国によっては教育なども社会福祉の概念に含まれることもあります。
したがって、社会保障と社会福祉の解釈は論者によって双方の意味が入れ子のように入れ代る関係で、「社会福祉」を狭義でみた場合は、社会保障の下位概念であると捉えられ、広義でみた場合は、社会保障を含む社会サービス全般を包括する概念と捉えることもでき、それは一概に定義できないものといえるでしょう。
(参考)
A=社会保障
B=公的扶助
C=社会保険
D=社会福祉
E=公衆衛生
例えば、Aの下位概念として、B〜E概念が並列しているのが狭義の社会福祉(D)という意味です。