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kanonです。
社会福祉士会の会員である社会福祉士(以下A社会福祉士)が、成年後見業務を担当していた女性の死後に347万円の遺産を受け取ったのですが、このA社会福祉士の話では遺産は「本人の意思」として扱い、受取りは合法的に処理したと弁明しています。しかし、これについて日本社会福祉会は、倫理綱領に逸脱する行為であると判断し、A社会福祉士を戒告処分にする方針を固めました。社会福祉士会が会の倫理綱領に基づいて処分を下すことにしたわけですが、まず、この倫理綱領のどこに抵触しているのか検討します。
社会福祉士会の見解では「報酬以外の受け取りを禁じた倫理綱領を逸脱する行為だ」と述べています。これに関連するところは、倫理綱領の倫理基準の箇所に記載されている「利用者に対する倫理責任」の1『(利用者との関係)社会福祉士は、利用者との専門的援助関係を最も大切にし、それを自己の利益のために利用しない。』でありましょう。
ここに焦点を当てますと、第三者から見た場合、A社会福祉士が担当する女性利用者から個人名義で遺産を受け取っていますので、自己の利益のために遺産を受け取ったと見なされることは常識の範囲内から考えても差し支えないでしょう。
例えば、自己の利益と見なされない場合を想定して考えますと、遺産の受け取りをA社会福祉士の個人名義に帰するようにせず、その所属する団体などに寄贈するような形が考えられたかと思います。そうすれば、少なくとも「自己の利益にため」という疑いは免れたことでしょう。
また、A社会福祉士の行った行動は、倫理綱領に書かれている内容の「実践現場における倫理責任」や「社会に対する倫理責任」、又は「専門職としての倫理責任」など、すべてに関して検討を要する逸脱した行為だったと見ることができると思っています。
私には、A社会福祉士の反省は表面的なものに留まっているようにしかうつりません。それは、以下の言動から読み取ることが出来るかと思います。
『本人の意思を尊重した。間違ったことをしたとは思わないが、結果的に問題になったことは反省している』
仮にA社会福祉士の立場を擁護したとしますと、倫理綱領の「利用者に対する倫理責任」のところが以下の文面になっていますので、A社会福祉士自身からすれば、利用者の自己決定権を重視した結果だと見なせないことはないからです。
『5(利用者の自己決定の尊重)社会福祉士は、利用者の自己決定を尊重し、利用者がその権利を十分に理解し、活用していけるように援助する。』
『6(利用者の意思決定能力への対応)社会福祉士は、意思決定能力の不十分な利用者に対して、常に最善の方法を用いて利益と権利を擁護する。 』
ちなみに、利用者の遺産を受け取り、問題となったケースが医師と患者での間でも起こっていますので、それを紹介しておきます。重要なのは、医師は代理人を通じ、「法的にも倫理的にも問題はない」と答えていることでございましょう。
任意後見人の医師に遺贈…元患者から数億円相当【読売新聞】
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080129-OYT8T00425.htm?from=goo
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倫理面で異論も
東京都内の私立大学病院の医師が、元患者の女性と任意後見契約を結び、昨年6月に女性が81歳で亡くなった後、遺言により数億円に上る全財産を譲り受けていたことがわかった。
女性の親族は反発している。読売新聞の取材に対し、医師は代理人を通じ、「法的にも倫理的にも問題はない」とした上で、「女性の遺志を尊重し、財産すべてを大学の研究などに寄付する」と回答した。しかし、任意後見制度に詳しい専門家からは、「業務としてかかわる後見人が遺贈を受けるのは職業倫理に反する」との指摘も出ている。
医師の代理人弁護士によると、医師は1987年に女性が入院した際の担当医の一人として知り合い、女性が95年に再入院した際も担当した。女性の姉も病弱で、転院先や生活上の相談に乗る中で親しくなったという。女性と姉は結婚しておらず、千代田区内の自宅に2人で暮らしていた。同区内の宅地約240平方メートルなど、不動産や預貯金「数億円相当」(代理人弁護士)の財産を所有。親類とは疎遠で、2003年4月に医師が将来、女性と姉の後見人になるよう任意後見契約を結び、同時に遺言公正証書を作成した。
遺言は、「頼れる身よりはなく、長年にわたり医師に病気の診療その他多くのことで一方ならぬお世話になった。心からの感謝の気持ちを表し、医師夫妻に財産を遺贈することにした」として、〈1〉姉妹が死亡した時の遺産は、第一にお互いが、第二に医師が、第三に医師の妻が譲り受ける〈2〉遺言執行者に医師を指定する――と定められた。
女性の姉は、遺言作成の3か月後、86歳で死亡。姉の財産を相続した女性はその後、医師の世話で都内の有料老人ホームに転居した。医師や妻が女性を外食に連れ出したり、正月に自宅に招いたりといった付き合いをしていたが、昨年6月に亡くなった。
日本医師会が04年に策定した医師の職業倫理指針は、医療行為に対する謝礼を患者から受け取ることを禁じている。女性の親族の一人は、「患者の医師に対する信頼を悪用した行為で、医師の倫理に反する」と反発している。
医師の代理人弁護士は、「医師は長年、女性と家族ぐるみの付き合いをしており、医療行為に基づく謝礼ではない。遺贈は女性本人の遺志に基づくもので、法的にも倫理的にも問題ない」としている。医師の所属する大学は、「医師と女性の個人的な問題で、一切関知しない」とコメントしている。
後見人へ遺贈法的制限なし/司法書士団体は禁止
第三者の後見人を遺贈相手に選ぶケースについて、法務省は「本人の意思なら法的に制限することはできない」(民事局)としているが、司法書士や社会福祉士らの組織は「立場の悪用を疑われかねない」として、正規の報酬以外の金品受け取りを禁じている。「成年後見センター・リーガルサポート」の松井秀樹専務理事は「後見人として相談に乗っていると、高齢者にとって頼れる唯一の存在になりやすい。今回のケースも、医師への信頼が根底にあるのだろう。たとえ遺贈が本人の遺志でも、後見人を業務として引き受けたことも併せて考えると、倫理上問題だ。任意後見制度の信頼を揺るがす」と話している。
任意後見制度 2000年に導入された成年後見制度の一種。認知症などで将来、判断力が低下する場合に備え、事前に後見人を決めて契約し、将来の財産管理や契約行為などを代行してもらう。すでに判断力が不十分な人に家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」と違い、元気なうちに信頼できる人を自分で選べるのが特徴。後見人の多くは親族で、弁護士や司法書士ら専門家や知人と契約する人も約2割いる。
(2008年1月29日 読売新聞)
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