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(回答先: 身体的自立 投稿者 kanon 日時 2008 年 2 月 09 日 13:50:23)
kanonです。
下記の投稿からの自己レスです。
身体的自立
http://www.asyura2.com/08/idletalk30/msg/105.html
投稿者 kanon 日時 2008 年 2 月 09 日 13:50:23: FUgy0.1v81/ao
>3の精神的自立を考える前に、2の身体的自立について述べておきますと、これは周知のように身の回りのことが自分で行える能力に関わってくるものだといえるでしょう。今日では、福祉や介護、医療関係で、ADL(日常生活動作)という概念で日頃から良く言い表されており、ADLに誰かの援助が必要でないならば、それは身体的に自立している状態として考えられています。また、この時期にはADL以外にもQOL(生活の質)やIADL(調理や洗濯が自分でできるなどの手段的日常生活動作)の向上を考慮するようになった経緯があることも指摘しておきます。次に身体的自立の考え方を基点にして、研究を深化させる試みとして、脳神経の回路と身体の結びつきを重視したリハビリテーション的な取り組み(哲学的には現象学的還元と呼ばれる)があります。
「現代思想」2006年11月の特集がリハビリテーションでした。上記の拙論で取り上げた内容は、機能回復訓練における脳神経回路からのアプローチを示唆したものであり、主にこの特集の中で得たところのものです。特集の中で河本英夫と宮本省三の対談「人間再生のために」があり、皆様にはそれを紹介することで最新のリハビリテーションの治療法を知っていただければと思います。
リハビリテーションとは、語源的にはRe(再び)habilis(適する)ation(にすること)で、人間に適した生活状態を取り戻すことを意味しています。大辞林によると『身体に障害を受けた者などが、再び社会生活に復帰するための、総合的な治療的訓練。身体的な機能回復訓練のみにとどまらず、精神的、職業的な復帰訓練も含まれる。本来は社会的権利・資格・名誉の回復を意味し、社会復帰・更生・療育の語が当てられる。リハビリ』と解説しています。今のリハビリ医学の現場に目を向けると、リハビリ医療の診療日数の制限で必要な治療が受けられなくなるという「リハビリ打ち切り問題」が取りだたされているのはご承知のことかと存じます。
対談では、リハビリテーションの最先端の治療法である「認知運動療法」の取り組みを中心に語られています。認知運動療法の特徴として、対談の中で宮本は以下のように語っています。
『従来のリハビリテーション治療、特にその中核である運動療法には非常に問題があるということに気づいたわけです。それはやはり人間の脳の認知過程(知覚、注意、記憶、判断、言語)に働きかけていないということです。従来のアプローチはあまりにも人間機械論的で、関節とか筋肉といったものへの治療的な介入が中心であって、脳そのものの回復には全く届いていないというところに着目して、そこを徹底的に勉強していかなければいけない。そのためには近年非常に進歩している脳科学の知見を使っていく・・・』
つまり、従来の取り組み方との方法論での違いがあるのですが、分かりやすいように事例で述べますと、例えば脳梗塞で右側の片麻痺になった患者に対する治療法を比べた場合、従来の治療法ですと動かなくなった右側の可動域訓練を中心に動かなくなった手足などをターゲットにして治療を施していくのですが、一方で、認知運動療法では、手足の運動を掌っている脳神経に目を向けて治療を施していくことになります。これは、脳の可塑性を意識した治療法といえるものです。この治療法では、治療の場面で患者に「気づき」や「注意」といった感覚的なものに意識を向けてもらいながら、動きに対する主体的なイメージを描く作業も同時に行っていきます。簡略に申上げますと、さらに脳のシステム化の論理などともタイアップさせながら、複雑な脳神経のシステム解明に挑み、学習理論を進化・発展させていく段階ですので、経験や理論の蓄積次第では、これからの展望が期待できる分野だと思います。
ところで、宮本は現象学的なアプローチから、認知運動療法との接点をもったのですが、元々は自身の家族が脳の手術を行い、その治療過程を経た中で体験してきたことに対しての構えがあったことで、脳のシステム再生での神経回路の仕組みに興味を抱き、現在はオートポイエーシスの研究に携わっている人なのです。