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1月1日から欧州連合(EU)理事会の議長国となったドイツは「加盟27カ国の中で、かぎ十字を公の場で使用することを禁止する」ことを提案している。禁止となれば、ナチのシンボルだったかぎ十字を使用することは犯罪になる。ドイツとフランスでは既に禁止となっているが、2005年にEU全体で禁止しようとした際には、英国、デンマーク、ハンガリー、イタリアが、ブリュッセルで開かれたEU法務大臣の会合で本格的な反対を表明し、実現しなかった。
右回りのかぎ十字章は、1920年から第2次世界大戦が終了する1945年まで、アドルフ・ヒトラーやナチの隊員たちが着用した腕章に使われた。しかし、宗教上のシンボルや古代アーリア人の闘いの印として、ナチズムの台頭よりもはるか以前から欧州で使われていたのだ。近代史ではかぎ十字は非常に悲劇的な歴史を持つ。特に人種差別主義や残忍さ、大量殺害の印としてナチズムで使われた欧州において。「最も嫌われたシンボル」という悪名を得てしまったので、初期の欧州社会で存在した「かぎ十字の誇り高い宗教的、および文化的重要性」は失われてしまった。
■かぎ十字の歴史
しかし、かぎ十字は欧州だけに限られたものではなかった。一定の文化や国民の間では、いまだに重要な価値を持っている。新石器時代にインド・アーリア人の間で、かぎ十字の形をした装飾品が使用されていたことを示す遺跡があるが、こうした品々に現在どのくらい重要性があるのかは不明だ。古代史を見ると、こうした装飾品が、例えばインド・アーリア人、ヒッタイト人、ケルト人、ギリシャ人の間で宗教上のシンボルとして流通していた。かぎ十字は特にヒンズー教や仏教においては神聖なシンボルだ。シンボルや紋章は、文化や時代によって別の意味を持つのだ。
かぎ十字はヒンズー教や仏教、ジャイナ教などでは神聖なものとして見なされた。このような社会では、かぎ十字の使用は多くの西欧人が連想する用途とは大きく異なる。「平和と繁栄の象徴」としてのかぎ十字は、こうした社会の、誇り高い文化的な所有物であり、今日、ほかの社会で直面する悪評や嫌悪感とは異なるのだ。
実際のところ、かぎ十字(Swastika=スワスチカ)の語源は、ヒンズー教の経典の言語サンスクリット語にある。サンスクリット語で「Svastika=スバスチカ」とは、縁起の良い物体を意味する。最初にこの言葉が使われたのはヒンズー教の古典叙情詩「ラーマーヤナ」だった。宗教のテキストや経典で使われたほかには、かぎ十字はヒンズー教の儀式や作法で広く使われた。
かぎ十字は、ヒンズー教ビシュヌ神の108つあるシンボルの1つで、命の源である太陽の光を表している。ヒンズー教徒の人生は、この印が象徴となって幸運、安らぎ、繁栄を守りながら、導かれてゆくのだ。
かぎ十字を使わないで宗教上の儀式を行うことは、「ほとんど不可能」である。かぎ十字は、キリスト教徒にとっての十字架のように、世界中の10億人のヒンズー教徒に宗教上のアイデンティティーを与える。寺院、モチーフ、祭壇、絵、聖像など、神聖だと考えられる対象すべてにかぎ十字が見つけることができる。西欧ではあまり知られていない習慣だ。
■欧州におけるかぎ十字
比較文学者エドワード・サイードは不朽の名作『オリエンタリズム』で、「西欧文化では、アジアや中東に対する、ロマンチックな解釈の伝統が長く続き、こうした解釈が欧州や米国の植民地的で帝国主義的野望を、暗黙に合理化するために使われた」と書いた。
かぎ十字を禁止することで「植民地主義的または帝国主義的利益がどのように得られるか」に関して混乱があるようだ。多くの人類学者は「西欧人たちは、『欧州の文化が世界の文化であり、欧州の歴史が世界の歴史である』ことを時間をかけて浸透させた。『かぎ十字の歴史はナチズムの歴史だ』とする偏狭さと、欧州以外の地域からの文化をないがしろにしているのは、西欧人たちがいまだに隠れた文化的差別を実践しているかを立証するものだ」と指摘している。
文化人類学の発展は、欧州の文化的偏狭さを厳しく批判してきたが、かぎ十字の使用を禁止する動きを思いとどまらせるほどには、まだまだほど遠いようだ。かぎ十字がほかの文化では「平和と富の輝く源」であることをどれぐらいの西欧人が知っているだろうか? もし知っていたとしても、そのような崇高な価値がはるか昔から存在していたことを受け入れるだろうか? 恐怖、人種偏見、差別の支配を広めるため、ヒトラーはかぎ十字を誤用・乱用した。だからと言って、かぎ十字の平和的使用が禁止されるべきではない。
かぎ十字の使用禁止は、欧州に住む100万人以上のヒンズー教徒が、いかなる宗教儀式にもこのシンボルを使うことができなくなることを意味する。どのような使用でも違法になるのだ。欧州にある1000以上のヒンズー教の寺院にあるかぎ十字の印も、恐らく消さなければならなくなるだろう。英国ヒンズー・フォーラムのラメシュ・カリダイ氏は「ナチを連想させるかぎ十字の使用は非難されるべきだが、ヒンズー教徒が宗教上このシンボルを使うことに対し、人々は敬意の念を払うべきだ。ナチがこのシンボルを乗っ取り、その平和的な意味合いを、凶悪な思想にゆがめたことが非難されるべきだ」と言う。欧州に住む多くのヒンズー教徒や仏教徒のためにも、かぎ十字は欧州人の間で失われたアイデンティティーの回復をする価値がある。
「かぎ十字」はナチだけのシンボルではない - OhmyNews:オーマイニュース
http://news.ohmynews.co.jp/news/20070410/5070