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http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090119ddm012040041000c.html
NHK経営委:小丸新体制スタート 放送の自主自律、財界コンビ継続
NHK経営委員会は、小丸成洋・福山通運社長が委員長を務める新体制をスタートさせた。福地茂雄会長(元アサヒビール相談役)との財界コンビ体制は前任の古森重隆・富士フイルムホールディングス社長に続き今月25日で2年目を迎えることになる。小丸新委員長の選出の背景と今後の課題を探った。【佐々本浩材、臺宏士】
■選考基準を踏襲
古森前委員長の後任には当初、同じ首都圏在住で財界畑の前田晃伸・みずほフィナンシャルグループ社長が目されていた。昨年11月に前田社長を経営委員に新任する人事案が国会に提示されたが、民主党などの反対で参院で不同意となった。NHKのメーンバンクのトップが委員になることは「利益相反の問題がある」というのが最大の理由だった。
予想外の結果に、委員長人事は迷走した。古森体制を支え、やはり財界出身だった岩崎芳史委員長代行(三井不動産販売会長)の名前が浮上したが、本人は健康上の理由から強く固辞。最後に候補として残ったのが小丸氏だった。小丸氏は、昨年10月に次期経営計画が議決された際、古森前委員長らが提案した修正動議に12人中、他の8委員とともに賛成した。
なぜ候補に挙がるのは財界出身者ばかりなのか?
07年6月、経営委員会が古森氏を委員長に選任した時、委員長代行を務めていた多賀谷一照・千葉大教授は会見で、(1)経営経験があること(2)首都圏在住であること−−の二つを選考基準として挙げた。当時の委員会でも「今、NHKが抱える問題に対処するには企業の経営者が好ましい」という意見が出たという。
その選考基準は今回も生きていた。昨年12月22日の小丸氏の委員長就任会見で、岩崎委員長代行が選考過程を説明し、▽本人の意思▽NHKと特別な利害関係にない▽事務局や執行部と連絡が取りやすい▽経営委員会の業務にも通暁されている−−などの基準を提示。中でも強調したのが「実際に経営現場でかじ取りをしている方」だった。
広島県福山市在住で、東京には週3日程度しかいない小丸氏の生活スタイルに合わせ、「首都圏在住」が「連絡が取りやすい」に変わっただけ。基本的に前回の基準を踏襲したといえる。
岩崎委員長代行によると、各委員から推薦があった複数の委員長候補から選考基準に沿って話し合い、最終的に全会一致で小丸氏を選任したという。
古森前委員長と同時期に就任し、安倍晋三元首相のスキャンダルを取り上げた月刊誌を相手にした損害賠償訴訟で、安倍氏側の代理人を務めた弁護士出身の小林英明委員が意欲を示したが、「経営経験がない」という理由で見送られた。
ただ、詳細なやりとりは明らかにされていない。
■細部で微妙な差異
小丸氏の経営委員就任は04年6月。委員(任期3年)としては現在2期目になる。福地茂雄NHK会長は「誠実な方だが、言うべきことははっきり言う人。特に経営計画の議論では極めて大事なところと考えていた組織風土改革についてきっちりと質問されていた」と述べ、「信頼関係に立って、互いに主張すべき点は主張して議論を進めていきたい」と希望した。
緊張した面持ちで臨んだ就任会見では、古森前委員長について「(他の委員長に比べ)執行部と緊張感をすごく持たれ、委員長として成果を上げられた」と評価。前委員長を参考にして「(来年度からスタートする)経営計画を現場に下ろし、全国の皆様にあまねく放送を提供できるよう努力したい」と決意を語った。
一方、細部では微妙に違いも見せた。古森前委員長が外国向けの国際放送で“国益重視”を求め波紋を呼んだことを意識したのか、一番大事な問題として「放送の自主自律、不偏不党を堅持する」ことを何度も挙げた。また「経営計画を円滑に進めるため、日本放送労働組合(日放労)とも話をしたい」と述べ、労使協調を訴えた。
■職員の間に安堵感
NHK職員の間には、小丸体制に代わり安堵(あんど)感が流れる。古森前委員長は力業で経営計画に「受信料の10%還元」を盛り込ませたが「温厚な小丸氏の体制ではあのような事態はないだろう」と予想する。
小丸氏の座右の銘は「耐えて、和して、前進」。会見では「これからの経営委員会の仕事ぶりを見て評価していただきたい。これから結果が出るわけですから」と自信をのぞかせていたが、景気の悪化で今後のかじ取りは容易ではない。
5年後の受信料支払率78%などを定めた経営計画の目標を達成させ、12年度からの受信料10%値下げが実現できるか、手腕を問われる。
◇旧日本軍の従軍慰安婦番組、ETV特集「心に残る」 「特定の利益、視聴率に左右されない」
07年3月の経営委員会。橋本元一会長(当時)は、同年1月に発覚した関西テレビによる番組捏造(ねつぞう)問題をきっかけに、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)内に放送倫理検証委員会(川端和治委員長)が設けられることを報告した。小丸委員(当時)は「第三者機関によるチェックを行うことは有効だと思う。NHKとしても今回のような問題を起こさないよう、一層の放送倫理の向上に努めていただきたいと思う」と述べた。
検証委員会は今月9日の会合で「自律性に疑問が持たれる面があるのではないかという認識で一致した」として、旧日本軍の従軍慰安婦を取り上げた教育テレビの特集番組「ETV2001・戦争をどう裁くか『問われる戦時性暴力』」(01年1月放送)の審議入りを決めた。放送前日に安倍晋三元首相(当時は官房副長官)がNHK幹部と面会し、番組内容に注文を付けるなど政治圧力の有無が社会問題化した。
小丸委員長は、NHKのホームページで「心に残った番組」として「ETV特集」を挙げ、理由を「特定の利益や視聴率に左右されない」と説明している。今回、番組の放送倫理が問われることになり、小丸委員会の対応が注目される。
◇NHKの特殊性、自覚が必要−−大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理法制)
NHK問題に詳しい大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理法制)に話を聞いた。
−−小丸成洋経営委員長をどう評価しますか。
◆過去の議事録では、トップの強いリーダーシップの重要性を訴え、内部統制の強化を主張している。経営の効率化など一般企業の経営者が考えそうな発言が多い。NHKは権力から独立性のある企業であるべきだが、読む限りでは、表現の自由を担うメディア企業と、一般企業の違いを認識していないという印象を受けた。多数党政権が選んだ委員といっても、メディアにとって社会的少数者の救済は重要な役割だ。NHKは一般企業とは異なる特殊な組織、企業文化にあるとの自覚が必要だろう。
−−政治色が濃かった古森重隆前委員長時代は、経営委員会の在り方も問われました。
◆古森氏は、国際放送の国益発言をはじめ現場に口を出し過ぎた。経営委員会にどこまで役割を担わせるかの考え方で見方が違ってくる。経営委員会がジャーナリズムの問題にかかわることを前提とすれば、小丸氏はジャーナリズムについて、もっと勉強すべきだ。ただ、それは口を出すことを容認することになる。
もう一つは、経営委員会はジャーナリズムの問題に口を出すべきではないという立場だ。小丸氏は経営委員が現場を知る重要性を訴え、できない委員は辞任すべきだと言っているが、それが現場への圧力につながりかねないことも認識すべきだ。
−−放送倫理検証委員会は特集番組の審議入りを決めました。
◆経営側が政治の圧力や経営の論理で現場の表現の自由を押しつぶした時こそ第三者機関の存在意義があり、審議入りを評価したい。首相に任命されたといっても経営委員会は、権力介入の防波堤としての機能が期待されている。検証委員会の意見にどう対応するかで小丸委員会の評価が決まると言っていいと思う。
毎日新聞 2009年1月19日 東京朝刊
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