★阿修羅♪ > マスコミ・電通批評8 > 593.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
【再来年の夏にテレビ業界は大破綻】 テレビの終わりは新しいメディアの始まり (池田信夫コラム)
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
http://ascii.jp/elem/000/000/203/203544/
池田信夫の「サイバーリバタリアン」
第49回
テレビの終わりは新しいメディアの始まり
2009年01月07日 11時00分更新
文● 池田信夫/経済学者
---------------------------------
●テレビに未来はない
長く安定した利益を誇っていたテレビ業界に、異変が起きている。
2008年3月期決算で、日本民間放送連盟に加盟する127社のうち、30社が赤字になり、ついにキー局(日本テレビ・テレビ東京)まで中間決算で赤字に転落した。他社も50%近い減益で、広告の激減が続いているので、今年3月期にはテレビ朝日も赤字転落は確実とみられている。黒字を出しているTBSも、不動産事業の営業利益が本業の5倍にのぼり、「テレビも作る不動産屋」と言われるありさまだ(2009年3月期上半期決算より)。
また、2011年の地上デジタル完全移行を控えており、これからデジタル設備投資の負担がさらに重くなる。地デジ対応受信機は、11月末で4369万台(デジタル放送推進協会調べ)と、全国に1億3000万台あると推定されるテレビの3分の1だ。2011年7月までに地デジ対応テレビが4000万台売れるとしても、4000万台以上残る。このテレビの大部分は捨てられ、テレビの台数(アナログ・デジタル計)の数は、2011年7月をピークにして減少に転じるだろう。
つまりテレビには、もう未来はないのだ。アナログテレビは高収益で安定していたが、デジタルテレビはインターネットや携帯電話と競合する。ウェブ広告の単価は、マスメディアの1割程度と言われる。今まで地上波テレビはブラウン管の独占によって高い広告単価を維持してきたが、この市場にも競争が始まったのだ。テレビが衛星やケーブルやウェブの登場によって多チャンネル化し、DVDレコーダーによってCMも飛ばされるようになると、アナログ時代の無料放送モデルは全面的に崩壊する。
こうした状況は、10年以上前から予想されていた。テレビの次のビジネスとして、いろいろな「マルチメディア」が実験されたが、すべて失敗に終わった。おかげでテレビ局もすっかり保守的になり、電波利権を守ることを最大の企業戦略とするようになった。それは、ある意味では現実的な戦略だった。電波の独占という明確な優位があるのは、地上波だけだったからだ。
しかし最近の状況は、この戦略の見直しを迫っている。今までのビジネスを守るだけでは、生き延びられないことは明白だからである。
------------------------------------------------------------
http://ascii.jp/elem/000/000/203/203544/index-2.html
●ウェブはテレビ局のビジネスチャンス
キー局の中でも、地上波からの脱却をはかっているのがフジテレビだ。特に「ワンセグ」に力を入れ、携帯端末への進出をはかっている。NHKも「NHKオンデマンド」を開始し、国際放送でもマイクロソフトと合弁会社をつくってIP放送を開始した。こうしたビジネスは採算が取れていないが、テレビ局がウェブに進出したことは朗報だ。これまで著作権法を理由にしてウェブ上のコンテンツ流通を妨害してきたテレビ局も、著作権の過剰保護を改めざるをえないだろう。IP放送料などの標準作りも始まっている。
同じように、これまで電波を浪費して独占を守ってきたテレビ局も、多くのチャンネルで多角化しないと生き残れないだろう。特に電波の送出設備は彼らが持っているので、ホワイトスペースの開放で200MHzが免許不要で自由に利用できるようになれば、最大の受益者は映像コンテンツを大量に持っているテレビ局だろう。地上波は無料の同時放送しかできないが、ウェブを使ってIP放送すれば、有料配信もオンデマンド配信も可能だ。
ただ最後に残る問題は、コンテンツをほとんど持っていない地方民放だ。彼らはキー局の番組を垂れ流して電波料と称する補助金をもらってきたが、そんな安易なビジネスモデルはもう通用しない。おそらく今年3月期には、地方民放の半分は赤字になるだろう。設備投資が数千億円でリターン(広告収入増)はゼロなのだから、当たり前だ。キー局が地方局を買収・合併することは避けられない。これを規制してきたマスメディア集中排除原則も緩和された。
しかし業界の再編は進まない。各地方局には、その免許をおろした政治家の利権があり、ローカル放送を自民党が私物化している。統合すると、それがなくなってしまうからだ。しかしこの構造も、地方民放の経営が行き詰まれば、維持できなくなる。これまでは彼らは、経営が苦しくなるとキー局に補助金を求めてきたが、キー局もない袖は振れない。総務省も、苦しい財政状況で補助金の財源がない。
だから2011年に向けて、地方局の再編が進むだろう。それを促進するためにも、形骸化したマスメディア集中排除原則は撤廃し、業界の再編を進めるべきだ。その代わり電波をすべてのユーザーに開放し、メディア業界を競争的な市場にする必要がある。その新しい産業で勝者になるのは、コンテンツを持っているテレビ局かもしれない。
ピンチはチャンスである。
--------------------
筆者紹介──池田信夫
1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に 「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「情報技術と組織のアーキテクチャ 」(NTT出版)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
▲このページのTOPへ HOME > マスコミ・電通批評8掲示板
フォローアップ: