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2008年11月 8日 (土)
本ブログアクセス禁止措置についての考察 (その2)
本ブログがココログよりアクセス禁止措置を受けたことについての専門的な立場からの考察論文を鬼頭栄美子弁護士よりご寄稿いただきました。第2回掲載分を掲示させていただきます。第1回掲載分と合わせてご高覧賜りますようご案内させていただきます。
<植草氏ブログ「知られざる真実」、アクセス禁止措置についての考察(その2)>
弁護士 鬼頭栄美子
ブログ主催者が、新聞記事等を利用する場合、一つ一つ利用許諾を得ればよいとの主張・見解がある。
しかし、営利目的の大規模利用を考えているわけでない一般ユーザーにとって、その選択は現実的ではない。インターネット上の情報流通は、即時性が重要である。また、新聞社にとっても、無数のユーザーからの利用許諾依頼に一々対応するのでは、そのコスト負担は過大なものとなるはずだ。現状では、利用許諾云々は、利用拒絶効果を持っていると言わざるを得ない。
毎日新聞社のココログ経由のクレームは、理解に苦しむ。
嫌味を言いたくはないが、かつて、「外務省秘密電文漏洩事件」の際(1971年の沖縄返還協定を巡る日米密約の存在に関して)、「国民の知る権利」を高らかに主張したのは、他でもない、かの毎日新聞社である。
その後の残念な成り行きも承知してはいるが、毎日新聞こそが、先頭に立ち、国民の「知る権利」に奉仕すべく、政府の国民に対する秘密を断固糾弾し続ける大々的キャンペーンを張ったのは、事実である。
あの事件が、取材の自由、ひいては国民の「知る権利」と国家秘密との関係を正面から争った、初の最高裁事件となった事をよもや忘れてはいまい(「外務省秘密電文漏洩事件」 最高裁昭和53年5月31日決定)。
ここで、事実指摘を二つ。
先日(2008年9月8日)、「植草氏」対「サンデー毎日(毎日新聞社)」の訴訟(植草氏の名誉回復訴訟)において、毎日新聞社が敗訴した。これは、事実。
現在、毎日新聞社は、植草氏に対して控訴している。これも、事実。
しかし、まさか、国民の「知る権利」に奉仕するべく、日本初の一大キャンペーンを行った、栄えある毎日新聞社が、そして、今でも時々、目を引く良質な記事を掲載し続けている毎日新聞社が、そんな事を根に持って植草氏に言いがかりをつけたとは思いたくないのだが、真実はどうなのだろう。何か秘めた事情でもあるのだろうか。
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なお、本稿を書いている現時点においても、植草氏が引用した毎日新聞記事を、そっくりそのまま引用したブログが存在する。植草氏をあだ名で揶揄したブログである。
そこには、全く同様の毎日新聞記事がそのまま全文引用されているが、なぜか、記事削除もされず、アクセス禁止にもなっていない。
ブログ内容ゆえに、削除申し入れをしたりしなかったりするのだろうか。
電柱に、「迷い犬探しています」とか、「家庭教師いたします」とか、相当量ビラ貼りしても、逮捕されたという話は聞かない。
しかし、「政治的内容のビラ」だと、なぜかちょくちょく、軽犯罪法違反で逮捕されてしまったりする。逮捕される事例の圧倒的大半は、「政治的内容のビラ」である。
どちらも、表現の自由(憲法21条1項)の範疇にあるが、その価値からすれば、むしろ、立憲民主政との直接の関わりゆえ、「政治的内容のビラ」についてこそ、規制はより慎重にすべきである。しかるに、実務では逆となっている。
この点、関係者がどのような言い訳をするにせよ、表現内容ゆえに差別的取り扱いをしているのではないか、との疑念を払拭する事は難しい。
同様に、毎日新聞社の対応も、そのブログ記載内容ゆえの差別的取り扱いか、との疑念を生じてしまう。
麻生氏批判内容ブログであったからなのか。それとも、植草氏が相手であったからなのか。あるいは、その両方だったからなのか。
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近年、新聞社は、とみに著作権管理を強化している。
確かに、著作権保護は重要であり、私も賛成だ。
しかし、新聞社の「社会の公共財としての自覚」は、どこへ行ったのか。
植草氏ブログのような、「無料で提供」されている「政治・経済ブログ」が、「公人たる首相の政治姿勢等を批判する論評」をし、その「補完」として、首相言動を、「ぶら下がり取材による新聞報道から引用・掲載」したからといって、新聞社側にとって、いかなる不都合があるというのか。
出所、区分明示はきちんと記載してあり、植草氏ブログを読んだ毎日新聞を購読していないネット・ユーザー達は、「毎日新聞ってやるなあ。いい記事出しているなあ。」と思い、新たな購読者となる可能性だって大きい。毎日新聞社サイトへのアクセス数も、却って伸びるのではないか。
新聞社側から見れば、いわば、無料宣伝してもらったと考える事だってできよう。
「記者クラブ」についてだけ書いたが、日本の新聞社は、「記者クラブ」に加えて、「再販制度」「新聞特殊指定」によって、その既得権益が守られている。
先日(10月27日)も、河村官房長官が、「新聞の再販制度を維持すべき」と表明した。
普段は、増加するネット利用者に対して、著作権を盾に背を向ける態度を取りながら、いざ、「記者クラブ」「再販制度」「特殊指定」の見直しが問題になったときに、突如、新聞報道の公共的・公益的性格、国民の「知る権利」などの美辞麗句を持ち出し、その美名の陰に隠れようとするのではあるまいか。
インターネットが発達し情報流通が格段に進歩した今日、そのような欺瞞的態度をとるとすれば、新聞社の未来は暗い。
ネット人口増加は、避けようがない。
新聞社としては、ネット利用者との共生を模索していくしか生き残る道はない。徒らに、これを敵視し、著作権で締付ける行為を続けていては、新聞購読者は益々減少していく。
新聞社は、真に「国民の知る権利に奉仕する(博多駅最高裁判決)」べく、「無料ブログ、殊に政治・経済ブログが、新聞報道記事を引用・掲載利用する場合、出所明記、区分明瞭、改変なし、を守る限り、一切自由。」と発言するくらいの度量が必要だ。
そんな新聞社だったら、「株が上がる」だろうに、とつくづく思う。
植草氏ブログ「知られざる真実」は非常に人気が高く、影響は無視できない。
しかし、これは、植草氏ブログだけの問題ではない。
新聞社に、「特権」を与えられた「公共財としての自覚」があるなら、数多く存在する政治・経済ブログの読者全員を味方につけ、購読者増加方針を採用してはどうか。
もし、どこもそんな方針は採らないというなら、
「記者クラブ慣行その他の特権享受は即刻止めてもらい、引用・掲載自由方針を採るネット・ブロガー代表の取材チームを、国民代表として、官邸等の取材に送り込むべきだ。」という意見が、ネット利用者らから噴出する日も近いと考える。
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なお、植草氏ブログ(2008年11月2日)によると、
Nifty,ココログから、「・・・・・期限までに対応を行っていただけない場合には、弊社会員規約に基づき、やむを得ず、弊社側で該当記事を削除させていただきますので、ご承知おきください。」という通知メール(2008年10月28日付)あり、このメール確認をするのが遅れていたところ、なぜか、「その後、期限日時経過とともに、突然、ブログへのアクセス禁止措置が取られ、事後的にブログを閲覧できない状況にしたとの通知がありました。」との事だ。
不可解である。
指定した期日までに何ら状況が変わらなければ、事前にメールで通知した通り、「利用規約を基に、当該記事を削除」するのが、自然な流れであろう。
それをあえて、当初は予定していなかった「アクセス全面禁止処置」を取ったのは、いかなる理由によるものか。何らかの事情変化があったのか。
Nifty、ココログの誠実な釈明を聞いてみたい。
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*ご注意*
1 本論稿は、ブログ主催者様や皆様に、新聞記事等の無断引用・転載をお薦めするものではありません。
2 本論稿は、新聞記事等の引用・転載が、著作権法違反にあたらないと保証するものではありません。
3 著作権法の解釈については、ご自分の責任と判断で行ってください。
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(以上)
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