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http://www.news.janjan.jp/living/0807/0807293234/1.php
植草一秀さんが名誉毀損の「悪質フライデー記事」で勝訴
ひらのゆきこ2008/07/31
経済学者の植草一秀さんが、週刊誌「フライデー」に事実無根の記事を掲載され、名誉を毀損されたとして争っていた訴訟で、東京地裁は28日、植草さん側の勝訴とし、発行元の講談社に110万円の賠償金支払いを命じた。判決は、「フライデー」側が何ら裏づけ取材をせずに記事を掲載した、とした。植草さんは、同様の訴訟を5件起こしており、小学館と徳間書店に実質勝訴している。
週刊誌等に事実無根の記事を書かれ、名誉を棄損されたとして出版社等を訴えている経済学者、植草一秀さんの名誉回復訴訟の判決言い渡しが28日、東京地裁で行われました。
◇これまでの判決はいずれも植草さんが勝訴
植草さんは同様の訴訟を5社(小学館、徳間書店、講談社、毎日新聞、朝日放送)に対して行っており、このうち小学館と徳間書店については、すでに勝訴の判決等が確定しています。
小学館は和解という形になっていますが、植草さんの主張が全面的に認められた実質勝訴(小学館が植草さんに対し、謝罪広告掲載と慰謝料100万円を支払うことで和解成立)。また、徳間書店については、植草さんが勝訴(徳間書店が植草さんに対し、190万円の賠償金を支払う)しました。
今回は講談社に対する訴訟で、「フライデー」2004年4月30日号に掲載された、「植草一秀ハレンチ犯罪に走った『もう一つの素顔』」との見出しに「卑劣!女子高生スカート“のぞき”で逮捕されたエリート経済評論家の“性癖”」との副題を付した記事の中で、「過去にも7〜8回近く同様の行為で厳重注意を受けている」との事実無根の記事で名誉を傷つけられた、として訴えられたものです。
◇今回も植草さんが勝訴「被告は原告に対して110万円を払え」
28日の東京地裁判決は、講談社に対して、植草さん側に110万円(植草さんに100万円、弁護団に10万円)の支払いを命じるものでした。すでに確定している2つの訴訟同様、植草さん勝訴の判決でした。「判決の結論の広告掲載」については退けられました。
前回の徳間書店に対する損害賠償額は190万円(植草さんに170万円、原告団に20万円)だったので、それに比べると少ないとの感想を持ちました。判決言渡しのあと、損害賠償額が110万円だったことについて弁護団に感想を求めると、弁護団が想定していた額としては少ないが、この種の名誉棄損の賠償額としての最低ラインはクリアしているのではないか、とのことでした。
記者会見で発言する梓澤和幸弁護士(左)と坂井眞弁護士
◇記者会見
閉廷後、司法記者クラブで記者会見がありました。テレビが2台入っていたので、弁護団に理由を尋ねると、本人が記者会見に同席するという噂が流れたらしい、ということでした。記者クラブのメンバーもたくさん出席し、前回と比べると、この事件に対する関心が高まっているようでした。
記者会見には本人は出席せず、弁護団5名が出席しました。判決に対する植草さんのコメントが配布されました。弁護団の飯田正剛弁護士から勝訴の報告があり、次いで、坂井眞弁護士が判決についての弁護団の見解を述べました。続いて、梓澤和幸弁護士が犯罪報道の問題について発言し、最後に、質疑応答がありました。
◇「裏付けなく、たった1日の取材で書いた記事を断罪」と弁護側
弁護団は、判決の主要な点について、「フライデー」の記事が警察関係者、しかも匿名の警察関係者から話を聞いただけで、裏付けを取っていない、取材期間が1日しかない、こう聞いたんだからこう思った、というレベルのものでしかなかった、そういう取材の在り方に警鐘を鳴らした、と述べました。
判決は、講談社の取材経緯について、「結局、取材班は、報道関係者らの間の噂に基づき、客観的な裏付けもないまま、電話取材に対するAの回答からの感触のみに基づいて、極めて短時間のうちに自らの判断により本件名誉棄損部分を含む本件記事を作成し、入稿を終了したものというほかない」と判断し、自らの責任で裏付けを行わない取材を批判しています。
弁護団は、さらに以下のように語りました。
我々がはっきりさせたかったことは、警察からのリーク情報だけでいいんだ、という取材の在り方ではだめなんですよ、ということ。メディアの無責任な取材方法で書かれた記事については真実性・相当性のいずれも認定できない、と判決で明確の判断が示されている点は高く評価できます。
我々が訴訟を提起したのは、有名人が刑事事件になったとき、きちんと裏付けを取らないまま面白おかしく報じることはよろしくないということをはっきりさせたかったから。それによって、いかに本人が傷つくかということを分かってほしいという思いで訴訟を提起しました。
これまでの2つの判決は、和解と勝訴ですが、我々の認識ではいずれも勝訴です。和解では、賠償金のほかに謝罪広告を掲載させました。勝訴判決は190万円の賠償金の支払いを被告に命じました。あと2件(毎日新聞と朝日放送)残っていますが、近々、結果が出ると思います。
◇「警察のリーク情報がいかに危険か理解を」と梓澤弁護士
「7、8回近く厳重注意を受けている」という記述について、法廷で、どういう取材で、どういう根拠があって書いたのか、反対尋問で厳しく追及しました。警視庁関係の仕事をしている新聞協会加盟の各社のうちの記者から聞いた話がきっかけで、そのあと警察関係者から聞いたとおっしゃっていますが、いずれもきわめて不特定多数で、いったいどこのだれか全然名前が出てこない。
裁判員制度の実施を前に犯罪報道が議論になっています。新聞協会加盟社の記者は雑誌を低く見ていて、うちは注意している、とおっしゃっていますが、その協会加盟社らしいところがきっかけとなってこういう記事が出てくるという犯罪報道の構造が、非常に不確かな警察のリークによって名誉棄損が起きてしまう。
犯罪報道の基本的なしくみについて、こういう機会に繰り返し改善を訴えていきたいと思っています。雑誌だけでなく、新聞協会加盟社のみなさんも、リーク情報が、いかに危ない、人を危険に陥れるものであるか、理解してほしいと思います。
◇質疑応答の主な内容
質問 110万円(本人100万円、弁護団10万円)という金額は妥当なのか。
坂井 単純に請求額1000万円(請求額は本人1000万、弁護士100万)に比べ、10分の1とは考えていない。名誉棄損の損害賠償の額が大きくなっているが、最低ラインは超えているのではないか。個人的には、もうちょっと多くてもいいのではないかという思いはある。
質問 7、8回同様の行為とあるが、そのような事実はあったのか。
坂井 ない。
質問 証明できたのか。
坂井 事実があると書いたのは(報道した)各社。我々ではないので、ありませんとしかいえない。あるというなら証明してくれと言ったが、証明できなかった。だからないことが証明された。
梓澤 民事訴訟では名誉棄損されたとき、被告側はその記事が真実か、真実の相当性があるか、証明をしなければならない。証明できなければ、それは真実ではないということだ。訴訟というのはそういう場所だ。なかったことを原告側に、あなたがたが証明しろというのは間違い。真実であることを被告が証明できなければ、それは真実ではないということだ。
質問 それは裁判の話。聞いているのは、本当はあったのかどうかということ。
梓澤 だから、なかったと言っている。
質問 それは裁判の話ですよね。
坂井 そういう質問がよく出るが、では、なぜあったと思うのか。7、8回あったと誰かが言っていただけ。じゃ、それは本当の話なのか。だれも立証できなければ、誰かが言っていただけだと判断するしかない。我々は本人から聞いて、ないからないと言っている。そのような事実はない。
事実無根の記事を書いた「フライデー」記者の証人尋問で明らかになったことは、警視庁担当の新聞記者から植草さんが過去に同様の事件で7〜8回の厳重注意を受けたという話を聞き、懇意にしている警察関係者に確認したところ、その警察関係者が過去の犯罪歴にアクセスできる人に調べてもらい、おおむね正しい、と言ったので記事を書いた、ということでした。また、取材に当たったほかの記者2人も同様の結果を得た、とも証言していました。
この証言を聞いて筆者が思ったことは、この証言が事実であれば、内部情報を外部に漏らした警察関係者は厳しい処罰の対象になるのではないか、ということです。そして、情報の真偽も含め、記者に情報を提供したとされる警察関係者とその協力者の証人尋問が必要だと思いました。
原告弁護団の厳しい追及にも関わらず、記事を執筆した記者は、最初にこの情報をもたらした警視庁担当の新聞記者と警察関係者の名前を明らかにしませんでした。判決は「B(過去の犯罪履歴にアクセスできる人)が真に存在し、A(警察関係者)の依頼に協力したのかについてさえ疑問を持たざるを得ない」と述べ、記者の証言の信ぴょう性に疑問を呈しています。
事実関係について調べたり、裏付けをとることもなく、たった1日で記事を書いたことが証人尋問で明らかとなり、判決は、そのような取材方法の在り方を厳しく批判しながらも損害額については、原告が主張するほど多額(植草さん1000万円、弁護団100万円)の賠償金をもって慰藉しなければならないほど甚大なものとは認められず、100万円が相当との判断をしています。
しかし、この記事は、植草さんが「手鏡事件」で逮捕されたことを共同通信が電子記事で配信した翌々日に入稿されています。植草さんは無実を主張しており、まだ起訴もされていない段階で、このような記事が出ることが、その後の起訴、一審での有罪判決に与えた影響の大きさを考えると、被害の程度が甚大なものではない、という裁判所の判断は、到底容認しがたいものがあります。
しかも、この記事は一方の当事者である警察関係者の情報によるものであり、その悪質さにおいては、前回の徳間書店の違法性を上回るものがあります。梓澤弁護士も指摘していましたが、なんの裏付けも取らず、警察のリークによって記事を書くことの危険性は、「松本サリン事件」の被害者、河野義行さんの例を持ち出すまでもなく、深刻な報道被害を生み出し、その人や周りの人たちの人生を破壊するほどのものがあります。
このような重大な人権侵害を行っても軽微な損害賠償額で事足りるなら、これからも同様の人権侵害が起こる可能性があります。ことに問題なのは、警察が被疑者の不利益になるような真意不明の情報をメディアにリークし、メディアがなんの事実確認もせずに報道することで、無辜の市民を犯罪者に仕立てる危険性について、司法が説得力のある判断を示さなかったことは、大変残念です。
※判決に対する植草さんのコメントは次のとおりです。
対株式会社講談社(「フライデー」)判決についてのコメント
平成20年7月28日
植草一秀
今回の判決は、賠償額の認定を除けば私の主張をほぼ全面的に認めたものであり、妥当な判断が示されたものと考えています。「フライデー」事件は、一連の虚偽報道の先駆けとなる事案で、警察当局が虚偽の情報を流したとの被告の弁明を仮りに信用するとしても、裏付け調査をまったくとらずに虚偽情報をそのまま報道した点で、極めて悪質であると言わざるを得ません。社会に多大な影響力を持つメディアは報道にあたり、十分な事実確認、適正な裏付けの確保を求められています。虚偽の情報の流布により人間の尊厳は大きく損なわれます。報道に関わるすべての言論機関、言論人にはこのことを改めて強く認識していただきたいと思います。
法廷での闘いを含めて、違法な人権侵害の行為に対しては、今後も毅然とした姿勢で対応して参りたいと考えております。
◇ ◇ ◇
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