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http://mainichi.jp/select/opinion/maki/news/20080325dde012070029000c.html
電話交換係から「社会部さんで、お願いします」と電話が回ってきた。
「アンタ、これ書いた人?」と中年の男性。「バスにひかれ老婆死ぬ」というベタ記事のことらしい。
「僕が書いたわけではありませんが……。何か?」とにこやかに応対する。
「分かった。ところで、お宅の新聞では何歳から老婆なんだ?」「エッ……」。不意をつかれた。記事には「××子さん65歳」と書いてある。戸惑っていると「65歳が老婆なのか?と聞いているんだ」と幾分、居丈高である。
と言われても……。返事に詰まる。「アンタ、責任者?」「違います。ペイペイです。たまたま泊まり明けで、この電話の前にいただけです」と言い訳する。「なんだい、その“泊まり明け”と言うのは?」「宿直で寝ていないんです。だから頭が回らなくて……。申し訳ありません」とただただ謝る。「大変だねえ、記者さんも。でも、65歳の老婆ってのは良くない。お袋が“私も老婆なんだ。もう必要ないんだ”とダダをこねている。老婆というの、やめてくれ! でないと読売に変えちゃうぞ」。電話は切れた。
30年以上前、まだ交通事故が立派な新聞記事だったころのことである。20代後半の当方、今でいう「クレーマー」かな?と思いながらも「老」は人を傷つける言葉と肝に銘じた。
先週のことである。ある週刊誌の「長嶋茂雄・老記者が追い続けた不屈のリハビリ1400日」という記事が目にとまった。04年3月4日、脳梗塞(こうそく)に倒れた長嶋さんは雨の日も、雪の日も、台風の日も、リハビリを続ける。その姿を一日も欠かさず追いかけるスポーツライターがいた。たとえ周囲に「ストーカー行為だ」と言われても。「いい話」ではないか。
読み終わって、その老記者はいくつなのか気になった。小さな字の履歴に「1946年生まれ」とある。エッ、61歳が老記者なのか?
ご本人が「老記者」という言葉を使ったのかもしらないが、今の60歳代はすこぶる若い。幸か不幸か(年金不安などもろもろの経済的理由もあって)可能な限り働き続けている。団塊の世代がそれに続くのだろう。
「61歳が老記者なら、71歳の福田さんを老首相と書け!」と週刊誌に文句を言いたい気分になった。63歳の当方、福田さんと比べれば、老練でも老獪(ろうかい)でも老成でも(もちろん老害でも)ないから「老」にはトンと縁がない……。念のため。(専門編集委員)
毎日新聞 2008年3月25日 東京夕刊
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