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AERA1月13日(火) 12時58分配信 / 国内 - 社会
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090113-00000001-aera-soci
――主食の米が危ないかもしれない。
それも、公害病の原因物質で。
国産だから安全だと信じたいが、
そんな「国産楽観論」の根拠は乏しい。
国際機関からの相次ぐダメ出し。
わが国の国産タブーに迫る。――
袋詰めの米は約550トン。富山県の穀倉地帯を訪ねると、米泥棒が頻発するご時世もあるらしい。「倉庫内の米はカドミウム米・食用不適米」と物騒な文面の紙が張られた米袋がぎっしりの倉庫があった。
「食べられると間違える泥棒もいるかもしれない。食用に流れたらたいへんだ」(倉庫関係者)
従来、接着剤などの工業用原料として出荷されていた倉庫の米は、三笠フーズ(大阪市)などによる汚染米の横流し事件があって、昨年11月に焼却処分が決まったのだという。
そう説明すれば、とばっちりとみる向きもあるかもしれない。あの横流しは、大半は輸入米で、汚染は猛毒の黴や残留農薬だったはず。そのとき、国産は「やはり安全」と思ったものだが、目の前にある国産米の汚染物質はなんとカドミウムだという。カドミウムといえば、腎機能や骨などの障害を引き起こす猛毒、イタイイタイ病の原因物質ではないか。
保管倉庫があるのは神通川の流れる富山県。イタイイタイ病が発生した地域ゆえ、原因物質のカドミウム汚染米がこれほど穫れたのかというと、それは違う。実際、倉庫には他県産の汚染米が大量に積まれていたし、2006年には全国各地で約1200トンもの、カドミウム汚染米が確認されているというのである。
■国際規格より甘い日本
食品への有害物質混入事案が発覚した際、厚生労働省はいつもこんな発表を行う。
「許容摂取量を超えるレベルではなく、健康に及ぼす影響はありません――」と。
確かに、たびたび基準違反が発覚するウナギなら、毎日鰻重を、しかも大量に食べる人はまずいない。ところが、主食の米となれば、話は違う。毎日食べているわけだから、さぞかし厳しい基準値と思いきや、米のカドミウム基準値は海外に比べるとはるかに甘いというのだから聞き捨てならない。
国際規格を作るコーデックス食品委員会では、米の上限許容濃度が0・4ppm。なのに、日本の食品衛生法では1・0ppmまで認められているのだ。
土壌汚染に詳しい大阪市立大の畑明郎教授は話す。「コーデックスでは当初0・1ppmが提案され、いったんは0・2で採択されました。しかし日米が反対し、0・4まで引き上げられたのです」
■検査の網から漏れる米
各国の基準値を比べると、欧州連合(EU)や中韓は0・2。なぜ日本は緩いのか。
それにはお国事情もあるらしい。火山国の日本は土壌のカドミウム濃度がそもそも高いのだ。東京都では毎年都内に流通する米のカドミウム濃度を調べているが、基準をコーデックス当初提案の0・1とすると2割が基準超になるという。
農林水産省も対策はとっている。カドミウム汚染が社会問題となった1970年以降「消費者感情に配慮する」として、含有濃度が0・4ppmを超す米は政府が買い取って市場に流通しないようにしてきた。冒頭の倉庫にあるのはこの米だ。
だが、これには抜け道が指摘されている。というのは、カドミウム検査は、各地の農協が実施。政府が農協を通じて米を管理していた時代は有効だったが、95年の規制緩和後、農家と米穀業者の直取引は流通量の2割強を占めるまでになった。農協を通さないため、検査の網から漏れてしまうようになったのだ。
実際、カドミウム米買い上げ事業を行う全国米麦改良協会(東京)の購入先は全国の農協で、農家から直接買い上げた実績は07年度に1件あるだけ。要するに、検査されない汚染米が食用として大量に流通している恐れがあるということだ。
カドミウム米は、鉱山の下流など、特定の条件下で収穫される。ならば地域指定し対策を講ずればと思うが、そう単純ではない。含有濃度は天候や栽培状況で変わり、同じ田でも年によって浮き沈みするからだ。
農水省は「転作などの判断は都道府県知事に委ねられている。そもそも1ppm未満なら法律違反でないし、強くは言えない。基準値は厚生労働省の管轄ですし……」と言い、ならばと厚労省に聞くと、「国際基準ができるため、03年に食品安全委員会に審査をお願いした。現在省内で審議中。結論がいつ出るかは……」。
米の危険はカドミウムだけにとどまらない。昨夏、北海道でミツバチが大量死したことがあった。原因とみられているのが、水田にまかれたネオニコチノイド系と呼ばれる新型農薬だ。カメムシ駆除に有効で、北海道では毎年7月ごろから使われ、同時期、ミツバチが死に始めた。
■ミツバチ大量死と農薬
フランスでもミツバチの大量死が発生し、最高裁はネオニコチノイド系農薬の使用禁止を言い渡した。だが日本では、「大量死にはダニ説やウイルス説もある。農薬登録時に安全性は確認済み。農家と養蜂家で注意してもらうのが大事ではないか」(農水省)と動きはなし。
主流だった有機燐系の毒性が広く知られるようになり、代わりにこの数年急増したのが、有機燐系より急性毒性が低いとされるネオニコチノイド系だ。
果たして、ミツバチが死ぬほどの農薬を使い、米は大丈夫なのか。東京女子医大東医療センターの平久美子医師は話す。
「水溶性なので作物の中に入り込み、洗っただけでは農薬が落ちにくいのです。まだ新しい農薬なので安全性は確立されておらず、慎重になる必要があります」
それもまた、米を通し人体に蓄積されでもしたらと、不安は募るが、それとは別に、ミツバチ向けの禁止抗生物質が回りまわって、ハチミツとして我々の口に入る危険性も懸念されている。
数年前のことだ。持ち込まれた小瓶の中にはオレンジ色の粉末が入っていた。手のひらに収まる瓶をよくみると、ドクロマークのラベル――。
「砂糖水に混ぜて給餌すればミツバチの腐蛆病は治るから」
同業者からそう言われて、千葉で養蜂を営む松丸雅一さんが悩んだのは次の理由からだった。「その業者から買ったミツバチが病気に感染していた。苦情を言うと『薬を使え』と。恐ろしくて使えませんでしたが」
腐蛆病とは蜂の伝染病で、最近は新型が流行の兆しをみせている。東京都養蜂組合員の川島茂さんは話す。
「使用が認められている抗生物質は新型には効かず、禁止物質の使用が後を絶たない」
松丸さんの元に持ち込まれたのも、禁止抗生物質のオキシテトラサイクリンだった。長期摂取すると胃腸にアレルギー反応を及ぼすほか、骨や歯をあめ色にさせてしまう恐れがある。
《小麦粉、デンプン、食塩》
うどんの原材料表示は一般的にはそんなケースが多い。それをみて、多くの人は「無添加で安全」と思うはずだが、実は、そのうどんにも食品添加物が使われている可能性がかなり高い。
■実は添加物のデンプン
昨年10月、厚労省はこれまで食品扱いだった「加工デンプン」を食品添加物に加えた。天然デンプンは水に溶けず、温度変化に弱いなどの欠点があり、それを補うために作られたのが加工デンプン。加工の際に化学物質がつかわれることから、欧米では食品添加物として扱われてきたが、日本ではずっと食品扱い。そのため、原材料表示に「デンプン」とあっても天然か加工かはわからなかったのだ。
厚労省では「加工デンプンは各種実験で人体への毒性は少ないと確認済み。今回の変更は海外との表示基準に合わせるため」と説明するが、本当に人体にとって無害なのだろうか。
EUは95年に加工デンプンの規定を決め、乳幼児は加工デンプンを摂取すると腎臓に悪影響がでる恐れがあるとして、粉ミルクへの使用を禁じた。日本でもようやく規定が設けられたものの、表示が変わるのは11年以降だ。
■危険視される国産牛肉
厚労省は昨夏、生後20カ月以下の国産牛への牛海綿状脳症(BSE)検査補助金を打ちきった。だが、都道府県、政令指定都市などでは、独自に予算を計上して検査が続いている。
「国が何か言うものではないが、科学的知見からすれば、検査の有無によらずリスクは変わらない」(厚労省)
世界でも類のない全頭検査。だからこそ、国産牛は輸入牛より安全だと信じている消費者は多い。でも、それは「検査のための検査」とも揶揄され、安全性とは無縁。信じているのは日本人だけらしいのだ。
国際獣疫事務局(OIE)によるBSEの安全基準では、オーストラリアやニュージーランドが「危険が無視できる国」として最高水準にある。米国は「リスクが十分管理されている」とその下の準安全国。なのに日本は最下位に分類されているのだ。
低評価の理由はピッシング(脊髄破壊)と呼ばれる牛の処理作業にある。牛の解体時、眉間に穴を開けてワイヤを脳や脊髄に差し込み神経を壊す。脳、脊髄はBSEの危険部位だから、そこが汚染されていた場合、病原体は血液にのって牛の全身にまわる。この処理法は欧米では既に禁止されている。日本ではようやく今春、禁止されることになった。
米国食肉輸出連合会(東京)の原田晋さんはこう指摘する。「米国の検査対象は30カ月。EUでは今年から検査対象を30カ月から48カ月に引き上げました。世界の潮流は日本と別の方向へ向かっています」
食品の定義や基準を法律化する国も多い中で、日本は食に関する法律が少ない。多くの場合、各業界団体による「自主基準」任せだ。自主基準なので取り締まりもできない。
■安全な「国産」食べたい
ここに、コンビニで買ったアンパンがある。栄養成分表示は健康増進法により厚労省、原材料表示はJAS法により農水省、商品名は景品表示法により公正取引委員会が……と、たった一つの商品をとっても所管省庁がこれほど多岐にわたる。
「どの省庁に聞いたらいいのか、わからなくなる時がある」とはある食品会社員の嘆きだが、各省庁・部局が互いの狭い分野にとらわれるあまり、結果として、解決すべき喫緊の課題が放置され続け、縦割り行政の弊害で食の安全に一元的な対応が取れないのだ。
米食品医薬品局(FDA)が昨年1〜11月の間に輸入拒否した商品の国別輸出元を見ると、日本は530件。東南アジア諸国などを抑え、6番目の高違反国だった。安全な国産食品が食べたい。
編集部 加藤勇介
(1月19日号)
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