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津波第二波が「ドル暴落」を生み出すリスク(植草一秀の『知られざる真実』)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2009 年 1 月 08 日 09:08:19: twUjz/PjYItws
 

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-86c5.html

2009年1月 8日 (木)
津波第二波が「ドル暴落」を生み出すリスク


米国の2009会計年度(2008年10月〜2009年9月)の財政赤字が激増する。米国議会予算局(CBO)は1月7日、米国の2009会計年度の財政赤字が1.2兆ドル=約110兆円に達する見通しを発表した。オバマ米国次期大統領は1月6日、記者団に対して米国の財政赤字が仮に景気が回復しても、数年間は1兆ドル規模の水準で推移する見通しを示した。


米国の08会計年度の財政赤字は4548億ドルで、09会計年度は一気に2倍以上に拡大する。09会計年度の財政赤字のGDP比は8.3%に達し、過去最悪を更新する。


CBOが7日に発表した財政赤字見通しは、オバマ次期米大統領が準備中の景気対策を反映していない。実際の赤字額はさらに膨らむ。


オバマ次期大統領は2年間で7750億ドル(約72兆円)規模の景気対策を策定しており、09年度の財政赤字は1.5−1.6兆ドル(約150兆円)に達することになる。


問題はこの赤字をどのようにファイナンスするかだ。米国は2007年に7300億ドルの経常収支赤字を計上している。米国国内の個人、法人、政府を合算して7300億ドルの赤字を計上していることを意味する。09年度は財政部門の赤字が4500億ドルから一気に1.5兆ドルに拡大する。


その大半を海外からの資本流入に頼らなければならないだろう。FRBが不足する財政赤字をマネーの供給でファイナンスするなら、過剰なドル供給はドルの信認を揺るがすことになる。


二つの大きな問題が浮上する。


第一は、政府部門の巨大な資金調達が米国の長期金利を急激に引き上げるリスクを発生させること。
 第二は、米国の巨大な財政赤字の発生がドルの先行き下落期待を急激に高めること。


米国の10年国債利回りは昨年6月に5.3%の水準にあった。原油価格が1バレル=147ドルに達する過程で、FRBによる金利引き上げ観測が強まったためだ。


ところが、その後、原油価格が急落し、金融危機深刻化を背景にFRBが大幅利下げに動き、同時に景気悪化が加速したため、米国10年国債利回りは2.0%にまで低下した。


為替レートは2000年から2008年央まで、米ドルが日本円以外の主要通貨に対して暴落していたため、昨年央以降、米ドルは日本円以外の主要通貨に対して反動の上昇を示した。


しかし、今後、米ドルの信認が低下し、米国に対する資本流入が縮小すると、米国ではドル安進行の下で長期金利上昇が発生する可能性がある。景気後退下の長期金利上昇は米国経済にさらに下方圧力を加えることになるため、米国株価はさらに下落圧力を受けることになる。


これが「ドル暴落シナリオ」であり、米国金融市場は株安・債券安・通貨安の「トリプル安」に直面することになる。


日本は小泉竹中政治の巨大な「負の遺産」の処理に苦闘することになる。竹中平蔵氏が金融相に就任して以降、日本政府は巨額のドル買い為替介入を実施して、現在、日本の外貨準備残高は1兆ドルに達している。


ドルの下落は日本の外貨準備の時価評価の減少を意味する。1ドル=95円時点で、すでに外貨準備の為替差損は24兆円に達したことが明らかにされている。財政が逼迫しているなかで、24兆円の損失が日本国民に対するどれだけの背任行為であるか。計り知れないものがある。


2005年から2008年にかけてのドル堅調時に、日本政府はドル資産残高を大幅に圧縮しておくべきだった。為替損失を計上せずに、外貨準備残高を20億ドル程度に圧縮することは十分に可能だった。


ところが、小泉政権は米国政府の要請に基づき、保有するドル資産を売却しない約束をした可能性がある。もし、約束の存在が事実だとすれば、許されざる売国行為である。


1月5日付日本経済新聞は、中国の社会科学院世界経済政治研究所の余永定所長が1月5日付の中国紙『中国証券報』で、世界最大の外貨準備の運用について「米国債をある程度売って、ユーロや円の資産を増やすべきだ」と語ったことを伝えている。中国政府は昨年もGSE(政府支援住宅金融公社)債の信用リスクが高まる局面で、GSE債券を積極的に売却した。外貨準備の運用に際しては、中国の国益を優先して対応していることがよく分かる。


日本の外貨準備の成り立ちが一般によく理解されていないので、簡単に解説する。日本政府は急激なドル安=円高局面で、ドル下落=円上昇を抑制するために、外国為替市場でドルを購入することがある。これが「ドル買い介入」である。ドルを買うのは日本政府=財務省で、その買い付け資金は、全額日銀からの借金である。政府が「外国為替証券」と呼ばれる政府短期証券(国債)を発行して、その全額を日銀が引き受ける。


これまでの累計で、政府は1兆ドルの外貨準備を保有している。ところが、ドルが下落したため、ドルを購入した費用と保有するドルの時価総額の差額において24兆円の損失が生まれているのだ。


この損失は、日本国民の負担になる。24兆円もの為替損失を生み出した小泉竹中政治に財政再建を語る資格はまったくない。外為会計の損失発生については、国会で責任を厳しく追及しなければならない。


これだけ損失を重ねているなかで、麻生政権は11月15日の金融サミットで、さらに10兆円もの資金を金融危機対策のために外貨準備から拠出することを約束してきてしまった。麻生首相はこのことを得意げに語るが、言語道断だ。


外貨準備は麻生首相のポケットマネーでない。日本国憲法第83条、第85条は、財政処理および国費支出について国会の議決を必要とすることを定めている。ポケットマネー感覚の麻生首相の外為特別会計資金の取り扱いは憲法違反である。


米国は日本政府による1兆ドルの外貨準備の売却に対して、強いプレッシャーをかけてくる可能性が高い。しかし、日本政府は日本の国益を基準に判断しなければならない。1兆ドルの損失は日本の死活問題に直結する。


日本経済の悪化のスピードは想像を超えている。鉱工業生産指数は昨年7月の108.3から11月の94.0に急落している。12月、1月の予測指数はそれぞれ、8.0%、2.1%の低下を示している。予測指数に基づくと、本年1月の生産指数は84.7まで落ちることになる。昨年7月比21.8%の減少になる。まさに「みぞうゆう」の生産減退である。


連動して企業収益が激減する。失業率が急上昇し、家計所得も急減する。不況は2009年に本番を迎えることになる。


米国金融市場は、昨年9月のリーマン・ショック以来の諸懸案に対する緊急対応が出揃って、小康状態を回復している。シティグループ、GSE、ビッグスリー、AIGなどへの対応が一巡したためだ。しかし、問題の根源にある不動産価格下落は勢いを低下させていない。財政赤字の急拡大とファイナンスの困難、その際の米国長期金利上昇とドル下落圧力の試練が表面化するのはこれからである。


金融市場の展望と投資戦略については『金利・為替・株価特報082号』に執筆する。米国12月雇用統計の発表が1月9日にずれ込んだため、082号は1月10日発行になる。ご了承賜りたい。


グリーンスパン前FRB議長が「100年に一度のTSUNAMI」と表現したことを重く受け止める必要がある。「津波」の重要な特性のひとつは、津波が「複数回」、時には「10回以上」押し寄せることだ。


スマトラ沖地震の際には、津波が押し寄せる前の引き潮につられて沖に向かった人々が帰らぬ人となった。「デリバティブ金融崩壊津波」を軽く見ることはできない。


麻生政権の遅すぎる対応が日本経済の悪化を加速させている。総選挙を実施して本格政権を早期に樹立することが、最優先されるべき不況対策である。

 

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