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日本の完全失業率が過去最悪の三・九%に上昇しました。働ける人百人中約四人が失業です。でも“もっと多い気がする”“国際的にみて日本はどう?”“「完全」ってなに?”。こんな声を聞きます。調べました。(篠田隆記者)
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■どうやって調べるの?
完全失業率は月末の火曜日か金曜日に発表の労働力調査(総務庁統計局)に載っています。その年報をみると、「国民の就業・不就業の状態を明らかにし、雇用政策などの基礎資料を得る」ためとあります。
では完全失業者とは?日本の定義が、他の国と合わせ一覧表で出ています(表)。数えてみると日本は七項目もあります。
東京・新宿区にある総務庁統計局の飯島信也労働力統計課長を訪ねました。
「いやー。七項目といっても大きく分ければ三項目ですよ。(1)現在仕事がなく(2)仕事を探していた者のうち(3)仕事があればすぐに就くことができる者です」
仕事がないとは月末一週間(調査期間)内に一時間以上仕事をしないこと。仕事を探していたとはその週内に求職活動をしていたこと。すぐ就けるとは職がみつかったら直ちに出勤できること―だそうです。
つまりこの条件に合う人というのは、まったくの無収入でも、エネルギッシュに求職活動をつづけることができる、恵まれた状態の人。そうした人だけが、政府のいう「完全失業者」になれるというわけです。
では「完全」とは?
「一九四九年五月から使った言葉です。四月までは求職活動をしなくても失業に入れていました。この、失業の条件を明確にするため、ILO(国際労働機関)の国際基準に合わせ、『仕事を探していた者』を加えました。四月までと区別するため『完全失業』としたのです」(飯島課長)
■外国より低いわけは?
月末一週間が調査のポイントのようです。しかし庶民感覚からいうとどうもピッタリきません。失業とはもっと日常的な状態をいうのではないでしょうか。
そういう日常の状態を調査したデータはないのか探してみたら、ありました。同じ総務庁統計局の就業構造基本調査です。ただ、欠点は五年(以前は三年)ごとの調査だということ。前回の調査は九二年です。このデータで失業率を計算してみました(図)。
仕事に就いていない人(無業者)のうち就業希望者を失業者とすれば、九二年の失業率は一二・七%。実際に仕事を探している求職者を失業者とすれば五・五%です。この年の完全失業率は二・二%。ずいぶん結果が違います。
“総務庁の労働力調査では小さな数字しか出ない”と手厳しく批判した政府文書をみつけました。経企庁発行の経済白書(七五年版)です。
「イギリス、西ドイツ(当時)は(失業率を出す計算式の)分子、分母とも小さい。アメリカは分子が大きく分母が小さいから、失業率はもっとも大きくなる。これにたいし日本は、分子が小さく分母が大きいから、失業率はもっとも小さくなる」
なぜそうなるか、白書は大要、次のようにいっています。
「アメリカでは、就職先が決まって自宅待機中の者や一時解雇の者も(分子に)含むため、失業者数が大きく出る可能性がある。イギリス、西ドイツは、家族従業者、自営業主を(分母に)含まないが、日本は含む。アメリカでは軍隊を(分母に)含まない」
ちなみにILO基準は、就職内定者を失業者に入れていますが、日本は入れません。また日本は自衛隊を分母にいれています。
■実際は、もっとひどいのでは?
同僚記者がいいました。「最近の傾向として、就職が厳しいので専門学校などに入り直す新卒者がずいぶんいるのではないか」。
確かに、求職活動をあきらめ、専門校や大学院にいく青年はいます。家業を手伝う青年もいます。しかし、そういう人は完全失業者には算定されません。
「完全」とは日本独特のいい方です。「雇用政策などの基礎資料」なら、国民の日常生活に近づいた調査を、毎月の労働力調査でもおこなうべきだと感じました。
項目 日 本 アメリカ カナダ イギリス ドイツ フランス
失業者の定義(分子) (1)仕事がなくて(2)調査期間中少しも仕事をしなかった者のうち、(3)就業が可能で(4)これを希望し、(5)かつ仕事を探していた者(6)及び仕事があればすぐ就ける状態で(7)過去におこなった求職活動の結果を待っていた者 (1)調査期間中にまったく就業せず、(2)その週に就業が可能で、(3)過去4週間以内に求職活動をおこなった者
・レイオフ中の者を含む
(1)調査期間中にまったく就業せず、(2)その週に就業が可能で、(3)過去4週間以内に求職活動をおこなった者
・レイオフ中の者を含む
・4週間以内の就業が内定している待機者を含む
(1)調査日において仕事がなく、(2)かつ就業可能なもので、(3)失業給付事務所に手当を申請している者 (1)仕事がなくて(2)調査日に雇用事務所に求職登録している者で、(3)有給雇用を希望し、(4)就業可能な者 (1)仕事がない者のうち(2)就業が可能で、(3)かつ常用雇用を希望する者で、(4)国家雇用庁に求職登録した者
労働力人口の定義(分母) ・就業者+失業者 ・就業者+失業者(軍人を除くものも算出)
・就業時間が15時間未満の無給の家族従業者を除く
・就業者+失業者
(軍人を除く)
・雇用者+自営業主+軍人+職業訓練を受ける者+失業者 ・就業者+失業者(軍人を除く)
(有給雇用者+失業者でも算出)
・就業者+推計失業者
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労働力調査のやり方=全国から無作為に選んだ約四万世帯(就業構造基本調査は約四十三万世帯。労働力調査とは違い、自衛隊は入れない)に居住する十五歳以上の人(約十万人)が対象。毎月末日までの一週間の就業・不就業を調査。世帯に調査票を配布し、世帯で記入し、調査員が回収する。
完全失業率(%)の出し方=完全失業者÷労働力人口(就業者+完全失業者)×100