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詐欺金融で吹き飛ぶ国民資産 外資の売り逃げ年金で穴埋め(長周新聞)
2008年12月3日付
アメリカを震源地にした全世界的規模の金融恐慌が深まりを見せている。実体経済や各国人民生活に深刻な影響を与え、ツケをみな転嫁して延命をはかっている。小泉・竹中路線で「金融立国」を志向してきた日本国内でも金融崩壊はあらわとなっており、銀行の貸し渋りで中小企業は相次ぐ黒字倒産、輸出に依存してきた製造業は大量首切りを強行するなど、かつてない状況があらわれている。
銀行は焦げ付きを次次と発表
近年「市場最高益」をあげてきた大銀行は焦げ付きを次次と発表している。株安の進行によってみずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱東京UFJなど三大銀行の時価総額の合計は9兆6900億円と5年ぶりに10兆円を割った。ピーク時の06年4月にはその4倍あったのから見ると、短期日に巨額の資産が吹き飛んだことがわかる。
メガバンクの9月中間決算は軒並み減益で、資本増強の動きに出ている。不良債権の処理費が前期の3倍に跳ね上がり、純利益は前年比で58%も減少した。モルガン・スタンレーに90億jの資本支援を迫られるなど、たかられた三菱UFJフィナンシャル・グループは1兆円の資本増強。3大銀行の調達額の合計は約1兆7000億円にのぼる。
サブプライム債券を約5兆5000億円つかまされた農林中央金庫も1兆円規模の増資を打ち出した。1兆円を超える資本は傘下の信連や農協から調達するといっている。9月中間期の純利益は前年同期比で92%減の104億円。有価証券の価格下落で1120億円の損失処理を実施したことが要因となった。9月末の有価証券の含み損は国内金融機関のなかでは最大の約1兆5000億円にも膨らんでいる。
資産の多くを有価証券などで運用しており、約58兆円もの資産のうち市場運用資産が7割弱を占めている。9月末時点で証券化商品を6兆8000億円も保有している。「日本を代表する機関投資家」と豪語してきたが、要するに農民漁民のカネを原資にして金融市場の“カモ”になっている。
11月26日に出そろった地方銀行・第2地方銀行の103行の9月中間決算では、3分の1にあたる33行が赤字に陥った。地域経済が疲弊して貸し出しが伸び悩む一方で、近年は投資信託販売などにシフトし、海外投資などで利益を追求してきたのが特徴で、リーマン・ブラザーズ社債の関連損失などを計上した銀行も少なくない。
損害保険大手6社の9月中間決算では、有価証券評価損などの関連損失の合計は約1900億円にものぼった。東京海上ホールディングス、三井住友海上、損保ジャパン、あいおい損保、ニッセイ同和の五社が当期最終利益で大幅減益の見通しになっている。
損保ジャパンは520億円の最終赤字に陥る見通し。新車販売が冷え込んだ影響で自動車保険が不振となり、住宅バブルがはじけて火災保険も不振。本業が振るわない一方でリーマン・ブラザーズの社債や海外への株式投資、証券化商品の焦げ付きが最大要因となった。三井住友海上は900億円もの損失を計上し、東京海上が724億円にのぼった。
リーマン関連など完全にデフォルトしたものを損失計上として数字に乗せているほか、株式の評価損などが含まれているが、AIG、サブプライム2社、つぶれかかっているシティなど、破綻が確定していけばさらに深刻な損失が表面化することになる。
9月初旬には「邦銀が存在感を示すビッグチャンス」「世界最強」などといっていたが、一転してピンチに陥っている。金融庁が11月28日に発表した2008年9月末の国内金融機関の証券化商品の損失は3兆2730億円にもなった。6月末から27%増加している。農林中金など大手銀行の損失額は2兆7760億円となった。
サブプライム関連はそのうち9500億円で、あとはその他の証券化商品による損失である。国内金融機関が保有している証券化商品の総額は22兆2710億円(9月末時点)とされ、わずか3カ月で1割強が水の泡となった。10月以後膨らみ続けている損失はさらにひどいと見られている。
また、投資信託協会は11月14日、国内の投信の純資産総額が10月だけで11兆円減少したと発表した。9月も合わせると18兆円にもなる。個人から投資信託会社が資金を調達して、国内外の株や債券に投資して運用するもので、ここ数年は「貯蓄から投資へ」とキャンペーンが張られ、銀行や証券会社、郵便局までがさまざまな商品を組み合わせて窓口販売、訪問販売に熱を上げてきた。その結果、巨額の個人資産が吹き飛んだことを意味している。
知識のない素人、高齢者や退職者をカモにして、リスクを負わせるハメとなった。個人の損失は「自己責任」で、大手金融機関の損失は公的資金をぶち込んで救済するシカケになっている。
年金資金で株式買上げ 市場運用分約93兆円
NYダウも日経平均も各国金融市場も暴落したり、若干持ち直したりしながら、しかし基本的にはジリ貧で下落し続けている。この過程で、不可解な買い上げがやられている。ドブに捨てるように公的年金資金がぶち込まれて、怒濤の株式買い上げをやっている。
日経平均株価は放って置いたら暴落が避けられないのが実情だ。年金資金の市場運用分は92兆9273億円にものぼり、財投債分の26兆9894億円をはるかに上回っている。四半期別に見てみると、この市場に投げ込んでいる92兆円で7月から9月末までだけで4兆2383億円の損失を出していることも明らかになっている。
10月、11月、12月は前期以上に“買い上げ”をやっているので、損失は10兆円ほどに膨れあがってもおかしくないという指摘もある。株式運用だけでなく、企業社債(資金調達)などにも突っ込んでいるが、運用の詳細については明らかではない。
株式市場において外資投機集団が売り逃げしていくのを補う形で、日本の年金資金が買い支えする構図。みなが知らぬ間に老後資金が企業資金の穴埋めに張り替えられている。今後は郵貯・簡保の株式運用も取り沙汰されており、国民の金融資産も好き勝手に使われている。
米国でも国が銀行救済 日本に米国債買わせ
金融危機にさいして、世界の富をかき集めてバブルを謳歌してきた米国では、政府が連日のように金融機関の「救済策」を打ち出している。赤字財政でカネはないのに、金儲けした連中の尻拭いのために、ドルと米国債を大量に刷り散らかして国が救済している。
米政府と米連邦準備制度理事会(FRB)が、投融資や保証を通じて抱えているリスクは最大で8兆j(約760兆円)にのぼる見通しになっている。対応如何で焦げ付く可能性が十分あるものだ。米連邦預金保険公社(FDIC)を通じて銀行債務と決済性預金を保証させるために、1兆9000億j。FRBは企業が資金調達のために発行するコマーシャルペーパー(CP)の買い入れに1兆8000億jを拠出して、資金繰り支援。住宅ローンや消費者ローン対策に8000億j。金融機関への資本注入や、不良資産救済に総額で7000億j。MMF(マネー・マネジメント・ファンド、公社債や短期金融資産で運用される投資信託で「極めて安全性が高く元本割れしない」といわれていた)向けの資金提供に6000億j。その元本保証に500億j。住宅ローンの借り換え支援促進策に3000億jなど、すさまじい額である。
その他、破綻寸前の各社を政府が抱え込んだことによって、シティグループの不良資産に政府保証として2500億j。550兆円ものサブプライム債券をばらまいた、ファニーメイ、フレディマックの住宅公社の尻拭いに2000億j。保険最大手だったAIGには1500億j。ベアー・スターンズの救済に290億j(約2兆8000億円)。FRBが公定歩合をいじって金融機関の資金繰りを助け、直接貸し出す制度は無制限に運用されている。また、各国の中央銀行とドル資金を融通する金額も無制限で、滞在リスクは上乗せされるすう勢。
EUも景気対策として25兆円規模の経済対策を加盟国に提案。企業支援や税制優遇などを実施するとしている。信用収縮が起きる過程で「最後の貸し手としての機能を果たす」といって中央銀行が登場し、量的緩和とか利下げなどを打ち出して資金を拠出している。政府が救済といっても資金はなく、膨大な国債を発行したり、博打のツケは国家国民に転嫁しつつ延命をはかっているわけだ。
しかしアメリカ政府の大盤振る舞いにせよ、これは、目先をしのいだ結果、ドルが大量に溢れかえって大暴落することになるほかない。そして減価した分、日本など米国債を買わされてきた国国は泣く目にあう。日本は9月時点で約100兆円もの外貨準備を保有し、ほとんどがドル建てである。日本政府が日銀から100兆円を借りて、米国債100兆円買い込んでいる格好。しかしドルの日本円に対する価値は日を追う事に下落しており、外貨準備の評価損は20兆〜25兆円に達しているとも見られている。
輸出総額が大幅に減少 労働者の大量解雇も
金融だけにとどまらず、実体経済にも波及している。
財務省が発表した10月の貿易統計速報では、アジア向けの輸出額が7年ぶりに前年割れとなるなど、総額で前年同月比7・7%の大幅減少となった。
米国向け輸出は14カ月連続、欧州向けは3カ月連続で前年割れとなった。とりわけ自動車の落ち込みが最大要因になっている。
国内でも消費は落ち込み、11月の国内新車販売台数は前年比33%減となった。トヨタはトヨタ九州の生産計画を来年1〜3月期は前年比で60%減の方針を出し、ライン停止も発表した。派遣・期間工などの非正規雇用を次次と切り捨てているのは自動車産業だけでなく、他の製造業にも共通している。
厚生労働省は10月から3月の半年間に非正規労働者が3万人が失職すると発表。すでに解雇されたり、契約解除が確定している分だけで3万人であり、新たに発生してくる解雇者などの数字は含まれていない。
「定額給付金」をばらまいてどうにかなる事態ではなく、金融から実体経済にいたるまでの破綻が進行するなかで、労働者が路頭に放り出されて食っていけず、現役世代がこれまでに経験したことのない社会状況が広がっている。