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労働者解雇で大企業は延命 内部留保230兆円ためこみ(長周新聞)
2008年12月22日付
暮れてゆく師走の街街に、首を切られた大量の労働者があふれ始めた。1、2年まえまで「史上最高益」を豪語していた多国籍大企業が、アメリカ経済がパンクしたことを理由に容赦ない大量解雇を始めたからである。連日のように新聞やニュースが発表内容を伝えている。
厚生労働省が主要メーカーを対象にした調査では、来年3月までに解雇される派遣社員の数は、10月までに確定しているだけでも3万人。その後の動きを加えると自動車メーカーだけでも2万人。派遣労働者のユニオンは主要メーカー以外も含めると全産業で推定10万人に達するとも予想している。世界恐慌突入の局面で、大失業の情勢となっている。
トヨタ等が首切りラッシュ
御手洗・日本経団連会長は今月8日、非正規社員の解雇について「世界的な景気の急激な落ち込みにより各社も減産に追い込まれ、苦渋の選択で雇用調整がおこなわれている」などとのべた。そして、大分県のキヤノン子会社で請負・派遣社員1200人が解雇されることについて問われると、「キヤノンが雇用しているとの誤解がある」とのべた。要するにキヤノンが解雇するのではなくて請負・派遣元の責任という主張である。
同社が剰余金を3兆3000億円も貯め込むことができたのは、経団連が派遣法を推奨し、低賃金労働者をこき使ったからであり、税制で優遇されてきたからにほかならない。この1年間だけでも2800億円の利益を蓄えた。そして8月には中間配当として株主が715億円を山分けしているなかでの大量解雇である。
「世界のトヨタ」がどうかというと、こちらも怒濤の首切りラッシュ。そして、週休3日制にするといい始めている。03年から期間社員など非正規労働者を大量に導入してきて、08年までにトヨタ本体で1万8000人、グループ全体では8万7000人にまで増やしてきた。それを来年3月末には、トヨタ本体の期間従業員については6000人から3000人まで半減させる方針をうち出した。
期間従業員の数は、08年3月時点では約8800人いたことから、1年間で5800人を削減することになる。ここ数年間で積み上げた利益は破格にもかかわらず、余剰在庫などいらないのがトヨタの看板方式というわけで、労働者にもへっちゃらでこういうことをやる。
なお、アメリカにも進出しているトヨタであるが、北米トヨタでは従業員は解雇せず、生産調整で余剰になった労働者には職業訓練プログラムを受けさせるなどの対応。これをアメリカのマスメディアから褒められている。アメリカ人には親切のようだ。同社は内部留保・剰余金は国内トップの約14兆円にもなっている。海外メディアから「トヨタ銀行」と揶揄されるほど富を蓄えた。
国内大企業全体の内部留保、すなわち貯め込んでいる余剰資金の総額は220兆〜230兆円にもなっている。これは世界的に見てもダントツといわれている。こうした金がサブプライムのような金融市場や、海の向こうに流れ出していく。また利益は株主配当として、大株主の外資金融機関などがゴッソリ持っていく関係にもなっている。この220兆〜230兆円という巨万の富は、働く者がいて、生産することで生み出されたのにほかならない。
派遣法で首切り合法化 構造改革の犯罪暴露
「人員削減は世界的な経済情勢によりやむなしで、しかも円高になっているから仕方がない」といった論調で、ここぞとばかりに各社が一斉首切りを始めた。とりわけ真っ先に切り捨てられているのが派遣・期間工など非正規雇用の労働者だ。
厚生労働省の調査では、全産業に占めている非正規雇用の割合は37・8%で、およそ4割にもなっている。これは近年の構造改革・規制緩和のもとで意図的に労働法を改悪して低賃金労働、ワンクッション雇用を合法化してきたことが背景にある。「直接雇用では社保負担など面倒だから」といった企業負担軽減もさることながら、派遣法が首切りの合法化であったことは、現在進行している大量解雇の動きを見ても歴然としている。
ただ、奴隷制社会ではあるまいし、これほどの労働者が全国津津浦浦で路頭に迷わされて、その家族や地域経済にも甚大な影響を及ぼすのに、大企業の好き勝手を野放しにして「仕方がない」「派遣になった者の自己責任」ですむわけがない。
大企業が急速に利益を伸ばし始めたのは特に2000年以後で、「いざなぎ景気」を超える空前の利益をあげてきた。小泉・竹中らが進めてきた規制緩和・構造改革によって、労働法制そのほか減税など、大企業への優遇措置が施されたことがある。そして、米国の浪費頼みの外需依存社会になってきたことが浮き彫りになっている。
2002年以降の日本経済の実質GDP成長率のうち、40〜50%が純輸出に依存している。その結果、世界経済の成長が鈍ると、たちまちマイナス成長に陥ることとなった。注目されるのは、戦後はアメリカ依存の輸出依存型だったわけだが、80〜99年の期間をピックアップすると、年平均成長率2・7%のうち純輸出の占める割合はわずか0・04%だったのが2000年代に入ってから格段に外需依存型が強まっていったことがわかる。
今年8月に、政府の経済財政諮問会議の専門調査会で示されている資料によると、2002年1月以降、企業部門の経常利益は年率13・3%伸びた一方で、賃金の伸びは年率3・2%にとどまっている。そして1996年度と2006年度を比較すると、家計所得は11兆円減少している。労働分配率は2000年を境に下がり続けている。
国民みんなは貧乏で購買力も落ち込んで内需は底打ち。農漁業は衰退し、中小企業などが支えてきた地方経済もガタガタ。「国際競争力に勝つ」といって優遇してきた輸出企業がダメになると、たちまち国内全体に波及し混乱しているのが現在の姿だ。また「金融立国」を目指すといっていたが、こちらもアメリカの金融バブルに巻き上げられることとなった。
「構造改革なくして景気回復なし」と叫んだ結果、構造改革によって景気がよくなったのは社会の上澄みの経営者、株主、金融機関など大資本のみ。財務省が「国・地方の借金が800兆円超え」と発表する一方で、大企業の内部留保は前述の通り2000兆円超えである。経団連は「消費税を上げないと社会保障がままならぬ。法人税は(消費税増税分ほど)下げろ」といまだにいっている。
政府は働く場保障せよ 労働者は団結が力
アメリカを震源地にした全世界的規模の金融崩壊が、実体経済や各国人民生活に深刻な影響を与え、ツケをみな転嫁して延命をはかっている。日本国内では、政府が膨大な年金資金を株買い支え資金として投入しているほか、アメリカの借金経済を支えるために買い取らされた米国債は日日暴落して紙屑になっている。
日銀が数十兆円もの資金を供給するのも、暴利をむさぼってきたメガバンクの資金調達や大企業救済のためで、その企業が労働者をへっちゃらで解雇していく。これは誰が見ても「定額給付金」をばらまいてどうにかなる事態ではなく、自治体が数十人程度を臨時雇用してどうこうなる問題ではない。
労働者が路頭に迷わされて食っていけず、現役世代がこれまでに経験したことのない社会状況が広がっている。巨大資本が社会の上層にため込んだ富を吐き出せば、これほどの貧困状況にはならない。
いまや英語はしゃべるが漢字は読めない首相で無為無策。新自由主義政策の破綻が明らかなものとなっている。国民はみな“労働”して生活している以上、「失業は自己責任」「努力が足りない」とかいって済む問題ではない。大企業の責任においてためこんだ利益をはき出して労働者の雇用を確保させなければならない。非人間的な派遣法のようなものは撤廃しなければならず、政府は国が成り立つ元である働く労働者の働く場を保障しなければならない。
いずれにしても強欲な独占資本とその政府にいうことを聞かせるには、
労働者の団結、各層勤労人民の団結の力による以外にない。