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イサカアワー
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投稿者 hou 日時 2008 年 12 月 22 日 21:42:09: HWYlsG4gs5FRk
 

http://www.tradition-net.co.jp/door/door_esy2000/3tsuka.htm

地域通貨が人間関係を変える

*** 第3回 ***
地域経済を支えているイサカアワー

現在はグローバリゼーションという掛け声の中、世界経済がますます緊密に結びつき、利益最優先の資本主義が世界を席巻していますが、そんな中でそのグローバリゼーションから地域社会を守るために、地域通貨を導入しようという動きが世界の各地で起こっており、さまざまな効果をもたらしています。今回はその中でも、地域経済に深く根を下ろしたイサカアワーの例をご紹介しましょう。

イサカは、米国ニューヨーク州の北西部にある人口3万人の町で、コーネル大学で有名です。この町は米国の中では比較的小規模な農家が多い地域で、この地域を中心とした自給自足型経済がもともと営まれていましたが、大規模農園化の波はここにも押し寄せており、地域経済が大資本に呑み込まれようとしていました。そんな最中、1991年にポール・グローバーという人が、40人ほどの仲間とともにお札を発行し、お互いの取引で使いはじめました。それがイサカアワーです。生協の運営するスーパーで通用する貨幣として生まれたイサカアワーは、1アワーが10ドルに相当するという基準のもとで2アワー、1アワー、2分の1アワー、4分の1アワー、そして8分の1アワーの5種類の紙幣が現在流通しており、1997年時点で6000アワー(6万ドル相当)の紙幣が流通し、現在では千人以上の個人会員と400の企業の参加のもと、200万ドル以上の経済効果をもたらしているそうです。

イサカアワーの公式な会員になるためにはまず1ドルの小切手を、NPOであるイサカアワー運営委員会に送ります。すると2ヵ月に1回発行されている機関紙と一緒に、2アワーが送られてきます。この機関紙には売りに出されているモノやサービス、あるいは買いたいと思っているモノやサービスのリストが掲載されており、その中から自分が欲しいものを売っている人や、自分が提供できるモノやサービスを欲しがっている人と会って、取引を行うわけです。もちろん自分自身の売りたいものや買いたいものをリストに付け加えてもらうこともできます。このようにして、それまでは見ず知らずの他人だった人たち同士で結びつきができ、お互いに助け合うという精神のもと地域経済が営まれるというわけです。

このようなイサカアワーは、他にもさまざまな面で地域の人たちの役に立っています。たとえば、地域の人たちのために無農薬の野菜を作ろうとする農家の経営を支援することによって、間接的に環境保護にも一役買っているわけです。イサカアワーでの融資は、米ドルとは異なって利子がつきません。1000アワーの融資を受けたとしたら、1000アワーだけ返済すればいいわけです。このように利子負担がないことで、零細農家は膨らんでゆく一方の利子の返済という重圧から解放され、安定した経営を行うことができるようになります。

新しいビジネスを起こそうという人には、このような地域通貨は本当に渡りに船だといえるでしょう。まず事業を始めるための資金を、利子なしで借りることができます。次に自分の会社や店の宣伝が、機関紙を通じてほぼ無料で(加入時の1ドルだけで)行えます。さらに、お互いが必要としているものをアワーで交換でき、かつ米ドルと違ってイサカ市内でしか使えないので、米ドルよりも気軽にものを買ったり売ったりするようになります(というのも、銀行にイサカアワーを預けても利子がつかない以上、せっかく稼いだアワーはできるだけ早く使ってしまいたいと思うようになるからです)。事務所や農作業の手伝いをしたり、自分で作っている商品を売ったりすることで簡単にイサカアワーを稼げることを知った人たちは、米ドル経済だけではできなかった快適な生活を、イサカアワーを使うことで手に入れているのです。

また、簡単に手に入るということは、同時に抵抗感なくイサカアワーを使ってしまうことができる(そういえば、日本語にも「宵越しの銭は持たない」とか、「金は天下の回り物」いう諺がありましたね)ということでもあります。このようにしてお互いを助け合うことで手に入れたイサカアワーをNPOに寄付することで、NPOの経営を助けることができます。NPOはそのイサカアワーを事務所の家賃や電話代、あるいはスタッフの賃金として支払うことで活動を続けることができ、その活動はイサカの人たちのためになるというわけです。

こんなお札を勝手に流通させて問題はないのか、という疑問もあるでしょうが、FRBの担当者が現地を視察して、イサカアワーが合法だという見解を出しています。市役所のほうでもこのお札の有用性を認識しており、使用を規制するどころかむしろ逆に推進さえしています。このイサカアワーの便利さを知って、米国の他の地域でも導入しようという動きが出てきており、実際現在では50以上の地域通貨が同じようにして米国やカナダなどで発行され、使われています。

なお、イサカアワーではホームページを開設しており、こちらでより詳しい情報や、機関紙のバックナンバーなどを読むことができます。ご興味のある方は、ぜひこちらのほうをご覧ください。


イサカアワーホームページ→ http://www.lightlink.com/hours/ithacahours/

次回は、70年近い歴史を誇り、スイスの中小企業を助ける役割を果してきたヴィア銀行をご紹介したいと思います。

 

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