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世界のプレカリアート。の巻
韓国で。デモ隊に突然放水車が水を噴射!
水が赤いのは「追跡」するため。
ギリシャで暴動が続いている。そのことに関する新聞記事を読んでいて、ああ、と思った。朝日新聞の12月13日号だ。見出しには「若者不遇 怒り発火」「就職難・低賃金にあえぐ」。ギリシャの暴動は警官が少年を撃ち殺したことを発端に始まったわけだが、若者たちの怒りは収まる気配もない。記事はその背景にある若者の就職難や低賃金に触れている。
同記事によると、「中道右派のカラマンリス首相」は「財政赤字削減、民営化推進」でEUで評価を受けたという。が、その結果、「規制緩和で労働者への保護制度が減らされ、貧富の格差は拡大」。25歳以下の失業率は21%。特に「高学歴の若者が行き場を失っている」。その隣のイタリアでは「非正規労働の広がりで月収1000ユーロ(約12万円)以下で暮らす高学歴の若者が『1000ユーロ世代』と呼ばれて社会問題化しているが、ギリシャではさらに収入が少ない『600ユーロ世代の若者』が話題だ」。
なんだか、とても他国のことだとは思えない。というか、まさに日本の「ロスジェネ」だ。プレカリアートという言葉はもともとイタリアの落書きから始まった言葉なのだが、そのイタリアで大ヒットした小説「僕らは、ワーキング・プー」を知っているだろうか。帯にはこんな言葉がある。
「高学歴、大手企業勤務、月収約17万円(1000ユーロ)、役職ありの非正社員、働く貧困層のリアルな『今』を描いた格差サバイバル物語」。
この小説には、こんな一文がある。
「非正規雇用者(プレカリアート)。それは不安定な雇用を強いられた僕らのことだ。
僕らは低収入で、貯金はゼロも同然。もちろんボーナスはもらえない。あるのはパワハラ、セクハラ、職場いじめ、突然の解雇通告・・・短期の雇用契約はまさに使い捨てだ。期間が満了すれば『はい、さようなら』。まれに仕事ぶりを評価されれば契約延長されるけど、どちらにしてもその日暮らしで精一杯。現在や未来の展望を一切持てない雇用形態だ。
もはや現在の労働問題は、生存権に関わる問題になっている」
びっくりした。自分が書いた文章かと思った。というか、これほどに先進国で共通の事態が起きている。そうしてお隣の韓国でも。
最近、今年の8月の韓国取材が1冊の本となった。『怒りのソウル 日本以上の「格差社会」を生きる韓国』(金曜日)というタイトルだ。その韓国では8月、BSE問題を巡って大々的なキャンドル集会が行われ、若者たちの数万人規模のデモが起こっていたわけだが、デモに参加した彼らは「牛肉の問題だけじゃなく、非正規雇用問題に対しても怒っている」ことを教えてくれた。そんな韓国の非正規雇用率は全世代で50%。なんと20代では90%にも達すると言われている。
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90年代後半の経済危機によってIMFから緊急融資を受け、「労働の柔軟化」などの構造改革を要求された韓国では98年に労働者派遣法が成立。その結果、この10年で一気に崩れたというわけだ。そうして非正規しか職がない韓国では、20代は「88万ウォン世代」と呼ばれている。今、ものすごいウォン安でどのくらいかわからないが、私が行った時点で月収8万円少し。それが20代の非正規の人々の平均月収だ。だからこそ若者たちはなんとか自分だけは安定した職につこうと公務員試験に殺到し、コシウォンというネットカフェのような勉強部屋に何年も住んでずーっと試験勉強をしている。が、地方公務員でも倍率は100倍。安く住めるコシウォンには日本のネットカフェ同様、「住むこと」を目的にした人も現れ、そんなコシウォンでは今年10月、31歳の男性が放火。更に他の宿泊客を刃物で切り付け、6人を死亡させるという「韓国版・アキバ事件」のようなことも起きている。男性は生活費に困っていた上に、「世間が無視する。生きていくのが嫌になった」と話している。韓国の実情について、詳しくは本書を読んでほしいが、とにかく、あまりにも同じ現象が各国で起きているのだ。
そうして人々を必要な時だけ使い、いらなくなったらゴミのように廃棄する、ということを繰り返していけば、行き着く果ては自殺か、自暴自棄な犯罪だ。或いは、暴動か。
現在、日本も最悪な事態になっているが、その実態を確かめるため、最近、日本で一番安いと言われる都内のネットカフェに行ってきた。ネットカフェの看板には、「12時間100円」の激安コインロッカーの案内が貼られている。そのコインロッカーの隣に設置された「パンツ、Tシャツ、靴下」がセットで300円で売られている自動販売機(こんなの見たことない)、ネットカフェの受付横で売られている200円のカップラーメンやカップやきそばは全部大盛り。200席はあるのに満席のネットカフェにひしめく若者やオジサンたち。空調で乾燥しまくり、煙草の煙で濁った空気。オープン席で煌々と蛍光灯の灯る中眠る人達。私も寝ようと思ったが、オープン席でリクライニングチェアを倒して寝ようと思っても、目の前に寝息がかかるほどの距離で隣のオジサンの顔があるから寝られたもんじゃない。寝顔は丸出しだし毛布も何もない。隅の席では、激しく咳き込んでいる白髪頭の男性。頭にちらつく「ネットカフェで結核の集団発生」というよく聞く言葉。現場を見てみて、愕然とした。このままでは、私たちはゆっくりと殺されていくばかりだ。
パンツ、Tシャツ、靴下の自動販売機。
こんな現実を、日本のトップと言われる場所にいる人たちは、どれほど知っているのだろうか。
それでも、私たちは世界レベルで「連帯」を始めている。この間、イタリアの人に、イタリアのプレカリアートデモに招待したいと言われた。ぜひ行きたい。韓国の人々とはこの間の取材でいろいろな繋がりを作った。政治がダメなら、もう勝手に世界のプレカリアートで連帯するしかないのだ。
http://www.magazine9.jp/karin/081217/