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http://www.swissinfo.ch/jpn/news/business.html?siteSect=161&sid=10108023&cKey=1229594193000&ty=st
Image caption: アルゴル・ヘラエウスの機械はフル回転 (swissinfo)金融市場が不安定になり、多くの投資家が金に逃げ道を見つけようとしている。その影響はスイスの金精製工場にも現れており、工場はどこもフル回転だ。ティチーノ州メドリーズィオ市 ( Mendrisio ) にある「アルゴル・ヘラエウス ( Argor-Heraeus ) 」社では金地金の需要に追いつくため、時間外労働も行われている。
「沈黙は金、雄弁は銀」。オフィスにこんな標語がかかっている。アルゴル・ヘラエウスの最高経営責任者 ( CEO ) エルハルト・オーベルレ氏がこの日の朝選んだのは銀。彼はインタビューに多くの時間を割いてくれた。
一番は金地金の製造
金、銀、プラチナを扱う貴金属精製工場を率いて20年。そのオーベルレ氏が言う。
「今のような状況はこれまで1度も経験したことがない。現在の需要はほとんど満たすことができないほど大きい」
その理由は、金融危機によって投資家の多くが確実な価値を持った投資先を渇望しているためだ。金や銀の地金、いわゆる延べ棒はこれまでにないほど需要が大きい。ほかに魅力的なものがなくなると、金の魅力はいつも増す。
「現在の貴金属価格の動きとはほとんど関係がない」
とオーベルレ氏は言う。
アルゴル・ヘラエウス社は装飾品業界や時計産業用にメダルなどの半製品も製造している。しかし現在、群を抜いて生産量が多いのは何といっても地金だ。製造の依頼主は、州銀行から国内外の大銀行まで多岐にわたる。
これらの銀行の顧客は、購入した地金を銀行の金庫に保管しておく。だが、中には自宅に持ち帰る人もいる。これで最悪の事態が発生しても、最低、原料の価値は手元に残るというわけだ。
高い需要に追いつくため、アルゴル・ヘラエウスは数週間前から3交代制を敷き、24時間フル稼働している。土曜日の時間外労働も例外ではない。臨時に人を雇い、社員の数も数年前の倍の200人に膨れ上がった。国境を越えて働きに来る人も少なくない。年間400トンという金の精製量は世界でも有数だ。
金の携帯電話ケース
投資目的での需要は増加しているが、市場が品不足に陥ることはなさそうだ。オーベルレ氏によると
「世界に流通している金の量は十分ある」
金鉱からの供給も安定している上、古い装飾品を溶かすケースが増えているほか、銀行用の400オンス ( 12.44キログラム ) もある大きな金地金「グッド・デリバリー ( Good Delivery ) 」も数多く出回っている。リミットに達しているのは生産側だけだ。
現在、最も求められているのは1キログラムの地金。しかし、100グラムと50グラムの地金の需要も高い。工場では納入された貴金属を再生し、純度99.9%の「純金」を製造している。
一方では、特別な希望に対応する余地もまだ残っている。工場を一回りしたとき、筆者はダイヤモンドをあしらった金製の携帯電話ケースを発見した。この携帯電話ケースはジュネーブのある事業家が注文したもので、その事業家は中近東の顧客のために発注したという。このモデルは最低25万フラン ( 約2000万円 ) はする。なんとまあ、裕福な顧客であることか。
出所を明らかに
「原料入荷の際の厳密なコントロール」と「貴金属の出所を完全に明らかにする」。この2つは非常に重要なことだ。アルゴル・ヘラエウスはすでに苦い経験をしている。2006年、コンゴ共和国に対する国連の制裁措置に反して金を加工したという疑惑が持ち上がったのだ。だが、この疑惑は後に間違いだったことが明らかになった。
工場の作業員にとっては高価な貴金属を扱うことが日常の一部だ。
「最初の頃はものすごく高価なものを扱っているんだという実感がありましたが、今ではもう普通の製品と同じです」
と、ある作業員は言う。
それでも、安全対策には力が入る。外から見ると工場は高い塀で遮断されており、まるで刑務所のようだ。ビデオカメラも至るところに設置されている。工場の内部では厳しい安全規則に従わなければならない。メインホールの出口では、通り過ぎる人をランダムに選択し、服などに貴金属を隠し持っていないかどうかの検査が行われている。
swissinfo、ヘルハルト・ロプ メンドリーズィオにて 小山千早 ( こやま ちはや ) 訳