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原田武夫 「オバマは一日にしてならず 」
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投稿者 新世紀人 日時 2008 年 12 月 16 日 13:27:34: uj2zhYZWUUp16
 

http://melma.com/contents/moneyfeature/081215.html

2008/12/15

マーケットを揺り動かす大きな「潮目」の一つに国政選挙がある。なぜそうなのかといえば、国政選挙は結局のところ人海戦術だからだ。人を使えば、費用(人件費)がかかる。それではそのための資金をどうやって調達するのかといえば、やはり最後はマーケットにてということになる。その結果、国政選挙のたびに株式マーケットでは「選挙銘柄」が乱高下し、金融と政治という二つの領域を貫く一つの歴史を紡いでいく。その限りにおいて、代議士ほどマネーの「潮目」が読めなければできない職業は無いのである。

ところが、最近は必ずしもそうではないようだ。―――私が外交官として霞が関時代にそのふるまいを見聞きしていた若手官僚(仮にここではA君としておこう)が、正にその典型のように思う。私よりも年下のA君は、省庁不祥事の嵐が荒れ狂っていた数年前、役所を飛び出した。行く先は超有名外資系コンサルティング会社。当時、転職先での年収が役所時代の倍以上(2000万円)になったと霞が関では少しだけ有名になったものだ。

そしてつい最近、風の噂で代議士として立候補することになったと聞いた。このご時世で国政を目指すとは、相当酔狂か、あるいは相当高邁な人物か、そのどちらかだと思った。しかし、そのころはまだ、何とも頼りなさげな福田康夫政権の頃。野党からの出馬をA君は決めていたというから、それなりにいきなり勝ち馬に乗るのではと期待していた。もしそのまま当選したならば、必ずやマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を読みきっての堂々の勝利になったであろうから。

ところがA君、何を思ったのか、いきなり出馬を辞退してしまったと次に吹いてきた風の噂で耳にした。先ほど書いたとおり、国政選挙は結局、人海戦術の世界だ。候補者は結局のところ担がれているにすぎず、本当に選挙を仕切っているのは地元の有力者であったりする。そうした人たちからみれば、いきなり立候補を止めるなど言語道断だろう。いったい何があったのかと耳を澄ませていたら、何と次のようなA君の言葉が聞こえてきた。

「僕は、利権まみれのあんな地元の連中に頭を下げ続けることはできない。それに、万一落選したらどうなるか。僕には、愛すべき妻と子供がいる。だから辞めた」

これを聞いて、正直、開いた口がふさがらなかった。ちなみにこのA君、風の噂によれば、現在、東証一部上場の有名会社に勤務しているのだという。年収は実に2500万円とのこと。「潮目」を読めないことも、時には役立つのかもしれない。


我が研究所の社会貢献事業「IISIAプレップ・スクール」などで学生諸君と付き合っていてつくづく思うのだが、このA君ではないが、彼・彼女らはいつも「自分はすぐに成功する人材。間違いない」と信じてやまない場合がえてしてある。最近、入社して3か月で退職する「第2新卒」組なる若者たちが後を絶たないが、結局はこうした(気概は良いとしても、根拠無き)期待値の高さと現実とのギャップとが、そうした社会現象を生み出しているのだろうとつくづく思う。そう思いながら、読書を進めている中で、非常に興味深い考察をしている本に出会った。渡辺将人氏の著作「オバマのアメリカ 大統領選挙と超大国のゆくえ」(幻冬舎新書)だ。

顔は知っていても、なかなか日本人にとって詳しくは知られてこなかったオバマ次期米大統領の素顔を描いている好著なのであるが、その中に次のような件があることを見つけ、はっとした。

一般に、私たち日本人はよほどの米国ウォッチャーでない限り、この40代後半の黒人大統領が彗星のように政治の世界に現れ、たちまちスターダムを上りつめたかのように思っている。しかし、実際にはそうではないのだという。

「『公のオバマ』のストーリー性を見る上で大切なのは、単純に見積もって約16年の基礎を持つ『シカゴのオバマ』を正しく理解する必要性だった。『民主党のオバマ』『アメリカのオバマ』を生み出した大きな部分を占めているのが『シカゴのオバマ』でもあり、オバマを支える『シカゴ政治』と『シカゴ政治の面々』だからだ」(渡辺将人・前掲書第171ページ)。

確かに、民主党選出の上院議員となり、さらには第44代合衆国大統領となるまでは、文字通り「瞬く間の出来事」である。しかし、それが可能となったのは、あくまでもそれに先立つ16年もの間、時に地に這いつくばるかのようにしてシカゴで政治活動を行い、妻・ミシェルとの出会いから始まり、多くの人々からの助けがある中で、徐々に地元で地歩を固めていったという史実の重みがあったからなのである。

米大統領選挙は、正に国家レベルでの利権争いだ。そこでは些細なことであってもマーケットで見え隠れする「潮目」の予兆を見落とすと、その後の政治生命すら失ってしまう。そもそも一介の上院議員から大統領へと短期間で駆け上がることができたことも含め、オバマ次期米大統領は「潮目」を読み解く達人なのだろう。そしてそれを修練したのが、16年にもわたるシカゴ時代だったのである。何でも「米国が一番」という気はないが、先ほど紹介したA君にもぜひ見習ってもらい、捲土重来を期待したいものだ。


こうした論点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その背景にありながら私たち=日本の個人投資家が知ることのなかった歴史上の“真実”について、私は、12月20・21日に東京、横浜、そして2009年2月7・8日に東京・横浜でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。

もっとも、オバマ次期米大統領の「誕生」が偶然なのか、あるいは必然なのかは、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を今、あらためて俯瞰してみると、やや議論のあるところなのかもしれない。渡辺将人氏の上記著作などを通じ、オバマ次期米大統領の足跡を知るにつけ、米国流金融資本主義が「危機」へと陥るのとあまりにも自然に平仄があう形で、オバマ旋風が巻き起こっているように見えるからである。個人としてオバマ次期米大統領が「潮目」を透徹する能力は確かにあるのだろうが、それ以上のより大きな何かの陰を感じてしまう。

ちなみに、米国の国家インテリジェンス評議会(NIC)が、現下の金融危機が始まる遥か前の2004年に公表した、2020年までの世界情勢を予告する報告書(“Mapping the Future 2020”)には、「これから起こるであろう金融危機と、持つ者と持たざる者との間で生じる不協和音の中で機能不全となっていく民主主義政治をうまくコントロールできるかどうかが未来を左右する」旨の記述がある。あたかも現在の米国、そして日本を含む先進国がおかれた状況をあらかじめ描いているように見えるのは私だけだろうか。仮に現状がこのように予見されていたとするならば、それは単に分析能力の高さではなく、「そちらの方向へと現実を導くべく、計画を立て、行動していった者」、すなわち米系情報工作機関の影を示しているというべきなのだ。そうである時、果たしてそこでつくられた「危機」の中で登場したバラク・オバマとはいったい何者なのかということになるのであろう。

正に「オバマは一日にしてならず」。―――さわやかな笑顔で有権者に訴えるオバマ次期米大統領の背後にうごめく、あらかじめ定められた巨大なシナリオを読み解くことが、今後、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢における「潮目」をつかみとるために、最も重要な作業となってきている。そのような時代を私たち日本人が、いかに生き抜き、新たな「日本」を築き上げていくべきかという点については、来年(2009年)1月に開催する「新刊記念講演会」でお話できればと思う。ご関心の向きは是非ご来場いただければ幸いである。


[新世紀人コメント]
古いたとえで申し訳ないが、オバマは「氷山の一角でしかない」のだ。

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