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日経の今日の朝刊記事なんか変だぞ「第三者増資総会決議を義務化」って間違ってないか?  − ドクター苫米地ブログ
http://www.asyura2.com/08/hasan60/msg/601.html
投稿者 児童小説 日時 2008 年 12 月 15 日 07:02:32: nh40l4DMIETCQ
 

ドクター苫米地ブログ − Dr. Hideto Tomabechi Official Weblog : 日経の今日の朝刊記事なんか変だぞ「第三者増資総会決議を義務化」って間違ってないか? - livedoor Blog(ブログ)

第三者増資、総会決議を義務化 法務省、会社法改正で検討

法務省は、買収防衛などに活用される第三者割当増資により利益が縮小しかねない既存の少数株主の保護に向け、会社法改正の検討に入った。現行法では事実上、取締役会の判断で新株を発行できるが、株主総会の決議を義務付ける方向。来年秋にも法制審議会(法相の諮問機関)で始める会社法の次期改正論議で論点の1つとし、2011年の通常国会への改正案提出をめざす。
 第三者割当増資は取引先や提携先の企業など特定の第三者に新株を割り当てる資金調達方法。1株当たり利益の縮小や投資ファンドなどへの経営権の移動も考えられるため、少数株主や外国人投資家らから規制強化を求める声が強まっていた。(07:00)


今日の日経朝刊1面に出ている記事だが、現行法で第三者割当て増資は既に株主総会の特別決議がいるぞ。特別決議は、出席した当該株主の議決権の3分の2以上。 特定の第三者に株式を特定の価格で割り当てることは他の株主と公平にならないから、第三者割当て増資は特別決議のはずだが。いわゆる「有利発行」というやつ。だから、法務省が日経記者にリークしたのは、「第三者割当増資」ではなく「株主割当増資」の話ではないのか? もしくは、頂いたコメントによると、時価発行での第三者割当増資は、公開会社なら取締役会決議だけで可能という特則があるということだが、株価が時価だったら、別に規制する理由はないはずだが。もちろん時価を違法に取締役会が第三者と結託して操作して一時的に下げるとかの可能性があれば問題だがそれは既存の法律で取り締まれる。

因みに取締役が自分達の保身の為にやるのが、株主割当増資。これなら、発行可能総株数(授権枠)に総会決議であらかじめ余裕をつくっておけば、その範囲内でいくらでも取締役会決議だけで増資可能。株主全員に株を平等に引き受ける権利を割り当てるから、有利発行にならないという解釈からだ。ただ、この場合、大株主が現在の持株比率を維持しようとすると、その持株比率分の資金が必要だから、資金を大量につぎ込まないと維持できないので、買収がしにくくなる。法務省が言ってるのは、こういう抜け穴を許すなということではないのか?

これは、逆にいうと、取締役会を支配すると会社を乗っ取ることができるということでもある。私もこの手法でベンチャーキャピタルと称す企業とそれと組んだ法律事務所に会社を一度乗っ取られたことがある。まず出資をしてきて、私の経営負担を減らすためという理由で取締役の過半数を送り込んできて、ある日私の出張中に取締役会を開き、取締役会決議で大量の新株の株主割当を決議した。すでに取締役会の過半数を押さえられていたから出席しても強行に採決されただろう。それで、私は株式の2/3超を維持していたが、総会決議なしで発行された。そうすると、株主割当増資の株価は当時の想定時価より大分低くされていたが、それでも私の持株比率を維持するには、25日以内に億単位のお金を用意しなければならないので、それは意味がないので、振り込みに応じなかった。(その資金で別な会社を作った方が意味がある。) 彼らは私が応じなかったのを見て、私の持株比率を51%未満にするのに必要なだけの最小限の出資を低い株価でしてきた。まさに法の抜け穴を利用した「見事な」敵対的買収だ。実際、これを仕掛けてきたベンチャーキャピタル担当者は、「これはゲームである」と周囲に言っていたそうだ。

この間、私は臨時株主総会の開催を株主として主張したが、取締役会の過半数を支配した彼らは応じなかった。臨時株主総会を開催していれば私はこの取締役達を全員解任できた。(当時は取締役の解任は特別決議で2/3の議決が必要だったが、新株発行の決議の時点で私は2/3持っていたから合法的に彼らを解任できた)。なんと2/3超株主からの臨時株主総会の開催依頼を無視したのだ。こうして私の持株比率は51%未満に下げられ、会社が乗っ取られた。

もちろん、その後私は、もともとの友好的な株主達と話をして、少しづつ時間をかけて株を彼らから買って持株比率を戻していった。同時に大手私法弁護士事務所と色々と対策を練り、結果、彼らの利益相反などの違法行為の証拠を集め、最終的に定時株主総会で彼らと再勝負して勝利した。これに2年かかった。彼らが送り込んできた役員達はその株主総会で任期だったので、任期満了当日に私が過半数株主として再任を決議しなければいいだけだったが、彼らが違法行為を行ったということを記録に残すために、任期満了当日に敢えて私が解任決議を動議し、採決した。これで乗っ取り屋が取締役会に入り込んでからは3年以上、乗っ取られてからは丸2年かけて完全に排除した。これ以外にも、色々な乗っ取り屋が私の会社にやってきては、手を変え品を変え、何度も色々な乗っ取りにあっているが、現在のところ全て排除に成功している。

ただ、通常の企業経営者であったならば、このような目にあえば、メンタル面だけでもやられていたであろう。実際、会社を乗っ取られる前と乗っ取られてから、乗っ取り屋が私の悪口を色々な株主や顧客に言いふらしていた。また、彼らが取締役会を支配している間に、億単位のキャッシュを色々な形で会社から持って行かれた。これは、色々な企業の敵対的買収でもよく行われていることだ。私の場合は、著書の執筆などをしながら、2年間かけて水面下で動き、2年後の株主総会で一気に勝負をしかけて勝利するというエフィカシーが維持できたから会社が守れたのだ。

特定の株主ではなく、既存株主全員に対してだから有利発行にならないという理由で、取締役会決議だけで、好き勝手な株価で株主割当増資ができるという現行の制度は、抜け穴である。これは、日経にあるように2011年の通常国会ではなく、政権交代後の通常国会で即議決すべきだ。問題なのはこの「株主割当増資」の抜け穴で、法務省が改正したいのも、日経が示唆するような時価発行での「第三者割当増資」の話ではないだろう。


同様にフジテレビが、ライブドアに対して行ったのも、第三者割当増資ではなくて、株主割当増資。だから総会決議なしで、取締役会決議だけでできた。フジテレビのプレスリーリスがここにある。フジテレビの顧問弁護士企業は、私も良く知っているM&Aの超プロ私法弁護士事務所だから、当然、当時の時点で合法的な方法しか用いるはずがない。また、フジテレビが行ったのは、事前登録制度というのを利用して、通常25日かかるところを14日で株主割当増資ができるもの。こういう買収対抗策を総合して「ポイズンピル」と呼んでいる。 因みに、ライブドアが、これは、特定の株主を排除するための事実上有利発行ではないかというような論理で、高裁に持ち込んで、フジテレビが負けて、ライブドアが勝利したのがニュースになったのは、覚えている人もいるのではないか?

フジテレビの上記プレスリリースには、以下のように書かれている。株主割当増資がポイズンピルであることを自ら明記している。

「内容・条件を修正すれば向上に資すると判断した場合、当社は、買収者と鋭意、交渉し、内容・条件を修正するように促します。その上で、適切な内容・条件に修正されない場合には、当社は、株主の利益・企業価値を守るため様々な手段・方策を採ります。また、株主の利益・企業価値を毀損するものと判断した場合、当社は、株主の利益・企業価値を守る様々な手段・方策を速やかに採ります。株主割当増資も、このような株主の利益・企業価値を守るためのひとつの選択肢であると認識しております。株主割当増資を行う場合は、取締役会で、発行新株式数、発行価額(時価を下回る可能性もあります)等の発行条件及び将来の割当期日を決定し、割当期日の2週間以上前に公告いたします。その割当期日における株主名簿(実質株主名簿を含みます)上の株主(実質株主を含みます)の皆様にその持株数に応じて平等に新株を引き受ける権利が割り当てられることになります。」

このポイズンピルが効くのは、通常敵対的買収は、LBOの形を取る。つまり、買収先の資産を事実上の担保に借り入れや私募CBで資金を調達する。ところが相手先が、フジテレビのリリースにあるように、「時価を下回る発行価額」で株主割当増資を大量にされると、それまで、持株比率を維持するためにつぎ込んだ資金が一気に稀釈化し、さらに大量の資金を入れないと買収が意味がなくなる。こうなると、LBO資金の提供元(通常ヘッジファンドや投資銀行、いわゆる「CDS詐欺」集団、堀江ライブドアの場合はその後悪行が祟って潰れたリーマンブラザーズ)にとっては、資金効率が悪くなり、LBOから手を引くモーチベーションになるからだ。逆に私の場合は、自分の持株比率を維持するのに、大量の資金をつぎ込まなければならないという意味で同じ効果だったわけだ。

このように現行の株主割当は取締役会が敵対的買収を防ぐポイズンピルという名目で、会社を私物化するため、もしくは保身のために利用されているというのが現状である。これを、防ごうというのが、法務省の動きだと私は理解する。(もちろん日経が示唆するような時価発行による第三者割当増資の話ではないだろう。) おそらく、これは、米国企業が今後日本企業をより買収しやくすしていくための米国政府からの圧力が影響していると思うが。私は資本主義の基本ルールに則って、会社は取締役会のものではなく、株主のものであると考えているからこの動きには賛成である。


実際、今年10月15日に公開されたばかりの米国政府からの2009年版の対日要求(いわゆる『年次改革要望書』には、以下のように書かれている。

http://www.ustr.gov/assets/World_Regions/North_Asia/Japan/Regulatory_Reform_Initiative/asset_upload_file931_15171.pdf (原文)
http://japan.usembassy.gov/pdfs/wwwf-regref20081015.pdf (仮訳)

(仮訳から)
II-D. 少数株主の十分な保護の確保
II-D-1. 以下の事例に関する義務に対応した、取締役および支配株主に対する明確な善管注意義務を確立するため、会社法およびその他必要な法令を改正する。(i)支配株主と企業間の取引を含む自己取引、(ii)少数株主のスクイーズ・アウト、(iii)企業機会の私物化。
詳論 2 1
II-D-2. 少数株主が取締役会またはその他の株主の行動により不当に不利益を被ることがないことを確保する最善の国際的慣習に従い、上場規則およびその他の自主規制の効果を強化するため、このような規則の改正を含む包括的な措置を2009年3月までに策定・実施するよう、証券取引所に促す。特に、以下の項目に関して規制強化を行うよう証券取引所に促す。
II-D-2-a. 不適切な新株発行、支配権の移動を生じさせ得る第三者割当、株式併合およびその他の手続きを通じた、既存株主の価値・議決権の希釈化。
II-D-2-b. 単独の支配株主を持つ上場企業に関する場合等、少数株主の利益を代表する十分な人数の独立取締役の選任。

このようにはっきりと、「少数株主のスクイーズアウト」はやめろ、「企業機会の私物化」はやめろ、そのために「会社法改正」と書かれている。興味深いのは、「I-D-2-a. 不適切な新株発行、支配権の移動を生じさせ得る第三者割当、株式併合およびその他の手続きを通じた、既存株主の価値・議決権の希釈化。」とはっきり書かれている。「不適切な新株発行」は、上に書いた「株主割当増資」ポイズンピルの話だ。また、「支配権の移動を生じさせ得る第三者割当」というのは、もちろん総会決議がいるが、これも取締役会と既存支配株主が結託すればできる買収防衛策だ。もちろん、日経に好意的に解釈すれば、取締役会がヘッジファンドなどと組んで不当に時価を下げた上で、取締役会決議だけで時価による第三者割当増資をすることも含まれているのかも知れない。

こうして「年次改革要望書」をみながら、日経の記事を読むと、真相が見えてくる。おそらく、「年次改革要望書」を受けて、民主党との政権奪取抗争の中で、米国オバマ新政権のサポートが欲しい現政権が、「年次改革要望書」を私たちだったら忠実に実行しますよという、”Show the flag”をしたということだろう。そういうリークを法務省の大臣官房とか経由で日経記者にリークをして一面記事にさせたということではないか。「株主割当増資」と「第三者割当増資」を一緒にするのは、いかにも「漢字がちゃんと読めない」レベルの政治家達がしそうな間違いである。だから、おそらくは、現政権のオバマに対するラブコールがこの日経のミスリーディングな記事であると思う。

本来は、

1.「株主割当」による新株発行を総会決議として、「不適切な新株発行」を防ぐ、
2.支配株主もしくは第三者と取締役会が結託して、「支配権の不適切な移動」を起こす「第三者割当増資」に対する規制強化を行う。

というように二つの全く別な方策を、「年次改革要望書」に合わせてリークすべきだったのに、「株主割当増資」と「第三者割当増資」の差を知らない政権政党の誰かが、法務省という名目でリークしたのをそのまま日経が、素通りで1面掲載してしまったというのが今回の記事の真相だと思う。株主総会特別決議を必要とする有利発行ではない時価での第三者割当増資の話であれば、「支配権の不適切な移動」として問題にはされないだろう。

だから、今日の日経1面記事は、現政権のオバマに対するラブコールと読めばいい。「年次改革要望書」の内容は、国民一人一人が、その内容を良く吟味すべきであるし、国会でよく審議もせずに、盲目的に追従すべきではないのは言うまでもないし、国民の意思を聞かずに、このように官僚からクラブ記者へのリークという形で既成事実を積み重ねていくという手法は問題だと思うが、こと、本件に関しては、米国政府の要求内容は正当であるし、正しいと私は自身の経験からも思う。

というわけで、「経済のことを本当に知りたければ、日経読むよりドクター苫米地ブログを読め」ということだな。

http://www.tomabechi.jp/archives/50775519.html  

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