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http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-35361520081210
[東京 10日 ロイター] ソニーが発表したリストラ策は、急速な景気悪化を象徴す動きとして注目を集めた。同社の収益はコストの大幅なカットで改善する可能性が高まる一方、設備投資の大幅な削減の結果、関連する業界へのマイナスの影響も大きくなる。 今後は、世界的な需要低迷を背景に、同様の動きが同業他社やその他の大企業に広がる可能性もあり、政策対応次第では合成の誤謬(ごびゅう)に陥り、デフレに逆戻りする──との連想も生じやすく、この先の株価動向は波乱含みだ。 ソニーのリストラ策について、市場では「これだけ景気が悪化、世界中でモノが売れなくなっている状況にあるため、主力企業の中から大規模なリストラ策を打ち出すところが出ても不思議ではない。今後、同様の施策を打ち出す企業が増える可能性もある」(準大手証券情報担当者)との指摘がある。 内閣府が10日発表した10月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は前月比4.4%減の8997億円と2カ月ぶりの減少を記録。とりわけ外需は、同37.2%減の6897億円と下落幅が03年7月(37.7%減)以来の大幅となった。 ソニーのリストラ策では、注目された人員削減だけではなく、2010年3月期のエレクトロニクス事業で中期計画における投資計画額(非公表)に対し、約3割削減するとしており、足元の設備投資が急速に冷え込むことを示す典型例となっている。 ソニーに続いて多くの企業がリストラ策や設備投資削減を競って打ち出した場合、日本経済は金融不安に揺れた2003年までのように、合成の誤謬(ごびゅう)に陥ると懸念する向きが少なくない。家計や企業が節約に走れば、自らの収支は改善するものの、マクロ経済全体にはマイナスの影響をもたらす。ここで需要が喚起されるような政策が打ち出されない場合、スパイラル的に景気が悪化するとの見方だ。 UBS証券・チーフストラテジストの道家映二氏は「企業が競ってソニーのようなリストラ策に走れば、当然、需要は一段と落ち込む。ここで政策対応を誤れば合成の誤謬に陥り、日本はデフレスパイラルの時代に戻る懸念も生じる」と話す。 <名古屋周辺では、トヨタの合理化にソニーショックが追い打ち> ソニーのリストラ策では「トヨタ(7203.T: 株価, ニュース, レポート) ショック」による影響が目立ち出した中部経済圏に、新たな打撃を与える懸念もある。同社は2009年度末までに現在、全世界で57カ所ある製造拠点の約1割、国内を含む5─6カ所について、閉鎖するか他の工場に統合して減らすと発表したが、名古屋に拠点を置く岡地証券の投資情報室長・森裕恭氏は「稲沢工場や幸田工場が閉鎖の対象になれば、ただでさえトヨタの業績悪化で沈みがちな中部経済の地盤は一段と沈下する」と指摘していた。 森氏によると「こうした点からソニーのリストラ策は、名古屋では衝撃的なニュースとして受け止められた。地元では松坂屋の既存店売上高が11月に2割落ち込んだことが示すように、トヨタの経費削減が負の効果として顕在化。合成の誤謬(ごびゅう)が心配されるが、既に中部地区ではデフレ色が強まっている」という。 こうした中で株式市場では、リストラ策で足元の改善を目指す企業ではなく、リストラと同時に次の成長に布石を打つ企業を評価しようとする機運が台頭している。 ある大手生保系投信の運用担当者は、ソニーのリストラに対し「外国人社長だから速やかに打ち出せた、いわば期間利益の追求を念頭に置く米国型経営の典型」と指摘した上で「日本型経営がすべて良いとは言えないが、目先の需要減と同時に、将来の需要回復を考慮する施策を打ち出せない企業には投資対象として魅力を感じない」と話す。 エース証券・専務の子幡健二氏は、豪州で大型買収に乗り出したキリン・ホールディングス(2503.T: 株価, ニュース, レポート)や、リーマン・ブラザーズ(LEHMQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)の一部事業を買収した野村ホールディングス(8604.T: 株価, ニュース, レポート)などを引き合いに出し「次のステップを考える企業が、先行き相場が回復した際の物色のリード役になる」と指摘する。 子幡氏は「期間収益を考えると、現状ではリストラの実施はやむを得ない」とした上で「一時しのぎ的なリストラ策ではなく、円高メリットを最大限に生かすような戦略が、厳しい今こそ求められる」とコメントしていた。 市場では「当面の実体経済は厳しいが、オバマ次期米大統領が空前となる景気対策を実施した場合、需要が一気に回復するシナリオも考える必要がある」(UBS証券の道家氏)との声もあるだけに、それにうまく対応できる企業を掘り起こそうとする動きも出ている。 10日の東京株式市場で日経平均が前日比264円37銭高の8660円24銭となった点について「無策な日本ではなく、米国はじめ各国の景気対策に対する期待感の大きさが堅調の背景にある」(中堅証券幹部)という。 他方、ソニーは大引けこそ前日比21円高の1917円となったが、市場では「会社のビジネスモデルを根本的に変化させるような大胆なリストラ策ではなく、ネガティブな印象」(クレディ・スイス証券・アナリストの田端航也氏)という声も出るなど、朝方は株価全般がしっかりとなる中で軟調に推移する場面もあった。 (ロイター日本語ニュース 水野 文也記者 編集 田巻 一彦) |