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日本経済の自律的回復を阻害する景気後退下での賃上げ要求(KlugView)
2008/12/03 (水) 21:50
景気後退が急速に進んでいることもあり、企業や政府が何らかの対策をすべきとの声が日増しに強まっているようです。昨日(12月2日)も、与党である自民党が、小泉内閣時代に策定した歳出抑制路線を3年間凍結し、社会保障費や公共事業費を拡大する方針を打ち出しています。
政府が経済対策として歳出を拡大するのは、景気後退の影響を最小限にする方策の一つとして考えられなくもありません。ただ、歳出の拡大は、経済対策ではなく、単なる浪費になる可能性もあり、財政の拡大=景気下支え、と単純に言えないのも事実です。特に日本の財政は、すでに多額の債務を抱えているのですから、浪費するのを覚悟で財政を拡大させるよりも、歳出抑制を維持しながらも景気を下支えすることを考えるのが、政府が本来すべきことのように思えます。
12月3日付の日本経済新聞によると、電機各社の労組で構成する電機連合は、2009年の春季労使交渉(いわゆる春闘)で、月額4,500円(組合員平均)の賃上げを要求する方針を固めたそうです。今年の春闘での賃上げ要求額は月額2,000円でしたので、来春では今年の倍以上の要求をすることを意味します。
記事によると、電機連合は、物価上昇に伴う生活水準の低下は、賃上げで補填するのが基本であり、労使交渉では個人消費の喚起が景気回復につながると訴える考えのようです。
物価上昇に伴う生活水準の向上を賃上げで補填すべき、という発想は、もしかしたら電機連合の中では自然なものかもしれません。ただ、小企業に勤めるサラリーマンにとっては、こうした主張は理解することが難しいものです。生活水準の向上は企業が保障すべきものではなく、個々人が努力を重ねることで得られる、と思われるからです。
もしかしたら電機連合は、生活水準の向上が、個人消費を喚起し、ひいては景気回復になると主張するのかもしれません。ただ、仮に賃上げの目的が、景気回復にあるのであれば、電機連合は、労働組合員の賃上げを要求するよりも、労働組合に属さない大多数の非正規労働者の賃上げを(小額でもいいから)主張したほうが合理的に思えます。
一般に、非正規労働者の賃金は、正規労働者よりも低額ですが、低い給与の方ほど、限界消費性向(増えた収入のうちから消費に回す割合)が高く、マクロでみた個人消費の拡大に寄与する可能性が高いからです。
政府の場合、国民全体の生活を守ることが一つの役割ですから、たとえ財政が厳しい情況でも歳出を拡大すべきだ、との主張は、それなりに説得力を持つことがあります。ただ、企業は、当然ながら政府ではなく、(クールに書けば)利益を得ることを目的とした組織です。景気悪化で利益が減少する以上、たとえ労働組合が今年以上の賃上げ額を要求したとしても、その要求に応えるとは思えません。
今回の日本の景気後退においては、欧米を中心とした世界経済の悪化が原因として指摘されています。このため、日本の景気が安定的に拡大するには、個人消費や設備投資といった内需が拡大するよう体質を変えなくてはいけない、という主張も目にするようになっています。しかしながら、景気が悪化すれば、政府や企業といった他者に助けを求める姿勢が根付いているのであれば、日本経済が自立的に回復することはあまり期待できないように思われます。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
12月3日付の日本経済新聞によると、
電機各社の労組で構成する電機連合は、
2009年の春闘で、どれくらいの賃上げを要求する方針?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
月額4,500円
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/12/03/004047.php