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中国でタクシーのスト続発、「二重三重の搾取」に不満爆発
中国各地で11月からタクシー運転手のストライキが続発、香港誌などによると、これまでに重慶市、海南省三亜、広東省広州など15地域以上でストが発生する異常事態となった。
各地の同業者が波状的に動き出し、事実上連帯する「ストの連鎖」が、共産党政権に対する強烈な圧力となっている。震源となった重慶から飛び火した三亜を中心に、その状況を探った。
◆「10%」
中国では一般的に、地方政府がタクシーの総数を規制、営業権を台数単位で企業に売り渡し、企業がそれを運転手に請け負わせている。関係者によると、運転手の多くは元農民。違法の高利貸から借りた金を元手にし、「二重三重に搾取されている」という。
会社への支払いや経費などを除いた収入は「売り上げの10%程度」と言われる。しかも、搾取を嫌った無許可の“白タク”がまん延、三亜では「正規車の3倍以上いる」という。
こうした状況は各地に共通する。運転手は「経済的弱者」と呼ばれ、その不満は全国に充満していた。
◆「大成功」
11月3日、重慶市で8000台以上がストに入り、市政府は負担軽減を約束。6日には党最高指導層の政治局員である薄煕来・市党委員会書記が運転手代表との対話に応じた。
「勝報」は、全国の運転手を刺激、三亜ではストを呼びかけるビラがすぐに出回った。作成者は不明。だれも知らず、知っていても話さない。「市当局が逮捕に動いたから」だ。
9日夜、約300人の運転手が、浜辺の芝生で集会を開いた。「我々の意見を市に伝えよう」という声は、「直訴じゃだめだ」という声にかき消され、スト決行の流れが決まった。
10日早朝、数百台が一斉ストを開始。「スト破り」の正規タクシーは壊され、すぐに営業をやめた。14日、市交通局幹部3人の辞任、タクシー会社による不正徴収金の返還、白タク摘発の強化などの成果を得て、ストは終息した。だれもが「大成功だった」と口をそろえる。
◆「事実上の組織」
タクシー問題に詳しい中国政法大の王軍博士は「事実上の『組織』が存在して、初めて集団行動が取れる。携帯電話などの通信機器が、こうした組織の結成を容易にした」と語った。同じ問題に直面するタクシー運転手は「均質化」された集団であり、通信手段があれば簡単に結合するという。
三亜の30代運転手は「勝因」をこう総括した。「ばらばらだと警察に威圧されておしまい。成功のコツは大勢が一緒に事を起こすこと。農民蜂起と同じだ」
タクシー運転手の動きを、民衆の互助、自衛組織としての役割を持っていた中国古来の民間秘密結社になぞらえる専門家もいる。三亜の40代運転手は「このストの『指導者』を探したい。お礼をしたいし、次にストをする時、また頼らなくてはいけないから」と話した。
◆政権の恐れ
共産党関係者は「地方指導者はいま、民衆の集団行動を非常に恐れ、穏便に事を済まそうとしている。武力鎮圧などで事態を悪化させれば、自分が責任を取らされる」と話す。安定を死守したい党中央も、激増する民衆抗議への対応方針を「鎮圧から隔離へ」(中国筋)と転換している。
政権の慎重姿勢もあり、三亜の「成功」はさらに飛び火していった。タクシーストは、1件ごとに孤立した民衆暴動や集団抗議とは違い、人々が同じスローガンを共有する反日デモに近い。それを防ぐのは困難だ。タクシーストにとどまる保証もない。この秋、四川省や重慶などでは、教師のストも続発している。(三亜で 杉山祐之)
(2008年12月2日03時12分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20081202-OYT1T00102.htm