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11月24日8時30分配信 フジサンケイ ビジネスアイ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081123-00000001-fsi-ind
総合商社がレアメタル(希少金属)確保に奔走している。技術立国日本にとって、レアメタルはハイブリッド自動車の駆動モーターや液晶パネルなどハイテク製品に欠かせない素材。世界的な景気後退で価格は下落傾向にあるが、将来的には新興国の需要拡大による需給逼迫(ひっぱく)の構図は変わらない。その多くが中国や南アフリカなど一部の資源国に偏在しているため、新興国の資源ナショナリズムの動きと相まって安定供給への危機感はぬぐえない。
三菱商事は電気自動車(EV)のバッテリーに必要なリチウム確保に向けて南米のボリビアで権益確保に動く。三井物産はカナダや豪州でレアアース(希土類)鉱山の権益確保を目指し、調達先の多様化を進める。政府も石油や天然ガス同様に重要資源に位置づけ、民間の動きを支援する方針だ。
≪EV普及の“代償”≫
「電気自動車のビジネスでバリューチェーン(川上から川下までの事業網)を構築するには、上流のリチウムの権益確保まで手がける必要がある」
三菱商事の三島公人・自動車関連事業ユニット室長はこう力説する。同社は三菱重工業とともに大株主として、三菱自動車の再建を支援する。その切り札の一つが、2009年夏に市場投入するEV「i MiEV(アイミーヴ)」だ。初年度2000台、その後は年間1万台を販売する計画だ。
この次世代EV車普及のカギを握るのが、ガソリンなどに代わる動力源に採用されたリチウムイオン電池の開発であり、その材料となるレアメタルのリチウムの安定確保だ。
三菱商事の試算によると2015年ごろまではリチウムの供給能力は市場需要を若干上回って推移するが、20年代には技術革新や地球温暖化防止対策を理由に、世界の自動車の半数がガソリンからEVへシフトすると予想。そうなると原料の炭酸リチウムの需要は約40万トンと、現在の生産量の約4倍超に急拡大し、「現状の供給体制では到底追い付かない」ことから、権益確保に動いた。
第1候補は南米のボリビアだ。リチウム資源の埋蔵量で世界の半分近くを占めるが、高地ということもあって生産面ではまだ手つかずの“宝箱”。ボリビア側もウユニ塩湖周辺でのリチウム生産を検討中で、三菱商事が事業参画を狙っている。
≪「脱中国」を模索≫
「技術立国の日本としては必要な金属で、安定供給を目指し権益投資を進めたい」
国益も見据えて権益確保を進めるのは、三井物産の佐藤洋一・レアメタル室長。中国などの資源囲い込みで価格が高騰した“レアメタル・パニック”により、取引先から「安定した価格で供給できないか」との要望を受け、07年8月に専門部署を立ち上げた。同社が最優先で調達先の確保を急ぐのは、レアアース、タングステン、プラチナなどを含む白金属の3鉱種。いずれも代替が困難で、生産や埋蔵量が一国に偏っている資源だ。
特にレアアースのランタン、セリウムはトヨタ自動車の「プリウス」などハイブリッド車(HV)に使われるが、その生産・供給を牛耳るのが中国で、レアアースの市場占有率は98%。ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、自動車部品などを削る超硬工具の素材に使われるタングステンも中国に大きく依存する。
中国政府は国内需要を優先させようと、レアアースの事実上の輸出規制に動き、資源の国家管理を強化しており、三井物産は「脱中国」の可能性も探る。日本と貿易面で友好国のカナダや豪州に照準を合わせて、新たな供給先の開拓を進める。
◇
■VS資源メジャー 政府支援
“資源小国”だけに、レアメタル確保には日本政府も総合商社の動きを支援する態勢を強化している。
経済産業省は、南アフリカに資源が偏在し、自動車の排ガス用触媒として欠かせないプラチナ(白金)、液晶パネルに使われるインジウムなど17鉱種を重要で希少性の高い主要レアメタルとして定義。昨年11月には官民合同で南アフリカなどに調査団を派遣し、資源外交を展開した。
独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、ボツワナなどアフリカ南部でのレアメタル権益確保に向け探査を進める。
スケールメリットという規模を追求する大手商社は、従来は「レアメタルのように規模の小さい商売はなじまない」と権益取得には消極的だったが、レアメタルがハイテク製品の生命線を握り、供給安定に支障が出る事態も想定されることから、方針転換した経緯がある。
ただ、権益獲得の道のりは険しい。マダガスカルに世界最大規模のニッケル権益を持つ住友商事は、今後の権益確保の見通しとして「すでに資源メジャーの寡占化・囲い込みが進み、今後の優良権益はカントリーリスクの高い国や地域になってくるだろう」と分析する。中国だけでなく、ボリビアも資源はビジネスになるとみて国家管理を進めている。
その一方で、追い風もある。 米国発の金融危機により「投資ファンドなどが市場から撤退し、権益確保の面では適正評価による交渉が行える環境になってきた」(丸紅)とみる向きもある。
「レアメタル・パニック」を過ぎて実勢価格に近づいてきた今こそ、権益確保の商機到来と読んでいる。日本が得意とする産業技術、そして技術立国を、素材調達の面では総合商社が支える役割を果たすことになりそうだ。
(西川博明)