★阿修羅♪ > 国家破産60 > 1044.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
日高義樹 ワシントンレポート第160回 2009年世界はどうなる〜キッシンジャー博士〜第4部5部2009年10の予測
第四部北朝鮮は崩壊するか
日高義樹:北朝鮮について伺います。北朝鮮との交渉は難しく、大統領は皆、騙されました。若く未経験な大統領が登場しましたが彼もまた騙されるのでしょうか?
キッシンジャー博士:ひどく騙したわけではないがある程度は騙した。とにかく試行錯誤でやってきたのだ、ある時は交渉し、ある時にはしなかった。交渉した時、米国は時に辛抱強くなり過ぎ、ある時はには辛抱が足らなかった。米国はたくさんの間違いをやった。核問題を話し合うときにマカオの凍結資産をどうすべきか一年間も討議していた。北朝鮮が核兵器の開発をあきらめたくない事は明らかだ。日本、中国、アメリカそれにロシアと言った周辺国すべてが、単一の画期的な政策に同意した時にのみ、あきらめるだろう。オバマ大統領が次のような事実を理解しているよう願っている。もし交渉が終結するまでに北朝鮮が8個あるいは何個でも核兵器を持つことになれば、新しい事態が生じてくる。交渉をしながら核兵器を造り続けてよいと認められたことになるからだ。これはあなたがたの方がよく知っているだろうが、日本に大きな影響を与える事になる。オバマ政権の最優先事項は彼らの核兵器を廃棄させる事だ。また騙されるか?そうならないよう願う。
日:問題はブッシュ政権は中東や他の事はではうまくやりましたが、北朝鮮に対しては大幅に譲歩しました。後継者のオバマ大統領は交渉を始めるに当たって重大な問題を抱える事になると思うのですが・・・。
キ博士:大幅に妥協したというのは公平な言い方ではない。だが交渉を引き延ばし過ぎたのは確かだ。日本に対する配慮も十分ではなかった。オバマ大統領がその点を正すよう願っている。ナポレオンがこう言った「ウィーンが欲しければウィーンを奪え」。核兵器が狙いなら核兵器に集中すべきだ、
日:2009年はどうなるでしょう?北朝鮮は国を維持できますか?
キ博士:北朝鮮は難しい時にきている、予測は難しい。専制主義というのは堅固で東欧がそうだったが、同時にあっという間に崩壊する。日本、韓国、中国、アメリカは政治的に妥協し合う事が大切だ。しっかりした安全保障上の対策をとり、大混乱を起こしそうな国を巡って対抗し合うような事は防がねばならない。
日:するとアメリカ政府、オバマ政権は、朝鮮半島の新しい情勢に備えているのですね?北朝鮮と韓国と言った事ですが・・・。
キ博士:北朝鮮情勢がどうなるか分らないが、もし何か起きたらアメリカ中国日本韓国が影響を受ける。こういった国々は、危機的な状況に備え、必要とあれば同じ対処法について話し合っておかねばならない。
日:すると、あなたはオバマ政権が着た朝鮮問題については六カ国協議というやり方を維持すると希望されるわけですね?
キ博士:私は二カ国間協議よりも六カ国協議を支持している。六カ国協議ならば利害関係のあるすべての国に役割が与えられるからだ。二カ国間交渉だと米国が自分の利益のために交渉していると疑われたり、他国の利益を無視していると言われたりする。私は常に二カ国間交渉よりも六カ国協議を支援してきた。
日:日本人としての私の観察では、カーター大統領クリントン大統領は北朝鮮に同情的でした。私の観察は間違っていますか?
キ博士:彼らが北朝鮮に同情的だったとは思わない。緊張を避ける事に力を入れただけだ。だが、ある程度の緊張が無ければ達成できない目標がある。オバマ大統領がこれまで以上の事をやらなければ北朝鮮が6〜10個の核兵器を製造するという現実と向かい合う事になる。そうなれば、私が何度かこの番組で繰り返したように、日本は自分の安全保障について考えるようになり、韓国も自国の安全を考えるので新しい状況が生まれてくる。そうした事は避けなければならない。
日:それに関連しますが、米国の大統領は皆在韓米軍を引き上げたいと考えてきました。オバマ大統領も米軍を朝鮮半島から引き上げたいと考えていますか?
キ博士:聞いた事がない。やるとすれば驚きだ、彼はやらないと思う。韓国から米軍が引き上げれば新しい問題が生まれてくる。韓国の立場はどうなるか、在日米軍の立場はどうなるか・・・。中東で米軍の展開について問題を抱えている時に新たにもう一つの問題を作り出す事は考えられない。それは後で考える事だ。今ではない。
日:でもアフガニスタンでもっと部隊が必要です。韓国から撤退する必要があるほかには場所が無い・・・。
キ博士:イラクの部隊を持っていける。それにアフガニスタンに必要な部隊はそれほど多くはない。アフガンに送るのは2万〜2万5千だ、大国にとって大して難しい問題ではない。
日:すると2009年に、朝鮮半島で大きな変化は起きないと思っておられる?
キ博士:北朝鮮が急速に崩壊して情勢が変ったり、核兵器について協定が成立すれば変化が起きるだろう。
日:可能性は高いですか?
キ博士:そうなる可能性はある。
第五部ロシアはどうなる?
日:最後はロシア問題です。長い間あなたが関わってこられた問題です。石油価格が下がったため、ロシアの影響力が2008年に比べ落ちていますか?
キ博士:ロシアの影響力は、ある程度までは石油価格に関連しているので、その力は低下している。だが根本的な問題は石油問題だけで解決されるものではない。ロシアは人口が減り続けている平均寿命は58歳だ。日本は70歳代後半だと思うが・・・。インフトラクチャーは完備しておらず教育制度は改善と改革、近代化が必要だ。国境地帯は非常に不安定だ。こうした問題を全て合わせればロシアが大きな問題を抱えている事が分る。だが、ロシアがソビエト体制に後戻りしているといっては誇張になる。ロシアはいつも隣国とうまくいかない。ロシアと米国は世界の核兵器の95%を保有している。大災害を起こす力があるが核戦争の問題を解決する力もある。機会と危険という複雑なバランスが続く・・・。ロシアと米国が地政学的な争いを起こすとは思わない。新政権はロシアと良い関係より良い関係を持ちたいと願っている。米露関係が改善される事を願っている。
日:彼らは強大な核兵器を持っている・・・
キ博士:その通り
日:通常兵力はなくなりつつある、人口が減っているので予算もない、すると危険になりつつある。ロシア軍の首脳が「核による先制攻撃の戦略を持つ」といいましたが、準備しているのでしょうか?
キ博士:私は核兵器について研究を続けてきた。
日:その分野の専門家でおられます。
キ博士:50年以上に渡って、私の初期の本の主題がこの問題だった。理論の上では、核による先制攻撃には十分な意味があった。だが実行する立場、政策をつくる立場になると意味が大きく違ってくる。現代の条件化で核戦争を起こすのは第二次世界大戦の終期に一個か二個の核兵器を使うのとは大きく違う。数日間で世界中に数千万人の死傷者がでるのだ、ロシアが先制攻撃を行うとは思わない。相互の自殺行為になる、一方が他方をより多く殺すかもしれない、だが生き残っても仕方がない。
日:ロシアはなぜ米国がポーランドに設置しようとしているミサイル防衛体制に反対しているのですか?古い領土を守りたい?
キ博士:ロシアはポーランドとチェコのミサイル防衛施設が、攻撃の為に使われるのではないかと考えている。二つの見方があるまず軍事的な見方そして政治的な見方だ、私にはロシアの懸念が理解できる。一方NATOは、NATOの領域を防衛するのをロシアが阻止する事は許せない。NATOの影響力を損なう事になるからだ。話し合いによってチェコとポーランドから攻撃を受けネイとロシアを説得する事は可能だと思うが、防衛網設置をあきらめるわけには行かない。
日:ご専門の歴史の中でも長い間問題になっていますが、ロシアは中国とどのような関係にありますか?
キ博士:ロシアは中国と如何なる関係にあるか?非常に複雑だ。まず現在ロシアがアジアに持つ大きな領土は19世紀に中国から取り上げたものだ。次に人口の差が甚だしい。
中国に接するロシアの6つの県には600万人が。住んでいるが、ロシア6県に匹敵する中国の県には1億2000万人が住んでいる。シベリア全体に済んでいるのはたったの2400万人だ。中国には10億人以上住んでいる。心理的な不均衡をもたらしている。一方、中国とロシアは米国に対抗する時に手を結ぶ。だが自然な同盟ではない、そう扱われた事はない。
日:2008年にプーチンは米国に敵対的でした、これは中国に近付いている事を意味しているのですか?
キ博士:色々な違いがあると同時に協力し合うという関係なのだ。だが、アメリカに敵対する為のロシア中国同盟ではない。中国が自分の利益を考えるなら米国と敵対しようとは考えないからだ。
【2009年10の予測】
日:いつものように2009年10の予測を伺います。っまず新大統領の人気は何時まで続きますかハネムーンは、どれくらい続くでしょう?
キ博士:ハネムーンは普通2.3ヶ月で終わるが、オバマ大統領は今年末になっても任期があるだろう。
日:次に彼の仕事です、彼は未経験で国際問題を知らないと言われています。失敗をやりますか?彼の基本的な国際政策とは何ですか?強硬派?妥協は派?
キ博士:これまでの大統領とまるで違う大統領の政権の始まりだ。以前の彼の主張は普通より弱く見える。だが彼のチーム構成を見れば強くなる可能性を持っている。強い外交政策を取ると思う。
日:強い・・・。
日:2009年米国経済ですが、失業率が高くなり景気は更に悪くなるといわれています。そう思われますか?
キ博士:年の前半は大変だろう、後半は回復が見られる。
日:良くなる?
キ博士:良くなる・・・。
日:米ドルの予測は難しいと思いますが弱くなりますか?
キ博士:経済が回復に向かえばドルは強くなると思う。
日:強くなる・・。
日:石油はどうでしょうか?2008年夏に比べると極端に安くなっています。1バレル50ドル以下になるでしょうか?
キ博士:石油は今年後半には75ドル程度で安定すると思う。
日:中国です。若者や反政府活動家達が騒動を起こしますか?反政府運動が起きる?
キ博士:中国は国内で難しい問題が起きるが、若者達が大規模な反政府運動を起こすとは思わない。だが国内情勢が難しくなる。
日:北朝鮮については既にお聞きしました。2009年北朝鮮は国を維持できますか?何か起きますか?
キ博士:あのような国では何が起きるか誰にも分らない。だが北朝鮮政府は国を維持するのがこれまで以上に非常に難しくなる。
日:なるほど。
日:ブッシュ大統領がいなくなり、彼らは活動的になってアメリカに奇襲攻撃をかけるのでは?
キ博士:奇襲攻撃というのは奇襲だから誰にも予測できない。テロリスト達が世界的なテロ攻撃を行う可能性はなくなりつつある。攻撃がないといっているわけではないが、テロリスト達は干渉を受けずに訓練所や本部をつくれなくなっている。大規模な攻撃はないが小規模な攻撃は続くだろう。
日:アジアから米軍の撤退が2009年に始まりますか?
キ博士:アジアの米軍の大部分は2009年、これまで通りの展開を続ける。
日:全体的に見て、2009年はどのような年になりますか?
キ博士:2009年は非常に複雑な年になる。大きな危険がある、だが同時に大きな機会に恵まれる。私は驚くほど楽観的で2009年初めには多くの困難があるが終わりまでには進展がある。
日:経済が良くなる機会もある?
キ博士:経済が良くなる機会、工業国が協力し合う機会、核兵器拡散問題が進展する機会、エネルギー問題で協力し合う機会、そういった機会が訪れる。あらゆる機会に恵まれるとは言わないが我々全員が難しい時期にある。現政権が終わろうとする時に大きな危機がやってきたが、現政権は動きが取れない、間もなく終わりになるからだ。2009年はムードも調子も変ってくるだろう。
日:有難うございました、来年もこの番組にきていただきたいと思います。
【テレビ東京】
http://www.tv-tokyo.co.jp/program/detail/13470_200901041600.html