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経済人類学的見地から見た世界恐慌
テーマ:経済
(by sunshine)
EUに続き日本も景気後退(リセッション)に入ったとのニュースが11月17日、ABCより流れた。
http://abcnews.go.com/Business/WireStory?id=6267786&page=2
Japan became the latest country to officially enter a recession. Official figures showed that the world's second-largest economy shrank an annual pace of 0.4 percent in the July-September quarter, meaning the country now joins the 15 nation euro-zone as officially in recession, defined as two straight quarters of contraction.
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日本の読売新聞では「日米欧そろって景気後退」との記事が11月18日付けに掲載されている。
http://www.yomiuri.co.jp/zoom/20081118-OYT9I00022.htm
米国発の金融危機が、日本の実体経済に影響を及ぼし、日米欧がそろって景気後退局面に入ることが確実となった。
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世界経済の景気後退など、「今さら言われなくても、とっくに分かり切ったこと」といいたいところだ。少しえらそうなことを書けば、経済人類学あたりの基礎的教科書や「ピーク・オイル」関係の本には、とうの昔にこうなることは書かれている。
人間の生活で欠かせないものは、食糧(水も含む)とエネルギー源。単純化すれば、この二つの物をめぐって、複雑化した金融システムが派生し、その結果、現代における経済危機が生じたということになる。現在、約67億人にまで膨張した世界の人口、工業化により減少した食糧生産高、枯渇していく化石燃料。そこで生じた食糧とエネルギー争奪戦に絡みついた金融問題・・・・とこういうことになるのかと思う。
結論からいえば、今後の世界的課題は、今さら言うまでもなく、食糧増産とエネルギー源転換の必要性ということであり、それが実現されなければ、遅かれ早かれ、いつかは人類が滅びてしまうという崖っぷちまで来ているということだろう。金持ちがいくら金を持っていても何の役にも立たなくなるという恐怖の近未来がすぐそこまで来ているということだ。そういった意味から、現在世界中で進行している金融危機は、人類が次なるステージへシフトする為の”仕込み”のようなもの。”自然の摂理”によって、整理されているとでもいうべきか。
従っていくら各国が公的資金を投入して銀行をはじめとする企業を救済しようとしても、そんなものは大きな目で見れば、何の役にも立たない、「焼け石に水」ということもこの道の専門家たちは分かっていることだ。
先進国では、1エネルギー単位の食糧が食卓に届くまでに10エネルギー単位相当の石油が使われていると言われている。このことは1エネルギー単位の食糧は10エネルギー単位の石油価格より高くなければ、食糧供給システムが経済的におかしくなる(軒並赤字が累積して継続が困難になる)ことを意味する。
アメリカは世界最大の農業生産国だが、農地で生活している人々はわずか2%であり、98%の人々は日々、生命維持のために、石油に支えられた食糧の加工、貯蔵、そして輸送に依存している。この点に 食糧問題とエネルギー問題が連動するゆえんがある
http://www.theoildrum.com/node/4285
人間の生活の基本はまず食料の獲得だった。その方法は狩猟採集、農耕、牧畜、工業の4パターン。狩猟採集民の経済は不安定だが貧富の差はなく、階級差もなかった。次に約1万2千年前に西アジアの「肥よくなる三日月地帯」に農耕が発達した。穀物は長期の貯蔵に耐えられ、運搬することが可能になった。このため他の地域に運ぶことができ、農耕に従事する者とそうでない者との分業化が起きた。そして都市が誕生する。食物は1年のある期間だけが収穫期。そこで作物の実りを祈る儀礼、それを司る僧侶が生まれ、司祭を頂点に階層社会が生まれた。牧畜の起源についてはいろいろな説があるが、農耕から発達したという説が最も有力。そして次に工業社会の到来となる。このような産業形態の移行に伴い、使用するエネルギー源が大幅に拡大した。
石油地質学者のC.J.キャンプベル(C.J.Campbell)は、彼の著作「The Coming Oil Crisis(到来する石油危機)」(2004年)の中で、「石油時代の前半が今、終わろうとしている。それは150年間続き、工業、輸送、貿易、農業、金融資本の急速な拡大を見せ、人口を60億人に増加させた。金融資本は、石油にもとづくエネルギーによって拡大を見せた。石油時代の後半は、石油と石油に依存する金融資本を含むすべてのシステムが崩壊するだろう。同時にこのことは現在の金融システムと連動する政治構造の崩壊を予告するものであり、第二次世界恐慌の到来ということになるだろう」と書いている。
http://www.amazon.com/Coming-Oil-Crisis-C-Campbell/dp/0906522110
http://www.hubbertpeak.com/Campbell/
リチャード・ハインバーグ(Richard Heinberg)というサンフランシスコ・ベイエリア在住のエネルギー関係の専門家は彼の著書「The Party is Over:Oil, War and the Fate of Industrial Societies(パーティーは終わった:原油、戦争そして工業化社会の運命)」(2003年)の中で、原油埋蔵量と消耗量、およびそれに現代の金融システムがどのように関わっているか書いている。
「今日では、実質的にすべてのマネーは貸付によって創造されている。つまり、世にあるほとんどすべてのマネーは借金を表している。マネーは金庫にある実体ではなくて、勘定を保つために銀行家が無から創造した観念的な記入である。では、貸付金利を支払うためのマネーはどこから来るのか?突き詰めるならば、そのマネーは、金融ネットワークのどこか他のところにいる誰かが組んだ新しいローンに由来することになる」
http://www.amazon.com/Partys-Over-Fate-Industrial-Societies/dp/0865714827
「You Tube」での彼のインタビュー動画
http://jp.youtube.com/watch?v=ux0EbSNMc_Y
金融システムについての日本語訳付きビデオ。
「Money As Debt」
http://video.google.com/videoplay?docid=-446781510928242771
ピーク・オイルの時期については様々な説があるようだが、ASPO(The Association for The Study of Peak Oil and Gas)-2008年11月のニュースレターによると、原油の消耗量は大体2010年を頂点にその後、原油埋蔵量の減少とともに下降していくようになっている。
下記サイトの「The General Depletion Picture」と「THE GROWING GAP Regular Conventional Oil」を参照のこと。
http://www.aspo-ireland.org/contentFiles/newsletterPDFs/newsletter95_200811.pdf
また下記サイトには各産油国の原油生産量と消耗量のグラフが掲載されている。これを見ても大体2010年をピークに一気にグラフが下降線を描いているのが分かる。
http://www.aspousa.org/proceedings/houston/presentations/Jeffrey_Brown_Net_Exports.pdf
そして現在、8億3000万人の人々が栄養不足で、そのうち7億9100万人が発展途上国に。世界の7人に1人、発展途上国では5人に1人が、飢餓状態である。
http://contest.thinkquest.jp/tqj2001/40584/01/population.html
「景気後退」「金融危機」「株安」などといってメディアが大騒ぎしているものは枝葉であって、事の本質では決してない。来るべくして来た問題だ。今後、人類はどのような「新しい世界」とやらを創出していくのか、それは誰が(またはどういう人たちが)音頭をとってやっていくのか、注視したい。
http://ameblo.jp/sunshine-berkeley/