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中国の景気対策を巡る2つの話題について考える(KlugView)
2008/11/12 (水) 19:35
中国政府が発表した総額4兆元(約57兆円)の景気対策が、2つの点で話題となっています。1つは、景気対策の規模が、真水では総額の3分の1程度ではないかと疑問視されていること。もう1つは、中国政府が景気対策を実施することで、米国債の価格が暴落するのでは?という危惧です。
景気対策に関する中国政府の発表では、景気対策として、低価格住宅の建設や農村の基盤整備など10項目があげられています。ただ、事業内容が具体的でないため、景気対策として発表されたものは、既存の5カ年計画で実施が既に予定されていたものが、かなり多く含まれている、との指摘があります。たとえば四川大地震の復旧事業などは、景気対策の有無に関わらず実施される予定でしたが、これが景気対策の1つとしてカウントされている可能性があるということです。
いくつかの報道では、中国政府による既存事業や計画を考慮すると、景気対策として新規に実施される事業、いわゆる真水は、総額4兆元の3分の1程度に過ぎないとの指摘があります。中国政府の発表では、総額4兆元の景気対策は2010年末までに実施されるとありますので、仮に真水が4兆元の3分の1程度であれば、各年で実施される新規事業の規模は6千億元(約9.5兆円)程度となり、対策の効果もさほど大きくない、といえなくもありません。
もう1つ話題となっているのが、景気対策に伴う中国政府による米国債売却の可能性です。中国政府は景気対策に必要な資金を確保するために、保有する米国債を売却し、結果として米国債の価格が大きく下落する可能性があるという指摘です。
中国は、人民元の上昇を食い止めるために断続的に介入を実施しており、介入の結果、手元に残った外貨(外貨準備)を米国債(ならびに米国のエージェンシー債)で運用しています。仮に、中国が指摘されているように景気対策の資金を確保するために米国債を売却したり、売却しなくても、これまでのように米国債を購入しなくなるだけで、米国債の価格は大きく下落することが考えられます。
どちらの指摘も、それなりに真実味のあるものですので、現実のものになる可能性は否定できません。ただ、だからといって中国の景気対策の効果が大きく低下するわけではないでしょうし、米国債の価格が「暴落」といわれるほど下落することもないように思えます。
景気対策の真水が、じつは総額の3分の1程度だったとしても、10兆円程度の規模を考えると、それなりの需要創出効果が見込まれます。特に中国の場合、日本と違って社会インフラの整備が遅れていますので、公共投資による乗数効果もあって、今回の景気対策が、中国の経済成長を下支えすると考えられます。
中国政府が景気対策のために米国債を売却する可能性は、否定はできないものの、あまり高くないように思えます。世界景気が減速したとしても、中国の貿易黒字は、今後も1千億ドルから1500億ドル程度を維持することが見込まれており、景気対策の財源として充分な規模に思えます。また、中国政府が米国債を売却し、結果として米国債が暴落すれば、中国政府が保有する(残りの)米国債の評価損が生ずることになるのは自明です。景気対策のために財源が必要とはいえ、米国債を多額に保有する中国政府が、自らの首を絞めるような行為をするとも思えません。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
中国政府が発表した景気対策の総額はどれくらい?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
4兆元(約57兆円)
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/11/12/003920.php