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http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20081027/175268/?P=3
人員削減、成果主義の導入、非正規雇用者の活用…。1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本企業はそれまでの雇用慣行にメスを入れることで激しい環境の変化を生き延びた。その一方で、日本企業の競争力の源泉、社員に深刻な危機が訪れる。
2007年4月2日号より
番組を作れないテレビ局、プログラムが書けないIT企業──。
気がつけば、日本中が「正社員だけでは何もできない会社」だらけになった。
コスト削減を優先するあまり、多くの企業が陥った派遣・請負依存の構図。
偽装、捏造、不具合が頻発するのは他人任せの“抜け殻”正社員が増えたから。
非正社員の正社員化や高卒採用拡大の動きも、まだ付け焼き刃の域を出ない。
短絡的な外部依存が、どれだけ現場を退化させたか。
正社員のあなた、そしてあなたの会社は、それに気づいていますか。
あるテレビ番組を収録するスタジオの様子である。総勢15人のスタッフのうち、テレビ局の社員は5人。大半の仕事は、制作会社の従業員によって支えられている。
物語るのは、テレビ局の正社員だけでは何もできなくなった抜け殻化の現実だ。関西テレビが制作した「発掘!あるある大事典II」の捏造問題の本質も実はそこにある。
「あるある」の場合、関西テレビは番組制作を日本テレワークに委託し、日本テレワークはさらに孫請けプロダクション9社に企画や取材、編集を再委託していた。関西テレビの社員として2人のプロデューサーがいたが、内容をチェックする複数の機会があっても捏造を見抜けなかった。調査や取材をほとんど丸投げしているのだから、何がどうなっているのか分からなくても、ある意味当然と言える。
全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)の調査によると、民放とNHKがプライムタイム(午後7時から11時)に流している番組のうち、テレビ局が自ら制作している番組は3割しかない。ATPの工藤英博理事長は「テレビ局のプロデューサーは番組作りよりも、スポンサーと競合する企業の製品や、差別用語のチェックに追われている」と指摘する。
その根底にあるのは、制作コストの徹底した切り詰めだ。デジタル化への対応や多チャンネル化で放送局のコスト負担は年々大きくなっている。現場では慢性的な人手不足が続くものの、年収1000万円以上が当たり前の正社員を簡単に増やすわけにはいかない。そこで、年収200万〜300万円程度で使える外部の人材に様々な仕事を任せるようになっていった。
1960年代から会社が進めようとした外注化に対し、テレビ局の労働組合は「仕事が奪われる」と強硬に反対した。だが、技術職など限られた職種から始まった下請け活用は、知らず知らずのうちに番組制作の中核にまで波及した。当初、反対した社員も次第に安易な道に流れ、会社と社員が一蓮托生となって外部依存を進めた結果が、今の抜け殻のような状態だ。
テレビ局の下請け依存を象徴する人物がいる。30年以上にわたって朝日放送に社員登用を求め続けている安部昌男さんだ。
安部さんが音響効果のエンジニアとして朝日放送の現場で働き始めたのは72年。制作会社、大阪東通に籍を置いていたが、朝日放送の社員と同じスタジオで同じように働き、「新婚さんいらっしゃい!」など数多くの看板番組を支えてきた。それでも給料は社員の半分程度しかもらえなかった。
処遇に疑問を抱いた安部さんは、74年から朝日放送に待遇改善を求めてきた。裁判によって、和解に近づいた時期もある。しかし、2001年9月に大阪東通が民事再生法の適用を申請したのを機に、テレビ局の現場から離れざるを得なくなった。
安部さんはこう警鐘を鳴らす。「テレビ局が雇用責任を果たさず、コスト削減を下に押しつけてきた結果、現場の労働環境が劣悪になった。それが番組の質の低下につながっている」。
下請け依存の構造が、深刻な品質問題を引き起こすまでに至ったのは、そこに「視聴率至上主義」が重なったためだ。関西テレビのある社員は「人事評価に成果主義が導入されて以降、視聴率を稼ぎ、収益を増やすことを最優先にする風潮が強まった。社員の間に数字がすべてという雰囲気が広がった」と話す。
コストと視聴率の圧力は、下請け、孫請けとの取引にダイレクトに反映された。「あるある」の場合、日本テレワークからある孫請けに支払われる1本当たりの制作費は、番組開始当初の1600万円から860万円に減った。
「届かない年賀状」の背景も…
「12月28日に出した年賀状が、元旦に届かなかった」
年賀状の配達について、今年1月18日までに日本郵政公社の相談センターに寄せられた苦情は、前年比20%増の2749件に及んだ。あまりの数に驚いた総務省が郵政公社に実態調査を命じ、公社は3月16日に報告書を提出した。
この報告書で、今年の年賀状の遅配は4900万通、全引受件数の約2%に達していたことが明らかになった。中には12月25日に出したのに、元旦に届かないケースもあった。
郵便不信に「非常事態宣言」
世界屈指の正確さを誇った日本の郵便に異変が起きている。遅配、誤配は言うに及ばず、未配達の郵便物を捨てたり、金品を抜き取ったり。にわかに信じがたい犯罪行為が続発している。
「昨今、職務外において社会的なルールを大きく逸脱した犯罪が散見されますが、誠に残念なことであり、強い危惧を抱かざるを得ません。(中略)職務の内外を問わず、倫理、社会規範、モラル、マナーを遵守し、公正な行動をとることが強く求められます」
危機感を募らせた郵政公社の生田正治総裁は2月23日、労組委員長との連名で「お客様の信頼向上に向けた共同宣言」を出した。ある公社職員は「総裁と労組委員長の共同宣言なんて今まで見たことがない」と驚く。事実上の非常事態宣言と言っても過言ではない。
10月の民営化が刻一刻と迫る中、募る一方の“郵便不信”。その原因の1つと考えられるのが非常勤職員の増加である。
今年10月の民営化で発足する郵便事業会社の正社員は10万6800人。これに対して非常勤社員は12万人に上る。2人に1人以上が非正社員になる計算だ。現状でも、夜になると本務職員20人に対して非常勤が100人という職場が珍しくない。
例えば、郵便番号をスキャナーで読み取って仕分けする区分機のメンテナンス。1日2回の機械の掃除は従来、本務職員の仕事だったが、最近は非常勤に任せる局が増えている。一見、単純作業に見えるが、習熟にはそれなりの時間がかかり、新入りの非常勤が手順を間違えると読み取り率が落ちて作業効率がガクンと下がる。こうした仕事から、郵便業務の抜け殻化が進む。
日本郵政公社労働組合の増田喜三郎政策部長は「非常勤で良質な労働力を確保するのが難しくなってきた。定着率が低下して、仕事を教えたそばから辞めていくケースが増え、本務職員の負担も増している。現場は『もう限界』と悲鳴を上げている」と言う。
コスト増でも本務職員増やす
窮状は数字に表れている。
2006年9月期の中間決算で意外なデータが明らかになった。
この期、郵政公社は本務職員の削減で70億円のコスト削減を達成したが、一方で非常勤職員の「時給単価上昇等」により137億円のコスト増が発生した。この「時給単価上昇等」には、新入りの非常勤職員に仕事を教えるための本務職員の超過勤務手当なども含まれる。
「教えたそばから辞めていくから、指導する立場の本務職員は教え続けるはめになり、超過勤務が常態化している」と増田氏は指摘する。求人広告や面接など、採用活動にかかるコストもバカにならない。
郵政公社は今春から、不祥事防止のために、内部監査の担当者を700人増やすなどコンプライアンス(法令順守)関連の部署に2100人を配置する。郵便担当から監査に回した人員の穴を埋めるため、今春は郵便配達で1500人の本務職員を新規採用した。
本来、民営化元年の今春は、人件費を抑えるため、郵便配達の本務職員を採用しない計画だった。しかし、抜け殻化した現場を立て直すには、本務職員を増やすしかないと判断した。
定着率の低い非常勤職員に依存することによるサービス劣化は、新生「日本郵政」にとって致命傷になりかねない。例えば小包部門では民営化後、ヤマト運輸などとの激しい競争にさらされる。「少なくともお客さんと接するフロントラインは100%本務職員にすべき」と増田氏は言う。
効率を追求した10年間で、郵便の現場は空洞化が進んだ。民営化後、日本郵政の経営陣には収益向上への強いプレッシャーがかかるが、利益志向に走る前に、まずこの空洞を埋めなくてはならない。
2006年10〜11月に、東京労働局が業界別に実施した「請負・派遣適正化セミナー」。キヤノンや松下電器産業グループといったメーカーの偽装請負問題が、連日新聞やテレビを賑わせる中、最も活況を呈したのは、システム会社を中心とする情報サービス業向けのセミナーだった。
情報サービス業向けのセミナーには、大半の会社が複数の担当者を参加させ、会場はどこも満員になった。東京労働局は今年に入り、セミナーの追加開催を急遽決めている。
セミナー受講に熱心だったのは、この業界に順法精神あふれる会社が多いから、ではない。
セミナー参加者503人を対象にしたアンケートによると、システム開発を顧客から請負契約で受注しているとの回答は全体の89.4%、さらに自身が下請けに請負で仕事を発注している割合は91.5%に上った。半ば常態化している偽装請負の摘発を恐れ、目先の対応策探しに奔走する。セミナーに参加者が殺到する背景には、そんな実態がある。
下請けに頼りすぎれば、システム会社として持つべき技術や機能の低下は避けられない。それでも業界を覆う下請け依存症は年々悪化の一途をたどっている。情報サービス産業協会(JISA)の調査によると、1997年度に20%だった売上高外注比率は2005年度には30%の大台を超えた。
「下請け頼みの体質が染みついた結果、NECや日立製作所のような大手でさえ、自社だけではシステムが作れなくなっている」と有賀貞一JISA副会長(CSKホールディングス副社長)は指摘する。
かつては、下請けを使うといっても、その範囲はおのずと限られていた。元請け会社の責任者であるプロジェクトマネジャーが顧客の要望を取りまとめ、システムを設計する責任を負っていた。下請け会社の仕事は、その“設計図”を基に実際のプログラムを作成すること。両者の間に、はっきりとした役割分担があった。
だが、最近はそれが怪しくなっている。元請けは設計図の作成はおろか、孫請け以下の外注管理まで、下請けに丸投げするケースが珍しくない。こうなると元請け会社が介在する意味は、その高い知名度だけ。事実上、「大手が元請けになっているからと、顧客を安心させるためだけの存在」(有賀副会長)になっている。
下請け会社の一員として典型的な丸投げシステム開発を経験した若手SE(システムエンジニア)は証言する。
「元請けのプロジェクトマネジャーは、顧客との会議では積極的に話して仕事ぶりをアピールしていたが、それっきり。何の指示もない。仕方なく、孫請け会社のマネジャーに相談したり、顧客に直接指示を仰ぎに行ったが、元請けのプロジェクトマネジャーはそれに文句すら言ってこなかった」
こうした実態を反映して、最近は「プロジェクトマネジメント専門会社」が相次いで設立されている。外注管理やスケジュール管理など、本来は元請けが担うべき役割を彼らが代行する。
2003年設立のクロスリンク・コンサルティングは、そのプロマネ専門会社の草分けの1つだ。社員21人の規模ながら、システム業界最大手の NTTデータをはじめ、大手企業から続々と仕事を受注している。プロジェクトが頓挫しそうになり、大手の元請けが「助け」を求めて駆け込んでくるのだ。
同社の拜原正人社長は、丸投げ開発が増えている理由として、テレビ局と同じように成果主義の人事評価が広がっていることを指摘する。
「仕事の質より、安いコストで外部スタッフの頭数を揃えられる人が評価される。だから、外注に依存するという悪癖がなくならない」。中国やインド、ベトナムなどにプログラム作成を委託する「オフショア開発」が増えているのも、同じ流れという。相次ぐシステム開発の失敗や延期は、システム会社の抜け殻化が原因の1つと考えられる。
「キャッチャーがいない」
かつて日本のシステム会社が得意としていた給与計算、販売管理といった企業向けシステムは、今やパッケージソフトを使うのが主流だ。その結果、システム会社の仕事の大半は、こうしたソフトを顧客ごとに修正(カスタマイズ)することになった。言ってみれば、業界全体がソフトの開発元である外国企業の下請け。そして、その下請けがさらに仕事を丸投げする。
こんな惨状が漏れ伝わるから、学生の就職人気は長期低迷。「利益なき繁忙」から抜け出せるメドは立たない。安易な下請け依存を続けたツケは、もはや“支払い不能”なレベルに達しつつある。
テレビ、郵便、システム開発。多種多様な業種で進む抜け殻化は、企業を確実に蝕んでいる。社会経済生産性本部の石川歩チェンジ・インテグレーション・センター長はこう指摘する。
「かなり前から大企業は大卒しか採っていない。業務改革推進室、顧客満足度向上委員会、ISO取得準備室、環境対策委員会などなど、本社で働く大卒正社員は、次から次へと新しい組織を作り、『ああしろ、こうしろ』と、どんどん現場にボールを投げる。ピッチャーばかりになってしまった」
「でもキャッチャーがいない。高卒や専門学校卒で入った叩き上げの職人が、たった1人で全部やらされている。この人たちが定年になったら、もう終わりです」
しかし、そうは言っても、現場に正社員を増やしたら、コストが上がって利益が出なくなる――。多くの企業からそんな反論が聞こえてきそうだが、果たして本当に現場の非正社員化は得なのか。
ある電子部品メーカーが衝撃的なデータを持っていた。2000〜06年の7年間に、この会社で正社員がやっていた仕事は生産性が150〜160%向上した。これに対し、請負・派遣社員を使った部門の生産性は30〜40%低下した。この会社は2年前に請負をすべて派遣に切り替え、「派遣で3年続いた人は全員、正社員になってもらう」(同社の社長)という。
「請負、派遣だと同じ職場で人材が1年に2回転する。習熟度も何もあったものではない。ある大手電機メーカーの役員は『うちは3回転』と嘆いていた。短納期・高品質で中国や韓国に勝つには、正社員が必要だ」
遅まきながら、多くの企業が抜け殻化の怖さに気づき、新卒採用を増やし始めた。自壊を水際で食い止めるギリギリの戦いが始まった。
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