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不信感を強める結果になりかねない予想運用利回りの引き上げ(KlugView)
2008/11/11 (火) 10:14
11月11日付の日本経済新聞は、厚生労働省が、厚生年金と国民年金の予想運用利回りを、来年2月ころに見直すと報じています。報道によると、厚生労働省は、名目運用利回りを、現在想定している3.2%より高い水準とする方向で検討しているようです。
年金の予想運用利回りとは、年金基金が預かった資金を運用して「得られるであろう」と予想する利回りのことです。たとえば、資金が1兆円あり、予想運用利回りを1%と設定すれば、「得られるであろう」と予想される運用利益は100億円となります。
運用利益は、将来支払われる年金の原資(元手)となります。よって、予想運用利回りが高めに設定されれば、将来「支払われるであろう」年金額は、(計算上)多くなります。ただ、予想運用利回りは、あくまで「予想」でしかありませんので、年金基金の運用成績が、あらかじめ設定した予想運用利回りのとおりになるわけではありません。実際の運用利回りが、予想運用利回りを下回れば、実際に支給される年金額は、計画を下回ることになります。
日本経済新聞の報道によると、予想運用利回りを引き上げる根拠として、全要素生産性の上昇率が高まる「であろう」と予想されることなどが指摘されているようです。ただ一般に、長期にわたる経済条件を、それなりの精度で予想することは、非常に難しいことです。特に、全要素生産性は、労働や設備の2つの要因では説明できない部分の生産性を示した数値であり、経済学者の間でも、長期の先行きについては議論が分かれています。仮に、足元で全要素生産性の上昇率が高まっていたとしても、そのまま上昇率が維持されるかというと、やや心もとない気もします。
現在の年金制度では、厚生年金と国民年金の保険料を上限まで引き上げるほか、積立金を取り崩すことなどで、現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合(所得代替率)が将来も50%を下回らないことになっています。先にご紹介したように、予想運用利回りが引き上げられれば、現在の制度は、(計算上)維持され易くなるといえます。
現在の年金制度については、制度を決定した当時の政府・与党が、国民に対して「年金制度は百年安心」とアピールしています。おそらく政府としては、予想運用利回りが引き上げられることで「百年安心」をさらにアピールしたいところかもしれません。
ただ、日本の年金制度については、社会保険庁の犯罪的な行為が歴史的に続いたこともあって、多くの方の間で不信感が強まっているのも事実です。やや心もとない予想を前提に、予想運用利回りを引き上げ、計画の安心性をアピールするよりも、やや保守的な前提を置いて、計画の確実性をアピールする方が、年金に対する不信感を解消するのに役立つような気がします。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
年金の「所得代替率」って何?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/11/11/003914.php