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http://money.mag2.com/invest/kokusai/2008/10/post_85.html
上海でうごめく米英勢が目指すものとは?
上海出張より帰国
去る10月20日から22日に中国・上海に出張してきた。マネーが織り成す「潮目」を追う独立系シンクタンクである我が研究所も、おかげさまで10名以上の人員を抱えるに至っている。そのため“経営”を現場で担うという立場から、海外出張はどうしても難しかったのだが、今回はあえて海の向こう側へと飛び出すことにした。
なぜそうしたのかといえば、21日に同地で、ある重要なセミナーが行われたからだ。開催したのは英国王立国際問題研究所、通称「チャタム・ハウス」だ。共催は中欧国際工商学院とロンドン市であった。
何がその場で話し合われたのかといえば、ずばり「上海をアジアの金融センターにする」というものだった。東京でもシンガポールでもなく、はたまた香港でもない。今まだ高層ビル建築ラッシュの続く“上海”こそが、次の時代における金融センターだというのである。あらかじめそのような話になるとは議題一覧から明らかだったものの、英国勢、そして米国勢がよってたかって中国勢を持ち上げる姿を生で見てこようと、出席を決意したセミナーだったのだが、実際に行ってみて本当に驚いた。
なぜなら、彼らの中国勢に擦り寄る姿は、正に恥も外聞も無いものだったからだ。何せ中国は外貨準備だけで、邦貨換算にして190兆円ほど持っている。以前このコラムでも書いたとおり、米国由来のリスク資産に基づく損失額が1,000兆円を超える規模であることを前提にしなければならなくなりつつある中、中国勢が持つこの札束は米英勢にとって喉から手の出るほど欲しいものであるに違いない。
公開情報分析(OSINT)を東京で日々繰り返す中で、そのことは知っていたものの、実際に当事者たちが角をつき合わせて話し合いを行っている現場を目の当たりにし、正に歴史が作られる現場を見た感じがした次第である。
なぜか国家による手綱を引き締める中国勢
このセミナーにおける議論については、上海滞在中に書き上げた報告書を是非ご覧頂きたいのだが、帰国早々に読んで気になった記事が1つある。それは「中国は国有の資産に対する監督を強化する」という報道である(10月23日付新華社参照)。
これによれば、146も存在する金融セクターおよび非金融セクターにおける国有事業体について、中国当局による監督を強化すべく、現在、新法案が作成中なのだという。これまでもこうした監督は行われたものの、一部の事業体については例外とされていたともいう。つまり、ここに来て中国勢は、一気に手綱を引き締め始めたというわけなのである。
マネーの世界にはマネーの世界なりの“仁義”があり、必ずしも儲かるから投資を行うだけというわけでもない。いわば「付き合いでカネを出す」ということも大いにあり得るわけだ。中国の国営ファンド(SWF)が、米国における景気減退が必至であった昨年の段階で、米国最大のプライヴェート・エクィティであるブラックストーンに投資を行い、その結果、莫大な含み損を抱えるに至っているのが正にその典型例だろう。
だが、政治の世界となると訳が違う。ダメなものはダメなのである。「友と敵」を区別する明確な価値判断が前提となるのが政治の本質であるとするならば、些少ではあっても付き合いでカネを出すなどということがあってはならないのである。中国勢による今回の立法への歩みは、正にそうした態度を内外にアピールするためのように思えてならない。
しかし、中国勢がそれだけを狙ってこうした報道を行っていると考えるのは早計だろう。現下の金融危機を収束させるには、中国勢の札束が絶対に必要なのだ。それを痛感している米欧勢は必ずやこうした「手綱引き締め作戦」を知ることで、焦りを隠せなくなることであろう。そうなれば、自ずから媚びへつらい、譲歩も辞さないという態度になるはずなのである。「持たざる者」に対する「持つ者」の悠然とした態度がそこに見え隠れする。
これから何が起きるのか?
この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”について私は、11月8・9日に東京、仙台で、そして11月29・30日に横浜、さいたま、東京でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。
今回行われた上海セミナーには、サブプライム問題以来、すっかり世界中で有名になったマコーミック米財務次官補も出席し、演説していた。正に米英中による「歴史の現場」といった感じであった。
ところが、「上海を金融センターにする」という、日本勢からして全く聞き捨てならない目的で行われた会議に、私を除き、日本からは誰も出席していなかったのである。米英勢は無駄なことはしない。その場でそうした話し合いが行われた以上、必ずやそう遠くない将来、そこでの内容は「現実」のものとなるのである。そこで日本勢が慌てふためいた時、彼らは必ずや次のように嘲笑するだろう。
「だってあの時の会議、誰でも出席可能だったじゃないか。それなのに来なかった君たちが愚かなのだよ」
上海から羽田までジェット機で2時間30分余り。それだけの近さだというのに、情報の格差は東シナ海よりも広く、そこから歴史の「潮目」は今、私たち日本人が知らない間に着実に紡ぎ出され始めているのである。
これまで私は、日本全国を集中的に周り、とりわけ地方で「情報リテラシー」を磨こうと奮闘されている個人投資家の方々に語りかけるべく、努力してきた。「中央と地方」との間の情報格差を少しでも解消させようという願いからである。それが徐々に実りをもたらしつつある今、今度は近くて遠い海外と日本との間の情報格差を、私たち日本人のために縮めるべく、新たなフィールドで奮闘すべき時が来ていると感じる今日このごろなのだ。
[新世紀人コメント]
金を引き出す為には、相手の懐に手を突っ込む事を直ぐにやる訳ではない。
舞台を設定して、役者をその気にさせて煽てて演技に導いて、芸をさせるのだ。歌を歌わせるのだ。ストリップ・ショーもヌード撮影も同様だ。巧い監督や写真家は乗せ上手だ。
「上海金融センター」? それもまた良しじゃあござんせんかい。
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