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企業だけに求めるべきではない家計所得の伸びの低さ(KlugView)
2008/10/18 (土) 13:00
日本経済の特徴として、家計所得の伸びが低いことがよく指摘されます。たとえば、GDP統計において過去5年間(2003年7−9月期から2008年4−6月期)の伸びを項目別にみると、家計所得(雇用者報酬)は3.8%しか増えていません。設備投資が24.0%、輸出が55.9%も伸びていることも考慮すると、家計所得の伸びが低いとの指摘が、それなりに正しいように思えます。
家計所得の伸びが低い理由として、よく指摘されるのが、企業の人件費抑制姿勢の強さです。企業は、稼いだ収益を家計に分配せず、配当金や自社株買いを通じて株主に配分したり、自社の手元に残す(社内留保を増やす)傾向が強いというものです。財務省の法人企業統計によると、2003年度から2007年度の5年間、日本企業(金融保険を除く全産業・全規模)の配当金は94.1%、社内留保は128.6%増えていますが、人件費(役職員の給与・賞与と福利厚生費の合計)は7.0%しか増えていません。この結果、労働分配率(企業が生み出した付加価値に対する人件費の割合)は、72.0%から69.4%に低下しています。
こうした事実があるせいか、ここ数年、企業は稼いだ利益を家計(従業員)に分け与えず怪しからん、という声が強まっているようです。ただ、こうした声はもっともらしく聞こえるものの、実際は、家計は企業から与えられた過去の恩恵がなくなっただけで、日本企業が怪しからんためではないように思えます。
先にご紹介した労働分配率の場合、過去5年間では低下傾向にあるものの、1980年代後半から90年代前半(バブル経済期)の労働分配率と比較すると、足元の労働分配率は、ほとんど同じ水準です。労働分配率は、バブル経済崩壊後の不況期に、企業収益が大きく落ち込んだものの、日本企業が人件費を引き下げなかったために、75%程度まで上昇した経緯があります。言い換えれば、日本企業は不況時においても(マクロでは)人件費を大きく引き下げなかったといえます。
労働分配率が高すぎると、株主への還元(配当金)も少なくなるため、株主から資金を調達することも難しくなるほか、企業の手元に残る資金が少なくなり、将来の成長のための設備投資が難しくなります。労働分配率のあるべき水準については、議論があるとはいえ、企業が家計にばかり恩恵を与えていては、自社の成長がおぼつかなくなり、最悪の場合、存在が消えてしまいかねません。ここ数年で労働分配率が低下しているのは、稼いだ利益を投資などに配分するため、企業が人件費の割合をバブル経済期くらいまでに戻した、と考えることもできます。
労働分配率の低下は、家計からすれば、過去の恩恵がなくなったため苦しい思いをしていることになりますが、企業という存在が弱くなる、もしくは消えてしまう事態になれば、家計はお金を得る手段がなくなり、より苦しい立場に追い込まれることになります。家計所得の伸びが低いのは事実ですが、その理由を企業行動のあり方だけに求めるのは、あまり生産的なものではないように思えます。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
2003年度から2007年度の5年間で、
日本企業(金融保険を除く全産業・全規模)の配当金は
どれくらい増えた?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
94.1%
(社内留保は128.6%増、ただし人件費はわずか7.0%増)
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/10/18/003804.php