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「新自由主義」後の世界、水野和夫氏に聞く(日経ヴェリタス)(08/10/14)
各国政府が危機対応策を打ち出したことをひとまず好感して、週明けの主要市場の株式相場は急反発した。だが危機が去ったわけではない。世界経済の行方について、三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストに聞いた。
「100年に1度の事態」とグリーンスパン前・米連邦準備理事会(FRB)議長は言いましたが、この表現は遠慮しているように思われます。同氏はおそらく「資本主義始まって以来」という意味で言ったのでしょう。それくらい今回の危機は過去のものとは違います。
大航海時代に東インド会社が設立され、資本主義は対外フロンティアを求めることでスタートしました。だが第1次世界大戦で植民地主義が終わり、英連邦諸国が独立して、対外フロンティアがなくなっていく。第2次世界大戦後も事実上、東南アジアなどを支配下に置いていましたが、それもベトナム戦争で米国が敗れ、ついに対外膨張が不可能になりました。
ベトナム戦争からレーガン政権発足まで、つまり1960年代後半から80年代初めまで、米国株は一進一退の展開が続きました。「ウォール街の死」といわれた当時の危機の背景には、対外膨張の終わりがあったのです。
1929年の大恐慌後の福祉国家を支えたケインズ主義が60年代後半に機能しなくなると、西欧は1974年、ノーベル経済学賞をハイエクに与え、「新自由主義」にお墨付きを与えました。レーガン米大統領やサッチャー英首相は新自由主義をイデオロギーとして掲げ、停滞を乗り越えました。インターネット革命を経て、西欧は世界の市場を1つにしました。
しかし今回、米国を含む各国政府による銀行の国有化や資本注入によって、新自由主義の理念は否定されました。軍事力で抑える時代ではないので、米国は理念がなければ世界のリーダー国としてふるまうことはできません。米国にとっての危機は、ウォール街の危機、ドルの危機と同じです。
現在は「資本の時代」に入ったと思います。かつては先進国にいるかどうか、米国に生まれるかどうかが分かれ目でした。今は資本を持っているかどうかが、明と暗を分けます。
資本の時代は、金融資本が実物経済を振り回す時代です。名目GDPよりも金融資産が膨らみ、バブルが起きる。利潤を極大化するために、バブルを起こすことが目的になる。バブルが崩壊しても、国が救済する仕組みをつくるので、資本は救済される。資本家は損を被らない。政府による資本注入は「主権国家が資本家に敗れた」ともいえるでしょう。
新自由主義は敗れたが、次に掲げる旗印がない。
ケインズを否定して、ハイエクを否定したが、今は何もない状態です。
日本はハイエクが否定されると、すぐにケインズを持ってきて、ばらまきをやろうとする人がいる。Aを否定して、Bを否定したら、別のCを探らなければいけないのですが、Aに戻ってしまう。AとBしかない、という思考にとらわれているのでしょう。
米国に限らず、先進国のだれかが、新しいイデオロギーを世に送り出すことになるでしょう。日本にもチャンスがあると思います。(聞き手は小林茂)
http://veritas.nikkei.co.jp/features/09.aspx?id=MS3Z14008%2014102008