| Tweet |
足元の為替市場を支配する高金利を求める資金の逆回転（KlugView)
2008/10/08 (水) 23:59
１０月８日の外国為替市場では、ドル円が、半年ぶりに１００円を割り込み一時９８円台まで下落しました。また、ドル円だけでなく、他主要通貨でも円高が進展しています。ユーロ円は３年半ぶり高値（１３４円台）、ポンド円は７年ぶりの高値（１７１円台）、豪ドル円とＮＺドル円は６年ぶりの高値を、それぞれつけました
為替市場で円高が一気に進展したことで、ＦＸ（外国為替証拠金取引）の個人投資家を中心に驚かれた方も多いと聞きます。ただ、為替レートの推移を示すチャートを眺めてみると、円安は長い時間をかけて徐々に進むのに対し、円高は短時間で一気に進むことが多いのに気づきます。たとえば、１９９９年１２月に１０１円台をつけたドル円は、３年後の２００２年２月には１３５円台をつけています。しかし、そのわずか５カ月後（２００２年７月）、ドル円は１１５円台まで下落しています。こうしたパターンは、ドル円だけでなく、また過去において何度も確認されている現象です。
よく目にする為替レートの変動要因として、２国間の金利差があります。高い金利の国の通貨は上昇する一方、低い金利の国の通貨は下落する、という理論です。この理論を構成するロジックは、高い金利の通貨ほど、より多くの金利収入を得られるので、買われやすく（上昇しやすく）なるというものです。日本では、この考え方は、金利収入をスワップポイントと置き換え、ブログなどでよく記載されているようです。
一方、為替レートの変動要因として、金利差ではなく経常収支を指摘する理論もあります。これは、経常黒字が大きい国の通貨ほど上昇し、経常赤字が大きい国の通貨ほど下落する、という理論です。経常黒字の大きい国は、貿易活動を通じて外貨を多く獲得しており、獲得した外貨は（いずれ）自国通貨に交換されるので、経常黒字の大きい国の通貨は上昇するという考え方です。この考えは、経済学の教科書でよく目にしますが、いわゆるブログでは、あまり目にしないものです。
日本と米国の２国を考えると、日本は低金利で経常黒字国、米国は（日本に比べると）高金利で経常赤字国です。よって、為替レートが金利差で決まるなら、為替レートは円安ドル高、為替レートが経常収支で決まるなら、円高ドル安となります。つまり、２つの理論は矛盾しており、機械的に考えれば、２つの理論のうち、どちらかは、間違っていることになります。
２つの理論の矛盾を解くカギは、外貨と自国通貨を交換する資金を、金利収入を求める資金と、貿易活動を通じて得た資金の２つに区別して考えることです。
金利収入を求める資金は、高い金利を求めて外貨に交換されたとしても、いずれは自国通貨に交換されます。つまり、短期的には高い金利の通貨は買われやすいかもしれませんが、長期で考えると、高い金利の通貨は、いずれ別の通貨に交換されてしまう（売られてしまう）ので、為替レートは結局、元に戻ることになります。
一方、貿易活動を通じて得た外貨は、自国通貨と交換して外貨を得たわけではないので、為替レートに影響を及ぼさないといえます。しかし、貿易活動を通じて得た外貨を自国通貨に交換する際には、外貨を売り自国通貨を買うわけですから、為替レートの影響を及ぼす（自国通貨は上昇する）ことになります。
一般に、金利収入を求める資金は、市場でのリスクが低いときは、より高い金利を求めて活発に取引されるといわれています。しかし、市場でのリスクが高まったと判断されるときは、外貨を自国通貨に戻し、様子をみる傾向が強まるといわれています。
一方、貿易を通じて得た外貨は、ある程度、恒常的に自国通貨に交換されます。なぜなら、貿易をするのは、外貨で利益を上げるためではなく、あくまで自国通貨で利益を得るためだからです（仮に外貨で利益を上げたいのであれば、わざわざ貿易などせず、始めから外国で事業を実施するほうが合理的です）。
現在、為替を始めとする金融市場では、銀行間（インターバンク）での短期資金の取引すらままならないほど、リスクが高い状態といわれています。当然、こうした状況は、為替市場にも影響を及ぼします。過去数年にわたり、高い金利収入を求める資金を背景に、いわゆる高金利通貨は上昇を続けてきたかもしれません。ただ現在の状況を考えると、過去数年にわたって上昇してきた通貨ほど、その上昇分を埋め合わせるが如く、猛スピードで逆の動きが進んでいるような気がします。
村田雅志（むらた・まさし）
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
ポンド円が１７１円台へ。これは何年ぶりのこと？
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
７年ぶり
http://www.gci-klug.jp/klugview/2008/10/08/003750.php
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,ＭＬを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。