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デフレと収穫逓減の法則
公共投資をいくら行っても、また補助金政策や補償をいくらしても、低金利をさらに続けても景気は絶対に回復しない。それがデフレの常識である。
デフレでは、資金量(消費される)がほとんど伸びないため、あるいは減少しているため、生産量が伸びれば伸びるほど生産物ひとつ当たりから得られる資金の量は減っていくことになる。生産物が増えれば増えるほど1単位当たりの価格が下がるからである。
これは生産量が増え付加価値が増えても、資金量(売上額又は消費者が消費する額)が増えないので生産量に対してだけではなく、付加価値の増加に対しても資金量が減少していくのである。資金額が壁となっており、そこへ生産量を増やすにつれ、価格が低下せざる負えなくなる。
より的確に言うと、デフレでは、収穫が増加するにつれ、収穫から得られる資金が少なくなっていくのである。(デフレ所得線の特徴:所得線の角度が45度以下であり、貯蓄量より角度が下がっている状態。)
(ここで言う資金量とは、国民所得として形成されたもので、個人が消費として使えるもの、企業が購買資金として使えるもの、国や公共団体が税収として得たものを指す。低金利により過剰に融資しただぶついている資金の多さではない。)
普通今までの経済学では、生産量と資金量は一定と考えられてきた。その前提の上で、定まった土地の中で、生産物をどんどん作っていくと、ある一定の段階を過ぎると、生産量が増えてもそれから得られる収穫が減少していく。これは生産量の増加に応じて付加価値が減じていくことを表している。
このような考えは生産量と資金量の関係が一定であることを暗黙の了解として成り立っている。
しかしデフレでは、生産量に比べて資金量が大幅に少なくなっており、一対一ではない。
それ故生産量が伸び、付加価値が逓減しながら伸びている場合でも、資金量が増えないため、付加価値の増加に対して資金が逓減していくのである。(資金量が不足し貯蓄がないことがネックになっている。)http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/dehuresyotokusennnotokutyou3.html
このことは、未開発国にも当てはまる。未開発国では、畑がたくさんあり耕作の余地がたくさん残っているにもかかわらず、生産量が伸びない。それは、資金量が少なすぎるからである。資金が限界となりそれ以上生産量を伸ばしても、生産物当たりの資金量は逓減して行く。
日本経済が無意味な構造改革により内需が減退し、輸出入に頼る経済になったことから、発展途上国と同じような状態になってきている。
それ故、デフレ経済において、ゆめゆめ生産量の増加や付加価値の増加に、あるいは実質GDPの増加に一喜一憂してはならない。
資金不足の経済は、生産量を伸ばすほど、資金が減少していくからである。
(http://www.eonet.ne.jp/〜hitokotonusi/デフレ・インフレの一般理論第3章デフレのメカニズム 参照
売上額が一定の場合商品や製品の販売量を増やすと価格が下がらざるおえない。)
ここ5、6年のいざなぎを越えたと言われるような実質GDPの増加のみを基準にした景気回復は、世界で18番目の名目GDPの国に押し下げ、民間所得は、9年連続の減少という不名誉を成し遂げたのである。
これは収穫逓減の法則がデフレにおいてみごとに成り立っていることが立証された例である。というより資金逓減の法則と言った方が的確かもしれない。それを日本の小泉政権下の骨太政策が立証したのである。これは経済学的快挙でもある。これ程如実にデフレの性質を表した国の経済はいままでなかったであろう。これにより骨太政策は真に骨細政策であった事が明らかであろう。
デフレ下における実質GDPの成長は、生産量の増大をもたらしたが、国民一人辺りの貨幣で得られる所得は、減少をもたらし、貯蓄の減少、資産価格の低下と政府の借金をさらに増大させるものであり、実際にそのようになったのである。
これを平成のいざなぎを越えた戦後最長の経済成長であると呼ぶつもりであるようだ。こんな茶番は早くやめよう。日本の経済学者の恥である。(後で訂正することになるのは間違いないであろう。)
普通の国では、賃金が減少し、貯蓄も減り、借金が増えただけで、ただたくさん物を作っただけの経済を成長とは呼ばないでしょう。それどころかこれは経済が本当に縮小しているのである。貧乏になってるのである。「名目国民所得が減少しながら、いざ凪を越える経済成長を成し遂げました。」倒産会社の多くは、物をたくさん作りそれを赤字で売り倒産に至る事が多い。まさしく日本経済がこれだ。まだだれも責任を取っていない。
この物作りが伸びた最大の原因は外需の伸びにあり、それが日本の内需の不振を隠していただけなのである。資金不足から内需が伸びず、資金が豊富な外国の需要が伸びただけである。
外需が伸び悩むに連れ日本経済の脆弱性が明らかになってきている。これは一過性の問題でなく、デフレの深刻化による物である。
先の10年は資産のデフレが激しかったが、消費税を5%に上げてよりこの10年は所得のデフレが激しく、国民にとってはより厳しい状況になっている。
その辺の理解が根本的に足りないのではないかと思う。特に大新聞の論調や経済専門紙、与党関係者の言には、いたずらに実質GDPの成長を賛美しこのような低所得化を顧みないものが、散見され、彼らの経済的素養が疑われる。名目GDPの著しい退潮、民間賃金の10年にわたる逓減、低所得化は、経済がなおデフレ下にあり縮小していることを表すものである。
特に消費税を3%から5%に上げて以来、これが顕著になっており、物をたくさん作れば作るほど貧乏になってきている。骨折り損のくたびれ儲け。多くの人が生活保護所帯以下の生活水準に落ちてきているのである。それは明らかに政策が間違っていることを意味している。
その間やったことは、上げ潮政策、骨太政策、成長戦略であった。
すべてが物をよりたくさん作ろうというものである。さらに輪をかけるように、銀行統合という名の貸しはがしにより、資金を市場から奪い、預金者から金利を奪い消費市場をさらに寒からしめたのである。
また低金利による過剰融資は、内需減退のため国内に市場に回らず、外資や土地資産、海外用設備投資に回り、円キャリーという言葉を生みだし、外資により国内の資産が買われ、土地価格が上昇したが、それはサブプライム問題により潰え去った。
アーバンコーポレーションなどの倒産は、低金利がどのように働いたかを端的に知らしめている。
政策担当者のしたことは、デフレという物の性格が全く分からない事からくる犯罪的経済政策であったのである。
今ここで政府は、さらなる公共投資による景気刺激策や、低金利過剰融資による生産者優遇策や各種補助金による奨励策を取ろうとしている。しかしデフレにおける資金逓減の法則によって、ことごとく失敗させられるだろう。そして借金を大幅に拡大させることになる。その借金を減らすためにという愚かな理由で消費税を増税すれば、日本経済は止どめを刺されるだろう。
このように資金を生産者側に投入する政策は、なんらデフレを解消させることができないものであり、それどころか借金を増やす政策に過ぎないのである。
資金を消費者側に回すことだけが唯一日本のデフレを解消させる道である。日本が今ここで資金を消費者側に移転する政策を早急に取り、復活しなければ、世界経済は大きな後退を招くだろう。
消費者への資金移転が根本的に大事な政策であり、その方法を考えなければならない。
その一つは、ガソリン税の軽減であり、高速代金の低減、消費税の減税である。さらには、年金保険料を減らし、年金を増やすことである。あるいは公務員給料を削減し、低所得所帯に補充するなどがある。いずれにしてもよい政策は、これ以上借金を増やさず、資金を消費者側に回す政策である。これがデフレ経済を復活させる秘訣である。
現在取られようとしている高速代金の軽減も、民主党、自民党とも、運送業者や、生産業者への補償という面を強調しているが、これはお門違いである。消費者への還元、資金移転が重要なのである。この辺になおデフレ経済が何たるものかが分かっていないところが見え隠れする。
デフレ下の生産者へのバラマキ補償や公共投資のバラマキは借金を増やすだけであり、デフレを深刻化する物に過ぎない。資金量が壁になっているからである。
一言主。
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/