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「サブプライム問題がサブプライムだけに留まらない理由」(リチャードクーのKoo理Koo論)
http://www.asyura2.com/08/hasan58/msg/510.html
投稿者 そのまんま西 日時 2008 年 9 月 26 日 23:12:07: sypgvaaYz82Hc
 

第10回「サブプライム問題がサブプライムだけに留まらない理由」(2008/09/01)

 一方、民間金融機関の方はどうだったのか。今まで書いてきた状況を、ウォール街の資金運用者の立場から考えると、ここにも大きな問題が発生していた。04年の6月ごろまでは、資金需要の観点から見ると、住宅バブルが続いていたので住宅部門、個人部門から大変大きな資金需要があった。そこで稼げば、いいリターンがとれ、しかも資金コストは1%まで下がっていたので、1%の資金コストに対して何%かで回せば皆満足していたのである。

<欲に目がくらんだウォール街>

 ところが、この住宅バブルも3〜4年経つと、新しく大きい家を買いたい人が一巡してきてしまう。既に住宅市場は飽和状態になっているのだが、その一方で、グリーンスパン議長と同じように企業がお金を借りに来るのを待っていても、企業はいつまでたっても全然借りに来ない。

 そういったなかで、2004年6月から短期金利がどんどん上がりはじめる。つまり、資金コストがどんどん上がっていくわけである。すると、ウォール街で年金を運用している立場から考えると、資金コストが上がってくる一方で、今まで借りていた人は全然借りに来ないという大変な事態になってしまった。

 そこで彼らとしては、何とかして高い金利を払ってくれる人を探さなければならない。そこでどこの誰かが目をつけたのがサブプライムというマーケットだった。

 サブプライムローン市場は以前からあったのだが、もともとは小さなマーケットだった。そこへ、04年から06年の間に1兆ドルもの金が流れ込んだ。小さなマーケットに1兆ドルもの金が流れ込めば、それまであった規律、規制も全て押し流されて、とにかく量だということになり、いい加減な住宅ローンの設定が行われた。

 ただ、今から見れば、大変いい加減な住宅ローンが組まれたといわれるが、当時の米国では、テレビをつければ著名人がこぞって、とにかく今住宅を買わなければということを言っていた。グリーンスパン議長も今の状況がバブルだとは言わないから、多くの人が今買わなければいけないのかという気持ちになる。

 サブプライムローンに頼らざるを得ないような信用力のない人たち向けには、こういうセールストークが展開されていた。「とにかく家を買いましょう。これだけ住宅価格が上がっているから、住宅を2年間持っていれば、住宅価格は20%くらい上がる。20%上がれば、その住宅の持ち分の2割はあなたのものだ。家全体の持ち分の2割を持っていれば、あなたの信用力は十分だから、その時点でプライムに乗り換えればいい。それまでの間は優遇金利をつけましょう」と。これで皆が住宅を買ってしまったのである。


<サブプライム問題は「サブプライム」だけの問題ではない>


 ところが、06年の6月に中古住宅価格の上昇率がゼロになり、以後、そこからはずっとマイナスになる。マイナスになると、「20%の持ち分があれば、プライムに乗り換えられる」という話もどこかに吹き飛んでしまい、新たなプライムローンには乗り換えることが出来なくなってしまう。

 この時期に組まれたサブプライムローンは、最初は優遇された金利なので、払っていた金利はものすごく低い。場合によっては金利を全く払ってないケースもある。ところが、2,3年するとこれがリセットされて金利がものすごく高くなる。このときに問題が発生する。06年からリセットが始まり、デフォルトが急増してしまった。

 図表1は、変動金利住宅ローンの種類別の延滞率であるが、これを見ると、今年の第1四半期でサブプライム(ピンクの線)は全体の20%がデフォルトしており、プライム(青い線)は全体の5%がデフォルトしている。20%に対して5%だから、プライムのことなど気にする必要はないと思われるかもしれないが、市場規模はプライムの方がサブプライムの何倍もある。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/html/koo09_2.html

 ということは、たとえプライムのデフォルトが6.8%でも、サブプライムが22%デフォルトしているのと同じになる。我々は、今の危機を「サブプライム」と代名詞のように言っているが、実は住宅市場全体の問題なのである。つまり、プライムの人たちのなかにも、相当背伸びをして無理して住宅を買った人たちがかなりいたのである。


 <問題を更に深刻にしたサブプライム関連の金融商品>

 これだけデフォルトが発生すると、銀行が持っている資産の価値が下がってしまうが、これが住宅ローンという形で銀行に残っていれば、貸し出された1兆ドルの中で、
その何割が損になるのかという話で済む。ところが、ここで厄介なのは、こういったローンが切り刻まれて金融商品の中に組み込まれ、またその商品が切り刻まれて別の商品に組み込まれているということである。

 その結果、トータルでどれくらいの金融商品がサブプライムローン(とその関連商品)を組み込んでいるのか、実は、当事者を含めて誰もわからなくなってしまった。だから、そこから損失がどれくらい出るのかということも、今でも誰もわからない。

 結局、そういった金融商品は投売りのような形で放出され、何兆円もあった資産価値が、瞬く間に激減してしまった。なかには、もともと100円のものがひどいときには2円まで下がったそうだ。そしてそれを持っている銀行は、資産内容が悪くなり、自己資本も減少する。

 欧米の銀行が中国、シンガポール、アラブのSWF(政府系ファンド)などから盛んに資金調達しているのは、その埋め合わせのためなのだ。しかし、このプロセスは、損失がどこまで拡大するのか誰もわからない以上、いつになっても終わらない。

 だから、第9回で説明したようにインターバンク市場が全く機能しないのである。こちらは相手がどのくらい危ないのか信用できないし、相手側も、こちらがどのくらい危ないのか信用できない。皆相互不信になっているわけである。それが、欧米の金融市場で起きている状況なのである。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20080825d8000d8&p=1
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/koo.cfm?i=20080825d8000d8&p=2  

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