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http://www.bloomberg.co.jp/news/column.html
【経済コラム】米国はアメリカ社会主義合衆国に変身か−W・ペセック
9月22日(ブルームバーグ):米国の金融危機の火消し役として、ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は適役のようだ。
ここに、10年前に米財務省チームが書き残したかもしれないメモがある。ガイトナー総裁は当時、このチームの一員だった。メモのあて先はアジアの金融当局者で、要件は悪化するアジア危機。経済が不安定な状況下で動揺し、投資を引き揚げる動きが出ているとして、アジアの政策当局者に以下の10項目に留意することが重要だと指摘した。
1. 政策金利を引き上げて通貨を支える。
2. 歳出と債務を削減する。
3. 投機家やヘッジファンドを責めない。
4. 不動産の値下がりは急落ではなく調整のため、放置する。
5. 誤った決定を行った者を救済しない。モラルハザードこそ悪だ。
6. 企業セクターの透明性を向上させる。
7. いかなる補助金も悪だ。
8. 金融機関には直ちに不良債権の評価損を計上させる。
9. 問題の責任をマスコミになすりつけない。 10. 米国の繁栄をもたらす自由市場主義に従え。
しかし、財務省はこのところ、上記のすべてを無視せよというメッセージを発している。エマージング・アルファ・アドバイザーズのディレクター、マーシャル・メイズ氏は先週マニラで、「この戦略の変更に慣れるにはかなりかかる」と語った。
構造的な変化
その他の金融変遷も構造的な変化にほかならないようだ。例えば、1997年のアジア金融危機後に不良資産の整理を支援した韓国資産管理公社(KAMCO)。現在は米国の不良債権最大9億ドル(約960億円)の買い取りを目指している。また、多くの米企業が韓国に資本参加を仰ぎ、米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスも破たん前に韓国産業銀行(KDB)に出資を求めた。
KAMCOの李哲徽(イ・チョルフィ)最高経営責任者(CEO)は「世界ではこの10年であまりにも大きい変化が起きた」と語る。
この変化は先週、アジア開発銀行(ADB)がマニラで開催した会議でも中心的な話題だった。その基本的な考え方は、米国は処方せんに自ら従うよりも途上国に押し付ける方がうまいことが証明されつつあるというものだった。
米国が自国の金融危機に対応するやり方については議論の余地があろう。財務省と米連邦準備制度理事会(FRB)の行動には依然として自由主義を唱えた経済学者ミルトン・フリードマンの思想が影響を与えているだろうか。それとも、共産主義思想を打ち立てたカール・マルクスが入り込んできているだろうか。
アジアの一部投資家やエコノミストのヌリエル・ルービニ氏からは、アメリカ合衆国(USA)がアメリカ社会主義合衆国(USSA)に姿を変えつつあるとの冗談が聞かれる。
炎に包まれるウォール街
もちろんこれは誇張表現だ。ウォール街が炎に包まれている時に、米国版の暴君として君臨したい人間はいない。バーナンキFRB議長もガイトナー総裁も違う。ただ、自由市場こそが繁栄へ続く道と米国から再三にわたって説教されてきたアジアにとって、このところの展開は混乱を招く。
英スタンダード・チャータード銀行のアジア調査責任者、ニコラス・クワン氏(香港在勤)は「アジア危機以降、安定するまでには多くの資金と試行錯誤が必要なことをわれわれは学んできた。米国はこのプロセスを開始したばかりだ」と述べた。
アジアにとって、現在手本とすべきモデルは何だろうか。欧州か、それともトップダウン方式と市場開放を混ぜた中国方式か。はたまた日本式の金融管理だろうか。世界でも成長著しい経済を複数抱えるアジアにとっての問題はこれだけではない。アジアにとって最大の問題の一つが市場開放ペースに付いていけない政治動向だ。
政局不安を抱えるタイから管理の厳しい中国、政治が機能不全に陥っている日本から停滞するマレーシアまで、アジアは迅速に対応できない政府だらけだ。米国が市場の信頼回復策をまとめ直すなか、アジアはこれまで以上に自らの今後を考える必要がある。
信頼感低下
米国の信頼感がいかに低下したかは、米国とアジア各国の富の比較でよく分かる。貯蓄率の高いアジアが政府系ファンド(SWF)を設立して将来に備えるなか、米国は過去の問題を修復するため不良債権の買い取りファンドを立ち上げようとしている。米国が2000年以降、国際テロ組織アルカイダとの戦いを繰り広げるなか、中国は世界に通用する都市や空港建設を進めた。
騒ぎがいったん収まれば、経済政策担当者は「一段と適切な規制環境」を見いだす作業を始めねばならないと、ADBのラジャット・ナグ事務総長は指摘する。
米証券リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんや米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が公的管理下に置かれたことを受け、米金融規制当局やニューヨーク州などの一部州当局、米3大公的年金基金は空売り規制に動いた。
10年前にアジア各国が同様の措置を取れば、米当局者はぎょっとしたに違いない。自国が危機を迎えた時に自分自身の処方薬を飲むのがいかに困難であるかを思い起こさせる展開だ。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
更新日時 : 2008/09/22 14:56 JST